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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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入って行く 日本剃刀の/一瞬の光りが眺めたさに・・・・田村隆一
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   路上にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・田村隆一

     花の形をした花がある
     人の形をした人がいる

     花ならば散るだろう
     人ならば枯れるだろう
      高層ビルは腐敗するだけ
     そんな都市空間にどんな花が

     どんな人間が生きているのか
     ぼくは露地のある町並を歩き

     小さな鉢植の花が咲いている
     「若返り軒」という床屋さんに
      入って行く 日本剃刀の
     一瞬の光りが眺めたさに

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この詩は田村隆一・詩、荒木経惟・写真『花の町』(河出書房新社1996年刊)に載るものである。
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このシリーズの詩は雑誌「草月」の連載「花の街」に書き下ろし詩、撮り下ろし写真を加えて編集されたものだ。
田村は1998年に亡くなっているから、最晩年の作品ということになる。
彼については8/26に記事を載せたので、ご覧いただきたい。

田村隆一は「荒地派」の詩人として出発しているから、当初の詩は高踏的で極めて難解なものであったが、後半にはマスコミに登場したりして取り上げられたので、意識して平易な作風に転換した。
この詩などは、そのような典型である。
この詩集の終わりには「路地は毛細血管」という題で、田村と荒木との「掛け合い漫才」のような対談が9ページにわたって載っている。
というのは、この詩集の写真は東京の古い「路地」で撮られたものが大半だからである。

田村◆路地というのは、僕ふうに言うと、人間の世界の毛細血管になる。
僕は風呂で亀の子束子(たわし)を使うんだけど・・・・
荒木◆あたしもアレですよ、亀の子束子。顔もこすっちゃう。
田村◆あれ一回使ったら、やめられなくなっちゃう。
荒木◆ほかは駄目ですよね。
田村◆駄目駄目。あれでないとお湯に入った気がしない。手とか足をこすると、全体の血行が良くなるだろう。つい毛細だと思ってるけどね、毛細血管って、血行なんかに非常に重要な役割をしているんだよ。
まあ路地が毛細血管だとすると、鉄道やハイウェイなんかは、動脈だね。人間は、いったん動脈に乗っちゃうと、物流のブツになるんだよ。会社での月給というのは、モノの値段なんだ。
荒木◆毛細血管てのはいいな。あたしの感じだと、たとえば木だと枝ですよね。だからすぐに入りこみたくなっちゃう。

という具合につづく。
今どき「亀の子束子」なんて使うのは「西式健康法」なんかを信奉している人のすることで、若い人なんかにかかれば、呆れられちゃうだろう。二人とも江戸っ子だから、「てやんでぇ!」という意気軒昂な「きっぷ」が見て取れる。
荒木は「アラーキー」と称される過激な写真家だから、この本に載る写真にも女体の「緊縛」ヌードがあるなど「大人」の気配の濃いものである。窓辺に坐る若い女性のヌードが濃い恥毛をさらけだしている写真などもある。いかにも田村や荒木の面目躍如という感じの本である。この過激さゆえに多くのアラーキーファンを擁しているのである。
読み出したら面白くて、やめられないが長いので全部は引ききれない。関心のある方は買うか借りるかして読んでみてほしい。
荒木経惟については2009/10/11の記事に書いた「宮田美乃里」さんの壮絶な歌集の写真を撮ったのがアラーキーである。ぜひご覧いただきたい。

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