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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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玉井清弘歌集『屋嶋』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
玉井

──新・読書ノート──

      玉井清弘歌集『屋嶋』・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                   ・・・・・・・角川書店2013/09/25刊・・・・・・・・

玉井清弘さんは、私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)を出したときに、角川「短歌」誌上で一ページにわたって紹介の文章を書いていただいた。
これは上のリンクにしたところでお読みいただける。 ↑

この歌集は玉井さんの第八歌集ということになる。
玉井さんの本については『時計回りの遊行 歌人のゆく四国遍路』や第七歌集『天籟』について、このブログに記事を書いた。

歌集名の『屋嶋』のことである。
玉井さんは高松市の「高松町」という、本家の高松にお住まいなのだが、近年、ご自宅から屋島へのウォーキングを日課にしているという。
行ったことのある人には判るが、屋島は台形状になった高台で、源平の頃の古戦場だったところ。
7世紀天智天皇6年に瀬戸内海を防衛するための古代山城の屋嶋城(やしまのき)が建造されたが、この歌集名は、これに因んでいる。
ここには「屋島寺」もある。
少し歌を引いてみよう。

   春の雨こおろこおろと降り来れば石蕗の薹たけてしまいぬ

   古道ゆくわれは小石を踏みしめて尾を持つ人の供となりたり (熊野古道)

   やさしさの切実に欲し一合の冷酒を立ちてのみどにおとす

   二周目を歩き終わりてなに見えしなんにも見えずまた歩くべし (歩いての四国遍路二度目を結願)

   屋嶋城あたりに鳴きしほととぎすむこうの谷に声しぼり鳴く

   音高く響るときの来ぬウォーキングシューズに踏みて石径をゆく

   幾つ岬遍路ころがし越えて来し人と握手す言葉なきまま

   たのもさん懐かしき語の連れ戻す 少年の日の伊予の日だまり

   すすりたるさぬきうどんの白たえは体の奥へはしり下りぬ

   はんみょうにであううれしさ行先をかえて從きゆく屋島山頂

歌に特別の解説は不要だろうが、玉井さんは二度の四国遍路をはじめとして、「歩き」を、よくなさるようである。
和歌山の「熊野古道」も歩かれたらしい。そういう歌があるからである。
終わりから三首目の歌から、玉井さんが伊予─愛媛県で生まれ、育ったことが判る。
大学を出て、香川県で教職につかれて、人生の大半を、ここで過ごされたので、香川県が故郷のようになってしまった。
「あとがき」に、それらのことに触れた文章がある。

   開花宣言待ちている日に届きたる師の訃報なりすべなくいたり (武川忠一逝去)

玉井さんは武川忠一主宰の短歌結社「音」の創刊同人で居られる。
この一首に師を喪った万感の思いが籠っている。

   塩麹はやる世にてあまがらき時代は熟しくずれんとする

   五本指の靴下をはく人体に指を持ちいるこの身の不思議

   ほどほどのうどん好きにはなりにけり讃岐うどんの本場に住みて

今の時代の流行りのことどもにも、さりげなく触れた作歌態度が微笑ましい。

   あの人をどうするのかと問われたりいきなりの問言葉を失う

私は、この歌の前で立ち止まったが、何の解も、ない。

別のところでも書いたが、玉井さんは奥さんとか家族のことは皆無と言っていいほど、歌には詠まない人である。
この本には珍しく「息子」「孫」を詠んだ歌がある。 少し引く。

   あんなにも子のめんどうをたのしみてなす息子かとおどろきて見つ

   このような家族望みていたのかと息子のなせる育児にみはる

   じいじいの蜜柑を食べる顔面に眼ん玉ずれて左右ふぞろい

玉井さんは息子の育児ぶりに驚いているが、今の若者の在りようは、男と女が育児にかまけるのが普通なのである。
三首目の歌は幼子の書いた「じいじい」の絵であろうか。

   朝酒の力をかりて選歌せり四肢にみなぎる力あるうち   

   救いがたくひとりの思い満天の星の下にて放尿なせば

   生きし世の何の序列に並ばんか死後整列の号令あらば

巻末に載る歌である。
ときどき「酒」の歌が出てくるが、酒好きの様子である。
短歌教室などの選歌をなさるのである。
今回の歌集の作品は、総体に平易なものが多い。
最後の歌などは、先生に「老い」のはしりを感じるのは私だけだろうか。
佳い歌集を恵贈いただき感謝申し上げ、拙いが鑑賞を終わる。


 
   
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