
野のほとり・・・・・・・・・・野本 昭
△ 闘鶏
闘鶏は
夕日を
厚く着込んで
鎮まっている
△ 昼寝
うたたねの
終始
怒号の鳥と
諍っている
△ 羽抜鶏
羽抜鶏は
見かけほどには堪えていない
陽を直に浴びられるだけ
血潮に赫いて
場末の道を力強く歩み行く
△ ハンカチーフ
白いハンカチーフに
赤い唇を押しつけて
女は去っていった
男はそのハンカチーフを
壁に貼って三年になるけれど
一度も
女の消息を聴いていない
△ 蛙
緑葉に縋りついて
あの蛙は
緑の色素を吸い取ったよう
その分だけ
周りの葉が白つぽい
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これは月刊詩誌「詩と思想」2018年12月号に載るものである。
野本昭
1938年2月8日生まれ。北海道教育大学卒。稚内高校定時制教諭を経て、現在フリーライター。千葉県柏市在住。
詩集『幼らは夕日を浴びて眠る』 (2007年 鳥影社刊) というのがあるらしい。
これ以外の情報はない。
近代詩の有名なものとして、フランスのジュール・ルナールの「短詩」がある。
また、三好達治の詩に
蟻が蝶を引いてゆく
ああ
ヨットのようだ
というものである。
私は野本氏の短詩を読んで、一瞬、ルナールや三好達治を連想した。
ここに引いたのは、雑誌に載るものを忠実に再現したもので、△なども元のままである。
闘鶏の画像は私が勝手に載せたものである。
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