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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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一二輪まことに紅濃き梅の花かなしきかなや若き死者のこゑ・・・・木村草弥
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  一二輪まことに紅濃き梅の花
    かなしきかなや若き死者のこゑ・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥


いよいよ梅の花が咲きはじめる季節になった。
「梅」の花の時期になると、私には忘れられない亡姉・登志子の忌日が巡ってくる。

この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るもので、自選にも採っているのでWeb上のHPでもご覧いただける。
この歌は私の亡長姉・登志子を詠んだもので『嬬恋』をはじめ、第一歌集『茶の四季』(角川書店)にも、姉のことを詠った歌がある。
先に、それらの歌を引用しておく。

  紅梅を見つつ独りの酒に酔ふけふは姉の忌と思ふたまゆら・・・・・・・・・・・・木村草弥

  紅梅が美しく咲けばよみがへる血喀(は)きしときの姉の悲鳴が

  めつむれば紅梅匂ひをしたたらす月に絹暈(けんうん)かかる夜明り

  一二輪まことに紅濃き梅の花さびしきかなや若き死者のこゑ

  梅の香に抱かれて死なむと言ひし姉いまだ寒さの厳しかりしを

  うら若き処女(をとめ)のままに姉逝きて忌日の二月十九日かなし

  満開の梅の下にてわれ死なむと言ひし姉逝き五十年過ぐ

姉・登志子とは私は十歳の年齢の開きがある。上の歌に詠んだように姉が結核で「喀血」したとき、私は同じ二階の部屋に寝ていたのである。
長兄・木村庄助が結核に感染して帰郷して来て以来、わが家は次々と結核に罹った。
長兄が昭和18年5月に死んで、姉は、その翌年19年2月19日に死んだ。
姉は喀血したとき、私にすぐに階下に降りるように悲痛な声をあげた。私は中学一年生であった。
そのような体験は私の少年期の記憶として鮮明に残ることになった。
これらのことは何度もあちこちに書いたので、ここでは詳しくは書かない。
ただ肉親として姉弟としての関係のほかに、上に書いたようなことがあるので私には忘れがたい悲痛な思い出として残っているのである。
念のために書いておくが、死んだのは庄助が先だが、私たち兄姉では、姉・登志子が一番上である。
5首目と7首目の歌については、もうあちこちに何度も書いたことだが、西行の有名な歌があり、それは「桜」を詠ったものだが、私の村は鎌倉時代以来、「梅」の名所でもあるので、姉は、明らかに西行の「ーー花のもとにてわれ死なむーー」の願望を踏まえた上で、「梅」に置き換えて言った心境だったのである。
引用した終りの歌では五十年となっているが、この歌を作ったときが五十年だったわけで、今では、もう六十年を過ぎてしまった。まさに、嗚呼というほかない歳月の速さである。
今日は登志子の祥月命日にあたるので、ここに記事を記して、姉に捧げるものである。
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梅の花は桜と並んで代表的な春の花だが、当地・青谷は鎌倉時代から梅林で有名なところであり、私たちには、ゆかりのある花なのである。
その所以については、上に書いた通りである。
梅は香気が高く、気品のある清楚な花であり、桜のようにわっと咲いて、わっと散ることもなく、まだ寒さの残る気候の中で、長く咲きつづけるから、私などは、どちらかというと、梅の方が好きである。
古くから日本人には親しまれ、「万葉集」では、花と言えば梅のことであった。
以下、梅を詠んだ句を引いておく。

 梅一輪踏まれて大地の紋章たり・・・・・・・・・・中村草田男

 勇気こそ地の塩なれや梅真白・・・・・・・・・・中村草田男

 悲しめば鱗のごとく梅散りしく・・・・・・・・・・原コウ子

 梅も一枝死者の仰臥の正しさよ・・・・・・・・・・石田波郷

 梅白しまことに白く新しく・・・・・・・・・・星野立子

 梅が香に襲はれもする縋られも・・・・・・・・・・相生垣瓜人

 梅咲けば父の忌散れば母の忌で・・・・・・・・・・安住敦

 梅挿すやきのふは酒のありし壜に・・・・・・・・・・石川桂郎

 梅二月ひかりは風とともにあり・・・・・・・・・・西島麦南

 静けさのどこか揺れゐて梅白し・・・・・・・・・・鷲谷七菜子

 月光に花梅の紅触るるらし・・・・・・・・・・飯田蛇笏

 うすきうすきうす紅梅によりそひぬ・・・・・・・・・・池内友次郎

 紅梅の燃えたつてをり風の中・・・・・・・・・・松本たかし

 紅梅や熱はしづかに身にまとふ・・・・・・・・・・中村汀女

 厄介や紅梅の咲き満ちたるは・・・・・・・・・・永田耕衣

 白梅のあと紅梅の深空あり・・・・・・・・・・飯田龍太

 紅梅の天死際はひとりがよし・・・・・・・・・・古賀まり子
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今日は暦の上では「雨水」ということである。
これからは、一雨ごとに暖かくなっていくという、ひとつの指標である。こういう季節感を大切にしたい。




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