

深爪を剪りし疼きや花石榴・・・・・・・・・・・・・・鈴木真砂女
私の歌にも
梅雨空にくれなゐ燃ゆる花ありて風が点せる石榴と知りぬ・・・・・・・・木村草弥
という私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るものがである。
ザクロは3メートルほどの高さになる落葉樹で、細長い艶のある葉が対生している。梅雨の頃に赤橙色の六弁の花が咲く。肉の厚い筒型の赤い萼がある。

写真②が落花である。先に書いたように厚い筒型のガクであるのがお分かりいただける。
八重咲きや白、薄紅、紅絞りなど色々あるらしい。
中国から古くに渡来してきたもので、花卉として育てられてきたが、原産地はペルシアだという。
梅雨の頃に咲く印象的な美しい花である。
ザクロと言えば、花よりも「実」が知られているが、実は徳川時代から食べるようになったという。
ザクロは種が多いことから、アジアでは子孫繁栄、豊穣のシンボルとされてきた。
実を煎じた汁でうがいをすると扁桃腺炎にいいと言われる。


写真③④がザクロの実である。この中には朱色の外種皮に包まれた種がぎっしりと入っている。
種は小さく外種皮を齧るように食べるのだが、甘酸っぱい果汁を含んだものである。果皮は薬用になる。
実が熟してくると実の口が裂けて種が露出するようになる。実が熟するのは8、9月の頃である。
以下、歳時記に載る石榴の花を詠んだ句を引いて終わる。
花は夏の季語だが、実は秋の季語である。
花柘榴また黒揚羽放ち居し・・・・・・・・中村汀女
花柘榴病顔佳しと言はれをり・・・・・・・・村山古郷
ざくろ咲き織る深窓を裏におく・・・・・・・・平畑静塔
妻の筆ますらをぶりや花柘榴・・・・・・・・沢木欣一
花柘榴の花の点鐘恵山寺・・・・・・・・金子兜太
掃いてきて石榴の花が目の前に・・・・・・・・波多野爽波
花石榴階洗はれて鬼子母神・・・・・・・・松崎鉄之介
花石榴子を生さで愛づ般若面・・・・・・・・鍵和田柚子
妻の居ぬ一日永し花石榴・・・・・・・・辻田克巳
黄檗の寺の駄犬や花ざくろ・・・・・・・・阿片瓢郎
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