
花の芯すでに苺のかたちなす・・・・・・・・・・・・・・・・飴山実
今日3月16日は俳人・飴山実の忌日である。
飴山実は俳人としても有名な人であるが、科学者としても高名な人である。
「日本農芸化学会功績賞」というのがあり、昭和63年 1988年 、 山口大学農学部教授のときに「 酢酸菌の生化学的研究 」という論文で、この賞を得ている。
昭和元年、石川県小松市生まれ。旧制四高の勤労動員中に芭蕉や蕪村の七部集を読んで作句。
家業が醤油醸造業だったので、昭和22年京都大学農学部に入学し、発酵醸造学を専攻した。
昭和25年卒業して、大阪府立大学農学部助手に就職。その後、静岡大学、山口大学教授を歴任し、応用微生物学研究の礎を築く。
先に書いたような学会の最高賞を得た。酢の研究では世界的権威。
俳句では、金沢大学教授で、かつ俳人の沢木欣一が戦後創刊した「風」に参加。
自らも「楕円律」を創刊し、戦後の俳壇で活躍したが、のち無所属となり、結社も持たず公平な俳句評論に定評があった。
安東次男の人と書に親しむ。
平成12年(2000年)3月16日、東京での選句会を翌日に控え、腎不全のために急逝した。
句集に『おりいぶ』『少長集』『辛酉小雪』『次の花』など。
現代俳壇の中堅として活躍する長谷川櫂も一時彼に師事した。
以下、彼の句を引いて終る。
てのひらに葭切の卵のせてきぬ
熱のからだはどこも脈うつ青林檎
花林檎貧しき旅の教師たち
授乳後の胸拭きてをり麦青し

うつくしきあぎととあへり能登時雨
柚子風呂に妻をりて音小止みなし
春浅き海へおとすや風呂の水
蚊を打つ我鬼忌の厠ひびきけり
土堤刈つてより二日目の曼珠沙華
奥能登や打てばとびちる新大豆
手にのせて火だねのごとし一位の実
比良ばかり雪をのせたり初諸子(もろこ)
鮒二つ日たけて釣れし丈草忌
花杏汽車を山から吐きにけり
法隆寺白雨やみたる雫かな
あをあをとこの世の雨のははきぐさ
茄子の花こぼれて蜘蛛をおどろかす
田雲雀の十(とを)も来てゐる夕日かな
年酒して獅子身中の虫酔はす
この峡の水を醸して桃の花
酒唎(き)いてやや目のほてる初桜
光琳忌きららかに紙魚(しみ)走りけり
大雨のあと浜木綿に次の花
花筏やぶつて鳰の顔のぞく
山ふたつむかふから熊の肉とどく
青竹に空ゆすらるる大暑かな
かなかなのどこかで地獄草紙かな
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