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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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詩・桃の花・・・・・・・・・・・・・・・天野忠
aaoomomo00桃の花

    桃の花・・・・・・・・・・・・・天野忠

   ある日
   ポロリと歯が抜けて
   御飯の中におちた。
   御飯の中からつまみ出し
   てのひらに転がしながら
    「長いことつれ添うてもろうて
    御苦労さん・・・・・」
   と頭を下げたら
   フフフ・・・・・と
   横で 古女房が笑った。
   眼尻にいっぱい黒い皺をよせて。

   桃の花が咲いた
   その朝。
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この詩は京都の誇る詩人・天野忠さんの詩である。

この詩は多くの詩集の中から夫婦を詠んだものを集めた『夫婦の肖像』1983年編集工房ノア刊に載るもので、初出は1974年刊の「天野忠詩集」に収録されていたものである。
天野忠さんは先年亡くなったが、現代詩特有の難解な暗喩を使うこともなく、日常使うような平易な言葉を使って作詩した。
『私有地』という詩集で昭和56年度・第33回「読売文学賞」を受賞された。他の詩集には『掌の上の灰』『讃め歌抄』などがある。

この詩集の「帯」で富士正晴が、次のように書いている。

<詩を完結させる見事さは、そこに一つのアイマイさも、鈍重さも、ごまかしもなく、冴えかえったエスプリとでもいったものがあり、詩人はまことにつつましやかに見えるが、微塵ゆらがぬ賢者のおもむきがあり、しかも老いのユーモアと、いたずらの精神による寛容なサービスも忘れていない。 「夫婦の肖像」とあるのにたがわず、多くの詩に夫婦共演の趣があって、そのおもむきはこれを読む老男、老女のこころをなごませ、一時の解放感、ゆとりのある感動によって、自分が老人であることの滑稽さと同時に安定した気分を抱かせるのにちがいないようだ。>

少し長い引用になったが、天野さんは若い頃は、もう少し肌ざわりの違う詩を書いていたが、老年になって洒脱な、人を食ったような飄逸な詩世界を表現するようになった。この詩には、特別に解説を要するようなものは、何も要らない。そのまま、素直に鑑賞したい。
天野さんの詩を選ぶ時も、現代詩というものは、「季節」を詠うものではないので、苦労した。
京都では、医師であって、物書きであった松田道雄氏などとの交友があったようだ。
ここで、『私有地』から短い詩をひとつ紹介しておく。

    花・・・・・・・・・天野忠

    山桜のふとい枝が一本
    ごろりんと
    道ばたにころがっている。
    土をいっぱい載せたダンプカーのお尻に
    何べんとなくこすられ
    こすられして
    とうとう辛抱しきれずに
    道ばたに倒れてしまったのである。
    それでも春だから
    ぼろぼろの胴体にくっついた
    小枝の花は
    まだチラホラと咲いている。
    風が吹くと
    チラリホラリとこぼれる。

    それが非常に綺麗で困る。
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天野忠さんの写真をと思ったのだが、天野さんはビッグな詩人ではなかったので、ネット上でも見つからなかった。
私は天野忠の詩集を何冊か持っているので、また季節にこだわらずに載せてみたい。

  
なぜ 花はいつも/こたえの形をしているのだろう・・・岸田衿子
aaookobusiこぶしの花

   なぜ 花はいつも・・・・・・・・・・・・・・岸田衿子

      なぜ 花はいつも

      こたえの形をしているのだろう

      なぜ 問いばかり

      天から ふり注ぐのだろう

この詩は岸田衿子の「なぜ 花はいつも」という詩の一節である。
岸田衿子は昭和4年東京に生まれる。父は劇作家・岸田国士。妹に俳優の岸田今日子がいる。東京芸術大学油絵科卒業。茨木のり子、川崎洋、大岡信らの拠った詩誌「櫂」に10号から作品を発表しはじめる。
詩集3冊の他、放送詩劇も書いて放送イタリア賞を受賞している。童話や絵本も多く著している。
現代詩でいう「四季派」の一番世俗的けがれのない部分を、いい意味で、そのまま引き継いでいると言われている。岸田一家の、育ちの良さを見せると言える。
原崎孝の解説によると

<世の苦渋を巧みにかわして、ファンタジーの方へ、絵の方へと、悲哀や苦渋を収斂させてゆこうとしているかに見える。無垢な青春の美しさを、詩の中に保ちつづけている詩人のひとりである>

と書いている。

ほかの詩だが長いので、短い詩を引用するのに苦労する。それぞれ後半は省略する。

  花かぞえうた・・・・・・・・・・・・・・岸田衿子

    いちごのはなの さくばんは
    いちばんぼし いちみつけ

    にわうめのはな にわにさく
    にわのにわとり にげてった

    さざんかのはな さいたとき
    さむいほっぺた さんりんしゃ

    しひらのはなは しろじろと
    しなののやまに ちっている

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   南の絵本・・・・・・・・・・・・・・・岸田衿子

      いそがなくたっていいんだよ
      オリイブ畑の 一ぽん一ぽんの
      オリイブの木が そう言っている
      汽車に乗りおくれたら
      ジプシイの横穴に 眠ってもいい
      兎にも 馬にもなれなかったので
      ろばは村に残って 荷物をはこんでいる
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こうして見て来ると、先ほど紹介した原崎孝の解説が、ぴったりだと気づくだろう。

岸田衿子は一時、谷川俊太郎と結婚したこともあるが、以後は童話作家として、以下のような本がある。
妹の岸田今日子は2007年に亡くなった。

1. ソナチネの木(新装版)
岸田衿子/安野光雅 /青土社 2006/08出版 \1,470(税込)
2. ア-ノルド・ロ-ベルベストセレクト16(全16巻)
ア-ノルド・ロ-ベル/岸田衿子 /文化出版局 2006/07出版 \14,347(税込)
3. ぼ-るがころころ(えほん・あかちゃんへ )
岸田衿子/長新太 /ひかりのくに 2006/06出版 \840(税込)
4. うみ(えほん・あかちゃんへ )
岸田衿子/長新太 /ひかりのくに 2006/06出版 \840(税込)
5. だれもいそがない村(ジュニアポエム ) 岸田玲子詩集
岸田衿子 /冬至書房 1980/12出版 \1,223(税込) 絶版
6. こねこのミヌ-
フランソア-ズ/岸田衿子 /のら書店 2006/05出版 \1,365(税込)
7. いかだはぴしゃぴしゃ
岸田衿子/堀内誠一 /福音館書店 2004/11出版 \840(税込)
8. たいせつな一日(詩と歩こう ) 岸田衿子詩集
岸田衿子/水内喜久雄 /理論社 2005/03出版 \1,470(税込)
9. かばくん(英語版)(R.I.C.story chest )
岸田衿子/中谷千代子 /ア-ルアイシ-出版 2004/11出版 \2,310(税込)
10. ゆきむすめロシアの民話
岸田衿子/鈴木康司 /ビリケン出版 2005/02出版 \1,470(税込)
11. ア-ノルド・ロ-ベルベストセレクト16(全16巻)
ア-ノルド・ロ-ベル/岸田衿子 /文化出版局 2005/01出版 \14,347(税込)
12. おうさまのみみはろばのみみ(みんなでよもう!日本・世界の昔話 ) (第2版)
岸田衿子/村上勉 /チャイルド本社 2004/09出版 \470(税込)
13. おうさまのみみはろばのみみ(みんなでよもう!日本・世界の昔話 ) (第2版)
岸田衿子/村上勉 /チャイルド本社 2004/09出版 \950(税込)
14. てんきよほうかぞえうた(日本傑作絵本シリ-ズ )
岸田衿子/柚木沙弥郎 /福音館書店 2004/04出版 \1,260(税込)
15. かばくん(こどものとも劇場(大型絵本) )
岸田衿子/中谷千代子 /福音館書店 2001/11出版 \8,400(税込)
16. ほしがいっぱい(小さな子どもの心におくる絵本 )
岸田衿子/長新太 /ひかりのくに 2002/06出版 \924(税込)
17. さくらんぼさくらんぼ(小さな子どもの心におくる絵本 )
岸田衿子/長新太 /ひかりのくに 2002/06出版 \924(税込)
18. にほんたんじょう(復刊・日本の名作絵本 )
岸田衿子/渡辺学 /岩崎書店 2002/04出版 \1,575(税込)
19. パンケ-キのおはなし(ひかりのくに傑作絵本集 )
岸田衿子/おおば比呂司 /ひかりのくに 2002/01出版 \1,260(税込)
20. 野の花散歩ノ-ト365日
古矢一穂/岸田衿子 /ポプラ社 2001/11出版 \1,050(税込)
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昨日付けで谷川俊太郎を採り上げたので、その関連で今日は「岸田衿子」を出してみた。

  
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