柿若葉愛静かなる日を照るも・・・・・・・・・・・・岩崎富美子
今しも「柿若葉」のうす緑が美しい季節である。
私の地方では、柿の若葉が茂りはじめて来て、枝に止まるスズメなどの小鳥の姿が隠れるようになると、お茶摘みが出来る頃になると言われている。
「柿若葉」の適当な写真がないので、もう少し先になるが、柿の花の写真を掲げておく。
それにしても、この句のように「愛静かなる」などと言われると、この作者は、この句を詠んだとき「静かな愛」に包まれていたのだなぁと思う。
なかなか、こういう句や歌は詠めないものであり、羨ましい。
昔は「柿」の木は民家の敷地には必ず一本くらいはあったものだが、この頃では見かけなくなった。今は昔ほど「柿」の実を食べなくなった。
他に、いくらでも「食べるもの」が豊富にあって、第一、ナイフで皮を剥いて、小分けにして、種を出して食べなければならない、というのが面倒らしい。
その点、指だけで剥いて食べられる「みかん」や「バナナ」などには衰えない人気があるのと好対照である。
初夏に「柿の若葉」は、つややかに光る萌黄色をしていて、さわやかで新鮮である。
みずみずしくデリケートに、のびのびした「命」そのもののような若葉であり、初夏の心にひびく眺めのひとつであるのは、確かであろう。
以下、「柿若葉」の句は多くはないので、「柿の花」の句も引いて終わる。
柿若葉雨後の濡富士雲間より・・・・・・・・・・渡辺水巴
柿若葉重なりもして透くみどり・・・・・・・・・・富安風生
節目多き棺板厚し柿若葉・・・・・・・・・・中村草田男
まだ柿のほか月かへす若葉なし・・・・・・・・・・篠原梵
柿若葉嬰児明るき方のみ見る・・・・・・・・・・鎌田容克
父の代の風が吹きをり柿若葉・・・・・・・・・・高橋沐石
柿若葉すこし晴れ間を見せしのみ・・・・・・・・・・川口益広
こぼるるもくだつも久し柿の花・・・・・・・・・・富安風生
柿の花農婦戸口に入る背見ゆ・・・・・・・・・・大野林火
柿の花あまたこぼれて家郷たり・・・・・・・・・・岸風三楼
飲食に腋下汗ばむ柿の花・・・・・・・・・・岡本眸
葬式に従兄弟集まる柿の花・・・・・・・・・・広瀬直人
総領は甚六でよし柿の花・・・・・・・・・・高橋悦男
ふるさとへ戻れば無官柿の花・・・・・・・・・・高橋沐石
行宮跡ひそかに守りて柿の花・・・・・・・・・・築部待丘
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