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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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『四季の〈うた〉草弥のブログ抄』私信と評・・・小林サダ子
四季_NEW

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   草弥の詩作品<草の領域>
      poetic, or not poetic,
      that is the question. me free !
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       『四季の〈うた〉草弥のブログ抄』私信と評・・・・・・・・・・・・・小林サダ子(「からの」)

・・・・・『四季の〈うた〉草弥のブログ抄』それにしても大作でした。面白うございました。
あらゆる面での景色の多さに驚きました。
一番に心に残り、最大に心を動かされた一つは、「三月十一日の悲劇を忘れないために」であります。
私は何も知らなかったのです。知らされなかったと言いますか、本当に驚き以外の何ものでもありません。
佐藤祐禎さんの歌のことも、原発以前の本当のことも初めて知りました。何という恐ろしいことが政治と経済によって侵されてきたのでしょうか。・・・・・
今また北海道に核廃棄物の処理場建設問題が起こって住民の反対運動が弱められているようです。フクシマのことが、もっともっと人に知られなければならないのでしょう。
あなたのブログを読む人は一部分です。・・・・・世間の人々は結構に自分本位であって、無知無関心に日を過ごしているのですから。
あのフクシマは、人災だったということすら忘れてしまっているのです。恐ろしいことです。・・・・・
玉城入野の奥さんの三原由起子は浪江町出身ですよね。
その電力を頼りにして生きてきたのが、われわれ東京人というわけですか。
「日本のマスコミは一行も書かなかった」マスコミも大資本の味方なのです。 『青白き光』を探してみます。
・・・・・精力的にご活躍の様子うかがえます。今後とも、どうぞ、紙面にて読ませていただきたいものです。
珠玉の131篇でした。  桂信子さんは晩年、玉城徹と行き来ありましたっけ。
   2020年12月29日               小林サダ子 拝
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小林サダ子氏は玉城徹の結社「うた」に居た人である。今は「からの」に所属しておられ、角川「短歌」誌の12首欄で私とご一緒する仲である。私より一歳若い。2020年に夫君を亡くされた。
私の歌集『昭和』を読む会を東京で開いてもらった際に出席していただいた。その節はお世話になりました。



冨上芳秀の詩「大人の森」など4篇
詩的現代_NEW
 
──冨上芳秀の詩──(13)

       冨上芳秀の詩「大人の森」など4篇
           ・・・・・「詩的現代」No.35/Decenber.2020所載・・・・・・・

       大人の森      冨上芳秀

「もう少し大人になってください」大人になるというのは股間に毛を生やすこ
とだと思って、もやもやとたくましく育てました。「ああ、すっかり何でも妥協
することができるように成長しましたね」森の闇のなかで生息している小鬼は
とてもクレバーです。でも、小鬼って何かの喩えでしょうと毛根に住む眠り姫
が尋ねました。股間にできた森も、その森に澄むいたずらな小鬼も何かの譬え
ですって。それは、森の中で大きくなったり小さくなったりしているペニスの
譬えだとあなたは言いたいのですね。残念ながら、小鬼は奥深い緑の森に棲ん
でいる小鬼以外の何者でもないのです。ペニスはあなたのペットでしかありま
せん。肉色のペニス、赤黒くたくましく怒張しているペニス、いいですねと軽
薄な笑いを浮かべながら。森の中にひっそりと建っている小屋から出て来て、
せっかくたくましく成長してきた大人のペニスを平凡な人生のごみ箱にポンと
捨ててしまいました。「もう少し大人になってください」と世界は大きく閉じて
きたのでした。

         眠る男

「毎晩、お酒はどれくらい飲みますか」「さあ、わかりません。いつも飲みた
くなくなるまで飲んでいます」医者は苦笑しました。緑色の猫の眼をした若い
美しい看護師はいつものようにやさしく微笑んでいます。すずしい風が町の
人々の疲れた脳髄を鎮めるように吹き抜けていきます。山の向うの更に重なっ
た果無しの山脈の山巓で大きな男が眠っています。太陽が昇っても沈んでも男
は眠っています。もちろん夜も男は眠っています。星明りの下で男は安らかな
寝息を立てています。男の鼻から漏れる息が風になって人々の胸を吹き抜けて
います。男は眠ってばかりですが、いつ目を覚ますのでしょうか。「睡眠時無
呼吸症のおそれがありますね。身長は何センチですか」「百七十三センチです」
「すると、七十八キログラムが適正体重です」森の湖のほとりで真っ黒い猫が、
九十四グラムもある大きな金色の鯉を緑色の眼を燃やして狙っています。ガシ
ガシガシ、猫が骨を噛む音が森の中に響いています。眠っている男の呼吸が止
まりました。静かな夜です。うがーと大きな音を立てて男はまた呼吸し始めま
した。もうすっかり朝になって人々は忙しく働きだしました。明るい太陽の下
で、男は静か寝息を立てて眠っています。

       神様の徘徊

真夜中に何度も玄関のブザーが鳴る。今夜も神様が外を徘徊しているのだ。あ
まりうるさいので、ドアを開けて外に出るとステテコに、チヂミのシャツを着
た白い姿の神様が、「私は手足がガンで歩けないのです」と細い手足をふらふ
らさせて哀れな表情で訴えかけてくる。「眠れなくて、とてもさみしいのです
」「さびしいからといって丑三つ時に、他人(ひと)の家のブザーを何度も鳴ら
すのは迷惑ですよ」「眠れないのです」「とにかくこんな時間にブザーを鳴ら
すのはやめなさい。おやすみ」と言って、私は拒絶の意思を示すためにドアを
乱暴にバタンと閉めた。神様と私の時間の川は、全く別の位相を流れているの
に、突然、踏み越えようとしてきた。「バカなやつだ」いくら結界を超えよう
としても無理だ。「助けて」と叫んでいる白い姿は遠い川の暗い流れに消えた。
私はそんな神様が何人、自らの川に溺れて死のうと何の関心もない。目の前の
パソコンの画面の中には、この世の暗い現実が映っている。その画面を食い入
るように見ている私の背後には過去の幽霊たちが私の生を冷めたく笑っている。

       マスクの世界

唇に微笑みを浮かべているのに、マスクをしているから私のあなたへの好意が
伝わらないのでしょうか。あなたのマスクの下には人の好い微笑みが私に向け
られていると信じています。でも、あなたのマスクの下には意地悪にへの字に
曲げられた唇が見えます。だから、私も唇をへの字に曲げてあなたに向き合っ
ています。白いマスクをした人たちができるだけ会話をしないように、距離を
保って行き交っています。でも、本当にマスクの下には唇があるのでしょうか。
「ねえ、あたしってきれい」マスクを取った女の口は大きく裂けているのでし
た。ずいぶん昔、小学生を恐怖に陥れた口裂け女の都市伝説です。私が見たの
は、それとはまったく違っていました。口ではなく深い大きな穴でした。そん
な穴を見た者は、その穴に吸い込まれて穴の世界に生きなければなりません。
マスクの下には何がある。そんなことは言えません。口が裂けても言えません。
マスクの下の暗い穴を見つけた時、私もマスクを取って私の暗い穴をあなたの
暗い穴に重ねたのでした。そのぬめぬめとした快楽の事は誰にも言えない秘密
です。
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この精力的な冨上芳秀氏の詩作には、瞠目するばかりてある。
プロットが、とにかく面白い。
4連目の「マスクの世界」など、現下のコロナ騒ぎの中での「マスク」についてアイロニー深く追求していて秀逸である。
とにかく冨上芳秀氏の詩作からは目が離せない。
ご恵贈有難うございました。ここに披露して皆さんのお目にかける次第である。益々のご健筆を。
既に、ご承知だろうと思うが、冨上芳秀氏は「大阪文学学校」の詩部門の講師を担当されている。
この学校は小野十三郎らによって設立され、ここの学生からは芥川賞や直木賞作家を何人も輩出している。








詩「鎌八幡」・・・冨上芳秀
詩遊_NEW

──冨上芳秀の詩──(12)

      鎌八幡・・・・・・・・・・冨上芳秀
       ・・・・・・「詩遊」No.68所載・・・・・・

円珠庵は三韓坂にある。この坂は異国からの来賓を迎えた鴻臚
館があった古道である。その前を通った時、私は江戸時代の初めに
国学の祖と言われた契沖が庵を結んだ地だと知った。
ある時、円珠庵で古典文学の講座が開かれているということを知
って、問い合わせの電話をかけた。「御祈祷ですか」という返事に、
何か、不思議な感じを受けた。私は祈祷とか、占いというものを、
異常なまでに嫌悪する傾向がある。結局、私はその講座にはいかな
かった。
それから、何年も経ったある時、私は円珠庵を訪ねようと思った。
というのは、その時、私は文学散歩にはまっていたからである。調
べてみると文学の舞台になった土地、お墓、歌碑や詩碑などいたる
ところにあった。地理的空間を移動すれば、時間の重層を旅するこ
とができる。実際に歩くことによって、その土地の気を感じる。ま
た、運動にもなる。
小さな階段を登ると木々の生い茂った薄暗い庭である。寺の玄関
は奥にあった。ここで契沖は『万葉代匠記』を著したのである。左
手には、榎の大木があった。私は、あっと息をのんだ。その太い幹
には江戸時代に使われていたような鉄製の鎌がびっしりと打ち込ま
れていたのである。それが、噂に聞く鎌八幡であった。大坂冬の陣
で、真田幸村が、境内にあった榎に鎌を打ちつけて勝利を祈願した
という伝承があった。だが、願いの意味はいつしか悪縁を断ち切る
切実な信仰変わっていった。私の目の前の夥しい鎌は苦悶し、叫ん
でいる。新しいものが多いが、中には木製部分が朽ち落ち、赤さび
た刃の部分のみが残っているのもある。「あの男と別れさせてくだ
さい」という意味の切実な願いが書き込まれた絵馬が掛けられてい
た。お寺で御祈祷してもらい、鎌を打ち込むのである。
久しぶりに訪れた鎌八幡の境内は、撮影禁止となり、絵馬はすべ
て裏返されて、願い事が見えないようになっていた。しかし、相変
わらず、悪縁断絶の必死な祈りの声が渦巻いている静かな鎌八幡で
あった。世の中には、縁結びを願う明るく幸せな願いもあるが、そ
の逆に、悪縁に苦しむ人生もある。付きまとわれ、痛めつけられ、
苦しみ悶えながら、なお未練が残る人々の愛憎の情念の苦悩を鎌八
幡の榎は傷つきながら引き受けて立っているのであった。
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畏敬する冨上芳秀氏の近作である。
こういう「行分け」しない散文詩の手法が最近の冨上芳秀氏のものである。
玩味して鑑賞してもらいたい。





オモシロク狂ツテ舞ヘバ/身ハ幽谷ニ浮ク鶴ノ/声ハ大気ヲツン裂イテ/スガタハ空ノ青ニ染ム・・・大岡信
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       閑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大岡信

     ハツ春ノ
     空ニタチマチ湧キイデテ
     羽音モタテズ狂ヒタツ
     雪サナガラノ思ヒカナ

     オモシロク狂ツテ舞ヘバ
     身ハ幽谷ニ浮ク鶴ノ
     声ハ大気ヲツン裂イテ
     スガタハ空ノ青ニ染ム

     閑閑タリ
     ヒトリ遊ビノ
     小宇宙

     巌ニ星モ エイ
     咲カシテミシヨウ
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この詩は学習研究社1985年12月刊の「うたの歳時記」─冬のうた、に載るものである。
5、7という日本の伝統的な音数律に則った詩作りになっている。
日本の現代詩作家も、こういう日本古来の韻律に時には立ち返ることもあるのである。

掲出した写真は北海道の鶴居村で舞う鶴の姿である。
鶴は春の繁殖期を前にして、もう番いの間で愛を確かめる愛技ともいえる「舞い」をはじめるのである。
涙ぐましい自然の摂理とも言えようか。
「鶴」はメデタイものの縁起物として引かれるので、新年を迎えた今の時期のものとして出しておく。









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