FC2ブログ
K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
201305<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>201307
『橿尾道子画集・燃える季節』・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
橿尾
橿尾_0001

──新・読書ノート──

     『橿尾道子画集・燃える季節』・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
          ・・・・・・エディション・ナギイ2013/06/21刊・・・・・・・・・・

こういう本が、私の兄・木村重信から送られてきた。
橿尾道子という人は私には未見の人であるが、すでに1988年にお亡くなりになっている。夫君の橿尾正次氏が出されたものである。
発行者・橿尾正次とは、こういう人である。→ 橿尾正次・略歴
この人については次のような動画があるので、どんな作家なのかが判る。 → 「橿尾正次展・タネ」
(橿尾正次展・「タネ」2007/10/25~10/31に収録されたもの)
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
さて、彼女は詩や小説も書いていたらしい。「まきの・なぎ」というのがペンネームだったようだ。
この本には、彼女の詩が四つほど載せられているので、それをスキャナで取り込んでおく。
私は絵には素人なので、面白いと思った絵を二点だけ出しておく。
この本の巻末には「プリミティブの世界」と題した彼女の短い文章が載っており、メキシコなどのプリミティヴ・アートへの憧憬が書かれている。
それに続いて、木村重信の五ページに及ぶ解説文があり、夫君・正次氏とのかかわりのいきさつなどが書かれていて、行き届いた佳い文章てある。

橿尾_0006
橿尾_0005

     燃える季節・・・・・・・・・まきの・なぎ

   土くれが蒸しあげられると
   穴ボコが海綿のように這いまわる
   網の目が整列すると
   ガラス窓から天を見あげる
   あおくさくて頭の尖がった生物群がいた。
   長たるものは目玉が法外に出っ張り、
   胴体は粘液質でふくれあがって異常
   掌の中に三個の雌をかくして温める
   雌は水のように透きとおった卵を生ん
   で、自分はばっしゃりと底にしづみ、
   拍子をくらって卵巣を破いた。
   水泡が浮かんだたげである
   土くれがほてった足から汗をたらして
   動かない自分の尻に腹を立て
   駆けてきた馬と牛の尻尾をつかんで
   殺してやると怒鳴る
  
      漁村・・・・・・・・まきの・なぎ

   石だらけの海岸を
   後には霧をかぶった黒い山と
   粘板岩の島が点在している
   てんぐさの匂いのする
   裏日本の
   小さな漁村
   雨模様の日は船が繫がれ
   中だけが明かるいさむしい風景よ
   日焼けした子供達よ
   波を追う女の子よ
   はるばるとやって来たわたくしには
   此の海岸がかなしくて堪らない
   波が悲哀を伝えているようだ
   ひとの頭にのしかゝる黒い雲を悲しむ様だ
   岩の多い海岸の
   乾魚の臭いに満ちた
   細々とした聚落を前にして
   泣いては笑い 泣いては笑い
   わたしは頑是ない子供のよう
   小石を拾っては抉に入れる

       サルビアと少女・・・・・・・まきの・なぎ

   サルビアよ サルビアよ
   消えゆく季節の
   おわりの花よ
   こんな郊外の廃園にもゆる不思議なあかり
   花 あかい房 柿の下でもえるほのほ

   くたびれた少女の願い あかい着物を
   買いたいな あかい林檎が喰べたいな
   やまざる 執拗なねがい

   サルビアよ かねの無い子を騒がせよ もえて
   もえて 胸の動悸がとまるまで
   あかい花房をもえたゝす末の花

      怪物がきた・・・・・・・まきの・なぎ

   二枚貝のひとひらにくみとられた黒い地面を
   氷河にとざされた不毛地にしようとして
   ジュラルミンの怪物が急降下した
   あざやかな燐光をもやした背に
   精悍な首をのせてあくびをする
   その毒風で米粒はどろどろとなり
   ズボンは木霊して裂けた
   「ヤメテ 命アルコトヲ神様に
   カンシャシナケレバ・・・・・・」
   わたしはゆわえられおったてられた
   振り向く事すら拒絶され
   田圃につるされた鳴子のように
   地図の縁にぶらさがり
   馬と小麦を恋しがったが
   重苦しいある夜が来ると
   おれたちの隅なくひしめく図面は裂けて
   日本海に穴ができる
--------------------------------------------------------------------------------
道子夫人が亡くなって、もう十数年が経っているのに、詩・画集を出された夫君の「愛」に満ちた本である。
拙ブログで、ご披露する次第である。ご恵贈に感謝する。

スキャナで取り込むと、どうしても「文字化け」が、たくさん起きる。子細に修正したが、まだあれば指摘されたい。すぐに直します。
特に「燃える季節」は、手書きのものなので、すこし読み取りにくい個所もあったので、よろしく。


copyright © 2021 Powered By FC2ブログ allrights reserved.