K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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西辻明の詩・・・・・・・・・・木村草弥(Doblogから再録)
2005/08/18のBlog
水中花

──西辻明の詩──(3)

  水中花・・・・・・・・西辻明

十年
この花は
ガラス瓶の中に
おわりの夏の あなたの
またわたしの憶いをこめて
白と黄と
青と赤と とりどりに
咲(わら)っていました

あなたがそれをもとめ
あなたがそれを活ける
あなた自身も知らない
あなたの心の深い海
その暗闇をわたしは感じとり
あまりにはかなくて
空に向かって開く広口瓶二つ
手伝いもせず おし黙っていました

丹頂と
青龍と
初恋と
老いらくの恋と・・・
名づけに興じながら
金魚や鯉を泳がせ
移りゆく季節は
ウオーターヒヤシンスの紫に暮れて行きました
また訪れる
小鳥たち
山雀
四十雀
目白
頬白
蜜をもとめ
さるすべりの実を啄み

日当りの塒(ねぐら)に憩う

小綬鶏の家族

また夕ぐれは
山鳩
冷えこみ厳しい夜の
梟の声を二人で聴きました
雉のつがいの
羽音も高く
翔び立つ日々もありました
あなたはいつも
山鳩と梟を
まちがえましたね

ホゥ ホゥ ゴロスケ ホゥコゥ
ホゥ ホゥ ホゥの
リズムとアクセントのちがい・・・
 ・・・・・

一つ一つの憶い出に
別れを告げ
一度は棄てようかとも
また思いなおして
言葉に書きとめようとも・・・
しかし
流れにしるした文字よりも淡く
たちまち泡沫と消え去りました

今日こそ 解き放とう
透明な 物象のゆらめき
花々は 風と光のなかへ
立春も過ぎて
そう思い立った

斜めに舞い狂う
粉雪の銀の砂の
窓辺の明りに読む

 錦瑟・・・・・李商隠
錦瑟無端五十弦 一弦一柱思華年
荘生暁夢迷胡蝶 望帝春心托杜鵑
滄海月明珠有涙 藍田日暖玉生烟
此情可待成追憶 只是当然已惘然
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この詩も西辻明の詩集『十年』に載るものである。
これは亡くなった夫人への追憶であろうと思われるが、末尾の漢詩になって俄然、むつかしくなり、私にも、それまでの判り易いリズムとのギャップに読みなずむものがある。
しかし彼が、この漢詩を載せたかったのだから仕方なかろう。
この詩集の題に、この詩の出だしのフレーズ「十年」が採られていることからも、この詩によせる彼の思いを知るのである。
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2005/08/17のBlog
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──西辻明の詩──(2)

 山遁の術・・・・・・・・・・・西辻明

         ───五郎君はフーガの技法をマスターしました───

お昼寝の時間です
扇風機がゆっくり首を振っています
五郎君は四ツ肢を投げ出して
眼をつぶっています

二階から
気持の良いメロディが聞こえて来ます
タンタンタラタラ タンタンタラタラ
「フーガの技法」です

五郎君の眼が明きました
玄関が開いています
今こそチャンス
五郎君は裏山を伝って飛び出します

タンタンタラタラ タンタンタラタラ
いそげや いそげや ほらいそげ
遁走曲だよ 走れや 走れ
五郎君は一目散 そこでマーチがワンワンワン

父ちゃん 覚めたよ
マーチの啼き声
これはしまった しくじった
自転車飛びのり 追いかける

逃げろや 逃げろや えっさっさ
五郎君は一目散
桜ケ丘まで一目散
ミートとセーラの匂いがするよ

そこで留って一服すれば
父ちゃんチーズで おいでおいで
五郎君は覚悟を決めた
首輪を嵌めて お散歩だ

真夏の日の夢さめました

 *ミート──黒ラブラドル雌、 セーラ──ゴールデンレトリバー雌
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西辻明が詩集『十年』を送ってきた。ここには24編の詩が載っている。
彼の詩については私のHPに連詩三人集『命あるものへの頌歌』に「箴言」を収録してあるのでご覧いただきたい。
この詩は「五郎君」という飼い犬の柴犬の遁走のことをユーモラスに書いている。五郎だから雄犬である。桜ケ丘というところにミートとセーラという雌犬が居るので、遁走して、そこへ会いにいったというもの。
結句が「真夏の日の夢」というので、この時期の詩として載せてみた。
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