
天の川怒涛のごとし人の死へ・・・・・・・・・・・・加藤楸邨
「天の川」は一年中みえるが、春は低く地平に沿い、冬は高いが光が弱い。
夏から秋にかけて、写真のように起き上がり、仲秋には北から南に伸び、夜が更けると西の方へ向かう。
「銀漢」という表現もあるが「天の川」のことである。
天の川の句としては芭蕉の「荒海や佐渡に横たふ天の川」などの秀句がある。
天の川は英語では「ミルキー・ウエィ」というが、これはギリシア神話の最高神ゼウスの妻・ヘラの乳が天に流れ出したものというところから由来する。
実際は、銀河系の淡い星たちの光が重なりあって白い帯となって見えるもの。
銀の砂のように美しく、七夕伝説とも結びついて「星合」の伝統となっている。
『万葉集』に山上憶良の歌
天の河相向き立ちてわが恋ひし君来ますなり紐解き設(ま)けな
の歌が、古くからあり、美しさと星合の七夕伝説とが結びついてイメージされている。
以下、歳時記に載る天の川の句を引いておく。
北国の庇は長し天の川・・・・・・・・・・・・正岡子規
虚子一人銀河と共に西へ行く・・・・・・・・・・・・高浜虚子
別るるや夢一筋の天の川・・・・・・・・・・・・夏目漱石
天の川人の世も灯に美しき・・・・・・・・・・・・沼波瓊音
草原や夜々に濃くなる天の川・・・・・・・・・・・・臼田亞浪
銀河より聞かむエホバのひとりごと・・・・・・・・・・・・阿波野青畝
けふありて銀河をくぐりわかれけり・・・・・・・・・・・秋元不死男
遠く病めば銀河は長し清瀬村・・・・・・・・・・・・石田波郷
妻と寝て銀漢の尾に父母います・・・・・・・・鷹羽狩行
ちちははに遠く銀河に近く棲む・・・・・・・・・・・・上村占魚
天の川逢ひては生きむこと誓ふ・・・・・・・・・・・・鷲谷七菜子
乳足りて息やはらかし天の川・・・・・・・・・・・・石塚悦郎

この句とは直接の関係はないが、私はこんな歌を創ったことがある。
(第四歌集『嬬恋』所載)
わがいのちいつ終るべきペルセウス流星群の夜にくちづける・・・・・・・・・・・木村草弥
銀河からの連想であるが、今しもペルセウス流星群の活動の激しい時期である。
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