
↑ シーギリヤ・ロック──スリランカ

↑ シーギリヤ・ロックの俯瞰

↑ ロック頂上への登り口

↑ 岸壁画の一部

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草弥の詩作品<草の領域>
poetic, or not poetic,
that is the question. me free !
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忽然とシーギリヤ・ロック巨いなる
岩現れぬ密林の上に・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
・・・・・・・第六歌集『無冠の馬』所載・・・・・・・・・・
忽然とシーギリヤ・ロック巨いなる岩現れぬ密林の上に
いづこにも巨岩を畏れ崇(あが)むるかシーギリヤ・ロック地上百八十メートル
父殺しのカーシャパ王とて哀れなる物語ありシーギリヤ・ロック
汗あえて息せき昇る螺旋階ふいに現はるシーギリヤ美女十八
草木染に描ける美女(アプサラ)は花もちて豊けき乳房みせてみづみづし
ターマイトン土で塗りたる岩面に顔料彩(あや)なり千五百年経てなほ
貴(あて)なる女は裸体、侍女は衣(きぬ)被(き)て岩の肌(はだへ)に凛と描ける
昔日は五百を越ゆるフレスコ画の美女ありしといふ殆ど剥落
獅子(シンハ)の喉(ギリヤ)をのぼりて巨いなる岩の頂に玉座ありしか
聞こゆるは風の音のみこの山に潰えしカーシャパ王の野望は
熱帯にも季節あるらし花の季は十二月から四月と言ひぬ
──つい数年前までタミール人「解放の虎」テロとの血みどろの抗争があり、大統領が訴へた──
「憎しみは憎しみにより止むことなく、愛により止む」ブッダの言葉
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掲出したのは私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)だが、この歌集の表紙の写真を撮るために2003年の春にスリランカへ行った。
それにまつわる紀行文「光り輝くインド洋のひとつぶの涙の雫-スリランカ」があるが、この歌集には、その時に作った歌は収録できなかった。
この巨大な石塊の岩棚に美女アプサラの絵が描かれている。
スリランカはイギリスの植民地の頃には「セイロン」と呼ばれていたが、「シーギリヤ・レディー」と俗称されている。
これらの歌は、この歌集以後のものとして結社誌にも発表したし、習作帳にも保存してあったが、第五歌集『昭和』(角川書店)編集の際には収録を忘れて、これにも洩れている。
そんなことで久しぶりに『無冠の馬』に収録した次第である。
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