
土鈴ふる響きおもはせ驟雨きて
梅雨あけ近しと知らすこのごろ・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
掲出の写真①は広重の「白雨」と題するもので、白雨とは俄か雨や夕立のことである。激しく降る雨を太い線で描いてある。

写真②は「土鈴」(どれい)で、これは辰をかたどったもので太った辰でユーモラスである。
土鈴とは、この中に粘土の玉が入っていて、振るとごろごろという野太い音がする。
この写真のもののように干支に因んだみやげ物などにされている。
今ごろになると梅雨末期に入ってきて、各地で集中豪雨が起きたりするが、梅雨入りと梅雨明けの大まかな目安として、どちらも雷が鳴ることが多い。
気象庁の発表よりも、この雷雨の方を目安にしている人が多い。それは、掲出した私の歌の通りである。
俳句の季語にも「梅雨入り」「梅雨明け」というのがある。
以下、歳時記に載る「梅雨明け」の句を引いて終わる。
ばりばりと干傘たたみ梅雨の果・・・・・・・・原石鼎
葭原に梅雨あがるらし鰻筒・・・・・・・・石田波郷
梅雨去ると全き円の茸立つ・・・・・・・・西東三鬼
梅雨あけの雷とぞきけり喪の妻は・・・・・・・・石田波郷
梅雨明の天の川見えそめにけり・・・・・・・・加藤楸邨
梅雨明けし各々の顔をもたらしぬ・・・・・・・・加藤楸邨
梅雨明けぬ猫が先づ木に駈け登る・・・・・・・・相生垣瓜人
梅雨明けのもの音の湧立てるかな・・・・・・・・・本宮銑太郎
梅雨明けや胸先過ぐるものの影・・・・・・・・吉田鴻司
子の目にも梅雨終りたる青嶺立つ・・・・・・・・谷野予志
| ホーム |