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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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雉子の眸のかうかうとして売られけり・・・・・・・・・・・・・加藤楸邨
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   雉子の眸(め)のかうかうとして売られけり・・・・・・・・・・・・・加藤楸邨

(きじ)は桃太郎の家来として日本人に親しまれている鳥。
世界で日本にしかいない固有種である。日本でも本州、四国、九州にいるだけである。日本の「国鳥」である。
狩の対象になって個体数が減ったので、この頃では人の手で孵化させて放鳥されている。

雄の羽は美しく、黒味を帯びた緑色で光沢があり尾羽は長い。雌は地味で、淡い黄褐色、黒い斑を一面にもち、尾羽も短い。一夫多妻というか、雄は多くの雌を支配する。
雉は狩の対象としてもよいが、「禁猟期」というのが決められており、春からの繁殖期は禁猟である。
雉の季語は「春」だが、掲出の楸邨の句に詠まれている時期は、つまり狩猟期は「冬」である。
だから、この句に関しては、季語と詠まれた時期とには、ねじれがある。春から夏の繁殖期の今の時期は禁猟期である。
楸邨の句の頃には、こういう制限はなかったかと思われるが、季語では、春と言っても二月はじめからあるから、その頃は結構寒いから、季語としても違和感もない、とも言える。

私の住む辺りでも、畑や河川敷や潅木の辺りには出没するので、よく鳴き声や姿を見ることがある。
一年中いる留鳥であるが、人里にも近くに寄ってくる。
雄は「けーんけーん」と鳴くが、これは雌を呼ぶ声で、雌は「ちょんちょん」と応える。
雉は鳴き声とともに羽音たかく飛び立つので猟の的とされ、肉もおいしい。
雉の親が子を守るのが、いじらしいほどである。

楸邨の句の雉の目が「かうかうとして」売られる、という把握の仕方は独特のもので、並の俳句の域を脱して秀逸である。

万葉集には、大伴家持の歌

   春の野にあさる雉(きぎし)の妻恋ひに己があたりを人に知れつつ

は雉の夫婦愛を描いて、今に伝わる名歌である。

古今集には、平貞文の歌

   春の野のしげき草葉の妻恋ひに飛び立つ雉のほろろとぞ鳴く

も雉の生態を見事に捉えている。

雉を詠んだ句を引いて終りたい。

 父母のしきりに恋し雉子の声・・・・・・・・松尾芭蕉

 きじ啼くや草の武蔵の八平氏・・・・・・・・与謝蕪村

 撃ちとつて艶なやましき雉子かな・・・・・・・・飯田蛇笏

 仔の牛を放てる野辺や雉子鳴けり・・・・・・・・水原秋桜子

 この空を蛇ひつさげて雉子とぶと・・・・・・・・高野素十

 雉子はいつも尾羽たひらに闘志もつ・・・・・・・・山口青邨

 雉啼くや胸ふかきより息一筋・・・・・・・・橋本多佳子

 生くること何もて満たす雉子食ひつつ・・・・・・・・細見綾子

 刻々と雉子歩むただ青の中・・・・・・・・中村草田男

 雉子啼いて安居に似たり夕日満つ・・・・・・・・大野林火



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