
こほろぎや眼を見はれども闇は闇・・・・・・・・・・・・・・・鈴木真砂女
秋に鳴く虫で人家近くで鳴くのは蟋蟀(こおろぎ)で、立秋頃から晩秋まで鳴く。
日本には10数種類いるそうで、掲出の写真はエンマコオロギで、鳴き声はコロコロと聞こえる。
その他にリーリーと鳴くツヅレサセコオロギ。
チ、チ、チと鳴くオカメコオロギなどがいる。
真砂女の句は、コオロギの、特にエンマコオロギの顔を見たときの、大きな眼の特徴を巧みに捉えている。
古今集時代から江戸時代まで、コオロギのことを「きりぎりす」と呼んでいたと言い、混同しやすい。
コオロギを「いとど」と呼ぶ地方もあるようだ。コオロギの声はマツムシに次いで賞せられ、秋の虫の音の代表的なものとされてきた、という。
以下、コオロギの句を引いておく。
蟋蟀や乳児が寝返り打つて力む・・・・・・・・森澄雄
こほろぎや入る月早き寄席戻り・・・・・・・・渡辺水巴
こほろぎの覗いて去りぬ膳の端・・・・・・・・吉川英治
闇にして地の刻移るちちろ虫・・・・・・・・日野草城
中尊寺うばたまの暗つづれさせ・・・・・・・山口青邨
蟋蟀の無月に海のいなびかり・・・・・・・・山口誓子
蟋蟀が深き地中を覗き込む・・・・・・・・山口誓子
蟋蟀に覚めしや胸の手をほどく・・・・・・・・石田波郷
こほろぎの真上の無言紅絹(もみ)を裂く・・・・・・・・平畑静塔
こほろぎやいつもの午後のいつもの椅子・・・・・・・・木下夕爾
こほろぎのこの一徹の貌(かほ)を見よ・・・・・・・・山口青邨
地の闇となり蟋蟀の一途なる・・・・・・・・山口草堂
つづれさせ身を折りて妻梳(くし)けづる・・・・・・・・長谷川双魚
若くて俗物こおろぎの土塊草の中・・・・・・・・金子兜太
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