
霧氷林中給油所の紅(こう)に会ふ・・・・・・・・・・・・・・・・石川桂郎
「霧氷」「樹氷」というのは冬のシーズンの北国の風物詩と言えるだろう。
極度に冷えた霧が樹木その他に氷層をなして付着したものである。
掲出した桂郎の句は、そんな満目、白一色の林の中の道を車で行くと、突然、給油所の赤い建物の色が出現してきたという、色彩感覚も豊かなものである。
「霧氷」「樹氷」には、厳密な区別があるらしいが、ここでは、そんな野暮な説明は、差し控えたい。
掲出した写真を「樹氷」というのか「霧氷」というのか、私は知らない。 お教えいただきたい。
ただ、これらの季語は大正のはじめ頃から使われはじめた科学時代の季題であることだけ、書いておこう。
スキーの好きな人には、このような風景はおなじみだろう。
以下、これらを詠んだ句を引いて終わる。
燦爛たる霧氷の原に麺麭(パン)を食ふ・・・・・・・・山口誓子
樹氷林むらさき湧きて日闌けたり・・・・・・・・石橋辰之助
霧氷林日を得て沼の瑠璃きはむ・・・・・・・・角川源義
風鳴つて霧氷の空の動きをり・・・・・・・・石原八束
霧氷ならざるは吾のみ佇みぬ・・・・・・・・稲畑汀子
日の出いま手のピッケルに霧氷映ゆ・・・・・・・・岡田貞峰
オリオンの楯の傾く霧氷林・・・・・・・・渡辺千枝子
霧氷咲き町の空なる太初の日・・・・・・・・相馬遷子
眼底に樹氷の像や立ちくらむ・・・・・・・・相馬遷子
七つ星樹氷の空をありくなる・・・・・・・・中川宋淵
リフト一路宙吊り婆に樹氷浮く・・・・・・・・秋元不死男
霧氷林ぬけて焼岳より来しと・・・・・・・・福島吹斗
霧氷林三日月紐の如く飛び・・・・・・・・岡部六弥太
草千里霧氷千里となりゐたり・・・・・・・・谷川章子
樹氷林男追ふには呼吸足らぬ・・・・・・・・寺田京子
烈風に影をみじかく樹氷立つ・・・・・・・・望月たかし
樹氷林ホテルのけぶり纏きて澄む・・・・・・・・橋本多佳子
オーロラは天の羽衣樹氷立つ・・・・・・・・澤田緑生
山彦をすぐに戻せぬ樹氷林・・・・・・・・北見弟花
樹氷いま育ちざかりや蔵王山・・・・・・・・横山庄一
ライターの炎ひとひら樹氷林・・・・・・・・高橋正子
僧兵の古寺を奈落に樹氷咲く・・・・・・・・木村仔羊
頂へ逆立つ樹氷奥信濃・・・・・・・・三栖隆介
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