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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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小川軽舟第五句集『朝晩』エッセイ集『自句自解ベスト100』『俳句と暮らす』・・・木村草弥
朝晩_NEW

小川_NEW

俳句_NEW

──新・読書ノート──

     小川軽舟第五句集『朝晩』エッセイ集『自句自解ベスト100』『俳句と暮らす』・・・・・・・・・・・木村草弥

先ず、初めに「wikipedia小川軽舟」を出しておく。経歴などは、ここで見られたい。
歌集、句集の出版社として「ふらんす堂」は、装丁にも凝った佳い本を出す。
この句集も、こうしてスキャンすると何が何だか分からないが、朝の字の旁の「月」は銀箔押しであり、晩の字の「日」は金箔押し、で、それぞれ日月のイメージを表している。
句集の特徴は、画像でも読み取れると思うが、「帯文」に見事に要約されて載っている。
「帯」裏には「自選十二句」が載せてある。 それを引いておく。

    *妻来たる一泊二日石蕗の花
    *雪降るや雪降る前のこと古し
    *葬送の鈸や太鼓や山笑ふ
    *夕空は宇宙の麓春祭
    *レタス買へば毎朝レタスわが四月
    *飯蛸やわが老い先に子の未来
    *松蝉の声古釘を抜くごとし
    *月涼し配管老いし雑居ビル
    *めらめらと氷にそそぐ梅酒かな
    *ひぐらしや木の家に死に石の墓
    *駅前の夜風に葡萄買ひにけり
    *いつか欲し書斎に芙蓉見ゆる家

会社に勤めるサラリーマンとして毎朝きちんと出勤し、夕方には退社して単身赴任先からマンションに帰る。
単身赴任して、どんな生活をしているのか、という日常が、他の二冊の本で明かされる。
既に本人が本で書いていることだから、ここで明かしても許されると思うが、阪神沿線の岡本駅のすぐ傍のマンションということである。
自炊して食事も自分で作る。だから「レタス買へば毎朝レタスわが四月」ということになる。
酒も好きである。だから「めらめらと氷にそそぐ梅酒かな」である。
そういう平凡な日常が俳句として綴られる。
ネット上に著者に聞く『俳句と暮らす』小川軽舟インタビューが出ているので、それを読んでもらいたい。、
これもネット記事なので恐縮するが「増殖する俳句歳時記」に詩人の清水哲男が書いている一文がある。  ↓

  <   露草や分銅つまむピンセット         小川軽舟
季語は「露草(つゆくさ)」で秋。雑草と言ってよいほどに、昔はどこてでも見かけられたが、最近はずいぶんと減ってしまった。花は藍色で、よく見ると、まことに微細にしてはかない味わいがある。その自然の微細と人工的な微細とを重ね合わせた掲句は、一瞬読者の呼吸を止めさせるように働きかけてくる。「分銅(ふんどう)」は、化学薬品などを精密に計量するための錘(おもり)だ。計り方そのものは単純で、上皿てんびんの片方に計りたい物を乗せ、片方に分銅を何個か乗せて釣り合いを取るだけ。父が化学に関わっていたので、写真と同じセットが我が家にもあった。分銅は付属の「ピンセット」で取り扱い、指を触れたり、落として傷をつけることのないよう注意しなければならない。「校正」と言うそうだが、そんな分銅の誤差を専門的に修正する商売までがある。何を計ったのだったか。実際に計らせてもらったときには、小さな分銅をつまんで乗せるまでは、ひとりでに呼吸が止まるという感じだった。息をすると、つまんだピンセットが震えてしまう。それほどに緊張を強いられる作業を専門としてつづけている人ならば、おそらく露草などの自然の微細なはかなさにも、思わず息を詰めるのではなかろうか。句の情景としては、たとえば大学の古ぼけた研究室の窓から、点々と咲く露草の様子が見えている……。『近所』(2001)所収。(清水哲男)       >

私は、これらの本をアマゾンと楽天ブックスの古本で買い求めたが、残余の句集は買わなかったが、この第一句集『近所』は第25回俳人協会新人賞を得ている。

こんなことを書いては「鑑賞」にならないのだが、私の、この文章は鑑賞でもなく、書きなぐりの「寸感」とでも言うべきものであることをお断りしておきたい。
経歴を見れば分かる通り、東大出の秀才だから、文章を書かせたらピカいちである。
句集よりも、こういうエッセイ本が、とても面白い。小川軽舟という人間としてのイメージが彷彿と浮かび上がってくる、というものである。
単身赴任で会社勤めをし、俳句結社「鷹」の主宰をこなし、毎日新聞俳壇の選者をし、という忙しい日常を過ごす小川である。
ここで余談だが、彼の経歴を見て気づいたことがある。彼は1961年2月7日生まれで、私は1930年2月7日生まれで31歳違いの同月日の生まれである。
偶然の一致だが、有名人と同じ日生まれと知って嬉しい気分になったことを書いておく。 (閑話休題)

『俳句と暮らす』には
    ⒈ 飯を作る
    ⒉ 会社で働く
    ⒊ 妻に会う
    ⒋ 散歩をする
    ⒌ 酒を飲む
    ⒍ 病気で死ぬ
    ⒎芭蕉も暮らす

の項目建てで書かれている。
詳しくは引かないが、この項目が遺漏なく物語っているだろう。
その土地にまつわる先人たちの俳人のこと。先師・藤田湘子のこと。岡本に住んだ金子兜太のこと。 などが綴られる。
面白い本である。こう言っては何だが、私は句集よりも、これらの本を貪るように読んだ。
そして『自句自解ベスト100』fは自作100句を、見開き二ページに、句と解説が載っている。とても分かりやすい。
その中から、彼にとってエポックメーキングだと思われる句の項目を引いておく。 94 である。

  <    かつてラララ科学の子たり青写真

「ラララ科学の子」は「鉄腕アトム」の主題歌の節をそのまま引用した。
「鉄腕アトム」のテレビ放映は昭和38年から同41年、主題歌の作詩は谷川俊太郎だ。
この句を詠んだころ、昭和三十年前後に生れた同世代俳人たちを論じる連載を「俳句」で始めた。
彼らであり私でもある「科学の子」の大半は、やがてそれほど科学的でもない大人になった。
そして、希望に満ちたあの時代は、青写真のように懐かしく遠ざかった。平成十八年作。  (「鷹」)    >

こんなに周りばかりでは失礼なので句集『朝晩』にも触れておく。

「目次」は

   序に代えて
   ⒈ 単身赴任
   ⒉ 夏野行く
   ⒊ 遠回りして
   ⒋ 春暁の灯
   ⒌ いつか欲し
   あとがき

となっている。
「序に代えて」には2018年に日本経済新聞・日経随想「標準世帯の黄昏」の一文を引いてある。

     *レタス買へば毎朝レタスわが四月

の句は、冒頭の ⒈ 単身赴任の項目の三番目の作品として載っている。作者にとっても愛着のある句だということである。
阪神電鉄勤務ということなら、甲子園球場と無縁ということは無かろうと思っていたら、出てきました。

     *一回表アルプス席西日まともなり
     *ナイターの膝の通勤鞄かな

の句が、これも⒈ 単身赴任の項目のはじめの方に出ている。
しかし、作者は余り野球が好きではないのか、他には載っていない。
阪神電鉄は営業路線も長くはなく、私鉄としては小さい会社である。今は阪急阪神ホールディングス傘下にある子会社になっている。
阪急は小林一三が作り上げた私鉄で、阪神間と京都にも路線を持ち、かつ阪急百貨店という優良会社やホテル、映画製作会社の「東宝」、宝塚歌劇、旅行社などを持つ独特の会社である。

句集は、坦々と、淡々と綴られて行く。

      *一パック輪ゴムぱちんと諸子買ふ
      *鹹し夜更煮かへす蜆汁
      *あめんぼのもうゐぬ水輪ゐる水輪
      *玄米の新米なればさみどりに
      *新豆腐水を出づれば掌に重く
      *冬麗やシーツかわけば風はらむ
      *一年の未来ぶあつし初暦
      *松過やバターめぐらすフライパン
      *葱刻む実家の父に会ひに行くか
      *節分や明日は全国的に晴
      *春暁や妻に点りし厨の灯
      *チャーハンは強火に攻めよ卒業す
      *厭離穢土欣求浄土と囀れる
      *旅先に妻と落ち合ふ穂麦かな
      *筍のまんまと背丈伸ばしたり
      *明易し大阪環状線始発
      *遅刻メール梅雨の満員電車より
      *巣に帰る働き蟻か上京す
      *仏壇に戒名の母桃匂ふ



アトランダムに、日常に因む句を引いてみた。亡くなった実母のことも、さりげなく描かれている。自選句は引かなかった。
不十分ながら、この辺で鑑賞を終わりたい。 後で付記することがあるかも知れない。
先師・藤田湘子との関わりについては『藤田湘子の百句』について後日書くことにする。    (完)




     
伊勢からの恋文めいて枇杷の花・・・坪内稔典
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       伊勢からの恋文めいて枇杷の花・・・・・・・・・・・・・・・・坪内稔典

「枇杷」はバラ科の常緑高木で、初冬に枝先に三角形総状の花序の花を咲かせる。花は白く香りがよい。庭木としては極めて少なくなった。
実は初夏に熟する。甘くて香りのよい果実である。
枇杷の木は葉が大きくて長楕円形で、葉の裏に毛がびっしりと生えている。葉の表面の色は暗緑色である。
『滑稽雑談』という本に「枇杷の木、高さ丈余、肥枝長葉、大いさ驢の耳のごとし。背に黄毛あり。陰密婆娑として愛すべし。四時凋れず。盛冬、白花を開き、三四月に至りて実をなす」とある。簡潔にして要を得た記事だ。
冬に咲く珍しい植物のひとつである。寒い時期であり、この花をじっくりと眺める人は多くはない。
こんな句がある。

■十人の一人が気付き枇杷の花・・・・・・・・・・・・・・・高田風人子

この句などは、先に書いたことを、よく観察して句に仕上げている。こんな句はどうか。

■だんだんと無口が好きに枇杷の花・・・・・・・・・・・・・・三並富美

■一語づつ呟いて咲く枇杷の花・・・・・・・・・・・・・・・西美知子

■咲くとなく咲いてゐたりし枇杷の花・・・・・・・・・・・・・・・大橋麻沙子

いずれも「枇杷の花」の、ひっそりと咲く様子を的確に捉えている。

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写真②にビワの実を載せる。このブログ2009/06/26にビワの実の記事を書いた。果実として品種改良され、「茂木ビワ」が有名である。
以下、枇杷の花を詠んだ句を引いて終る。

 枇杷の花霰はげしく降る中に・・・・・・・・野村喜舟

 死ぬやうに思ふ病や枇杷咲けり・・・・・・・・塩谷鵜平

 枇杷咲いて長き留守なる館かな・・・・・・・・松本たかし

 花枇杷や一日暗き庭の隅・・・・・・・・岡田耿陽

 故郷に墓のみ待てり枇杷の花・・・・・・・・福田蓼汀

 枇杷の花子を貰はんと思ひつむ・・・・・・・・原田種茅

 枇杷の花母に会ひしを妻に秘む・・・・・・・・永野鼎衣

 枇杷の花くりやの石に日がさして・・・・・・・・古沢太穂

 枇杷の花妻のみに母残りけり・・・・・・・・本宮銑太郎

 枇杷の花柩送りしあとを掃く・・・・・・・・・庄田春子

 枇杷の花暮れて忘れし文を出す・・・・・・・・塩谷はつ枝

 病む窓に日の来ずなりぬ枇杷の花・・・・・・・・大下紫水

 花枇杷に暗く灯せり歓喜天・・・・・・・・岸川素粒子

 雪嶺より来る風に耐へ枇杷の花・・・・・・・・福田甲子雄

 枇杷の花散るや微熱の去るやうに・・・・・・・・東浦六代

 訃を告げる先は老人枇杷の花・・・・・・・・古賀まり子

 贋作に歳月の艶枇杷の花・・・・・・・・中戸川朝人

 蜂のみが知る香放てり枇杷の花・・・・・・・・右城暮石


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