

↑ 黒部五郎岳
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草弥の詩作品<草の領域>
poetic, or not poetic,
that is the question. me free !
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──「未来山脈」掲載作品──(21)
「未来山脈」掲載作品 「その岩」・・・・・・・・・・・木村草弥
・・・・・・2019/09掲載・・・・・・・
その岩 木 村 草 弥
かつて、日本列島を氷河が覆っていたことがあった
現在の気象状況からその光景を想像するのはなかなか難しい
当時に較べて今ははるかに温暖だし地形も穏やかだから
氷河時代の名残がカールやモレーンと呼ばれる氷蝕地形だ
中部山岳国立公園の黒部五郎岳は標高二八三九m
高い山でもないし険しい山でもない黒部川源流の風景
その景観の中にひときわ目立つ岩がある
その岩は黒部五郎岳カールの高山植物に囲まれている
「割れ」が入ったところなども長年の風雪を耐えてきたのだ
もとあったところから流転して今の場所へ。そして留まる
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この号は花岡カヲル歌集『枯葉のみやげ』の特集号となっており、私が2018/11/27付でブログに載せた鑑賞文も載せられているので参照されたい。
ただし、私の書いた旧記事の初めの部分17行ほどがカットされているので、詳しく上にリンクした部分を見てもらいたい。

藍布一反かなかな山からとりに来る・・・・・・・・・・・・・・・・・飯島晴子
「ひぐらし」はカナカナカナと乾いた声で鳴く。だから、「かなかな」とも呼ぶ。夜明けと夕方に深い森で鳴く。
市街地や里山では聞かない。
この声を聞くと、いかにも秋らしい感じがするが、山間部に入ると7月から鳴いている。海抜の高度や気温に左右されることが多いようだ。
掲出した写真は、ひぐらしの雄である。
「蜩」ひぐらしは、その鳴き声が夏から秋への季節の移り変わりを象徴するようで、何となく寂しそうで、古来、日本人には愛されてきた。
『万葉集』巻十・夏雑に
もだもあらむ時も鳴かなむひぐらしのものもふ時に鳴きつつもとな
同・秋雑に
暮(ゆふ)影に来鳴くひぐらしここだくも日毎に聞けど飽かぬ声かも
『古今集』秋・上に
ひぐらしの鳴く山里の夕暮は風よりほかに訪ふ人もなし
という歌があり、ひぐらしの特徴を巧く捉えている。『和漢三才図会』には「晩景に至りて鳴く声、寂寥たり」とあるのも的確な表現である。
掲出の飯島晴子の句は、並みの発想とちがって「藍布一反」を、かなかなが「山からとりに来る」と詠んで、前衛句らしい秀句である。
ひぐらしを詠った俳句も多いので、以下に引いて終りにする。
蜩や机を圧す椎の影・・・・・・・・正岡子規
面白う聞けば蜩夕日かな・・・・・・・・河東碧梧桐
ひぐらしに灯火はやき一と間かな・・・・・・・・久保田万太郎
かなかなの鳴きうつりけり夜明雲・・・・・・・・飯田蛇笏
ひぐらしや熊野へしづむ山幾重・・・・・・・・水原秋桜子
蜩やどの道も町へ下りてゐる・・・・・・・・臼田亞浪
会へば兄弟(はらから)ひぐらしの声林立す・・・・・・・・中村草田男
蜩や雲のとざせる伊達郡・・・・・・・・加藤楸邨
ひぐらしや人びと帰る家もてり・・・・・・・・片山桃史
川明りかなかなの声水に入る・・・・・・・・井本農一
蜩や佐渡にあつまる雲熟るる・・・・・・・・沢木欣一
蜩の与謝蕪村の匂ひかな・・・・・・・・平井照敏
しろがねの蜩の翅 京ことば・・・・・・・・鈴木石夫
ひぐらしに肩のあたりのさみしき日・・・・・・・・草間時彦
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