
あけびの実親指人差指で喰ふ・・・・・・・・橋本美代子
始めに書いておく。この人は「橋本多佳子」の娘であるから、念のため。
「あけび」は漢字では「通草」と書く。
雑木林などに生える落葉の蔓低木である。栽培のものもあるかも知れないが、野生のものであろう。
(草弥・注) この記事をご覧になった友人F氏からメールが来た。
「三つ葉、五つ葉とも栽培して観察していましたが、蔓性植物なので、傍の梅の木などに巻き付き日光を遮るなどが起こり、このままでは梅の木などを枯らす恐れがあると思い駆除しました」とある。
野生では、他の植物たちと「共生」しているのだろうが、人間が管理するようになると、キバを剥くようになるのである。安易に取り込むと大変なことになる。
このことは今「竹林」でも起こっていて人間の管理が行き届かないと大問題になっている。念のため付記する。Fさん有難うございました。
今ではアケビなんて言っても、知る人も少ないし、むかし食べたときは甘くておいしかったが、いまなら食べても美味とは思わないのではなかろうか。
写真①が熟して果皮が裂けた実である。黒い実のまわりの白い果肉を食べる。
アケビは春4月に写真②のように花を咲かせる。

名前の由来は、裂けた「開け実」が転じてアケビになったと言われている。
果肉は甘くて、山の味覚として賞味されたが、果皮のことは、私は何も知らなかったが、干しアケビや塩漬けにしたりするらしい。
山形地方には春の彼岸の決まり料理として干しアケビを食べる習慣があるらしい。また秋の彼岸には、先祖がアケビの船に乗って来るという言い伝えから仏壇に供え、あとキノコ類を詰めて焼いて食べるという。

夏に写真③のように緑色の若い実になり、秋になって熟して、果皮は紫色に熟して、果皮が縦に裂けて果肉が見えるようになる。
茎は「木通」モクツウ、果実を「肉袋子」ニクタイシと言うらしい。漢方では生薬として使われるし、蔓は籠などを編み、葉や茎は草木染の染料となる。
俳句にも詠まれているが、カラスなどが食べているのを見て、そこにアケビがあることが判明したりするらしい。
写真④は果皮が裂ける前のアケビの実である。

以下、俳句に詠まれる句を引いて終りたい。
鳥飛んでそこに通草のありにけり・・・・・・・・高浜虚子
むらさきは霜がながれし通草かな・・・・・・・・渡辺水巴
主人より烏が知れる通草かな・・・・・・・・前田普羅
垣通草盗られて僧の悲しめる・・・・・・・・高野素十
通草食む烏の口の赤さかな・・・・・・・・小山白楢
夕空の一角かつと通草熟れ・・・・・・・・飯田龍太
滝へ行く山水迅き通草かな・・・・・・・・山口冬男
採りたての通草を縁にぢかに置く・・・・・・・・辻田克己
もらひ来し通草のむらさき雨となる・・・・・・・・横山由
通草垂れ藤の棚にはあらざりし・・・・・・・・富安風生
何の故ともなく揺るる通草かな・・・・・・・・清崎敏郎
あけびの実軽しつぶてとして重し・・・・・・・・金子兜太
通草熟れ消えんばかりに蔓細し・・・・・・・・橋本鶏二
山の子に秋のはじまる青通草・・・・・・・・後藤比奈夫
あけび熟る鳥語に山日明るくて・・・・・・・・福川ゆう子
通草手に杣の子山の名を知らず・・・・・・・・南部憲吉
口あけて通草のこぼす国訛・・・・・・・・角川照子
山姥のさびしと見する通草かな・・・・・・・・川崎展宏
のぞきたる通草の口や老ごころ・・・・・・・・石田勝彦
八方に水の落ちゆく通草かな・・・・・・・・大嶽青児
一つ採りあとみな高き通草かな・・・・・・・・嶋津香雪
山の神留守のあけびを採りにけり・・・・・・・・浅井紀丈
あけびなぞとりて遊びて長湯治・・・・・・・・阿久沢きよし
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