
大阪を好きも嫌ひも宵戎・・・・・・・・・・・・・・吉田すばる
「十日戎」は大阪の今宮戎神社の祭礼である。
一年はじめの1月10日は「初戎」として何十万の人が、一説では百万人が、さほど広くはない境内に押すな押すなの様相を見せる。
↑ 今宮戎のホームページを見てもらいたい。
前日の9日夜は「宵えびす」、11日は「残り福」と称して、わざと、この日に参詣する人もある。
社殿の裏に廻って、羽目板をどんどん叩いて「えべっさん、頼んまっせ」と大声で言うのが上方風である。
掲出した写真が当日の神社の境内の様子である。
参拝のあと、「福笹」という笹の枝に小判やらをぶらさげたものを買い求めて、肩にかついで帰る。
笹は笹だけで売られ、それにつける小判などは、別途金を払って追加するのである。
東京の「熊手」に福面をつけたりするのと同様のことである。
『年浪草』という本に「諺にいふ、この神は聾にましますとて、参詣の諸人、社の後の板羽目を敲く。その音、昼夜にかまびすし。これ、今日参詣して諸願を訴ふる謂ひなり。」とある。
近年は「福娘」と称して公募して福笹の売り子を募っているが、応募者が多いので、なるべく美人を選ぶという。今年は45人採用したという。
1月10日前後には南地の花柳界の芸妓の綺麗どころを「宝恵かご」と称する駕籠に乗せて近在を練り歩く行事がある。これも神社の宣伝のためとは言え、人気がある。
この「宝恵かご」については今年は1月10日に練り歩かれるが、画像としては「たまぞう」氏のサイトなどが詳しい。
ネット上では、他にも動画などがたくさん見られる。お試しあれ。
以下、十日戎を詠んだ句を引いて終る。
福笹をかつぎ淋しき顔なりし・・・・・・・・高浜年尾
地下道を華やぎ通る福笹持ち・・・・・・・・橋詰沙尋
初戎ねがひのうなじうつくしく・・・・・・・・牧野多太士
十日戎所詮われらは食ひ倒れ・・・・・・・・中本圭岳
小火騒ぎありて今宮宵戎・・・・・・・・後藤鬼橋
福笹にきりきり舞の小判かな・・・・・・・・倉西抱夢
きらきらと賽銭舞へり初戎・・・・・・・・金田初子
福笹の大判小判重からず・・・・・・・・嶋杏林子
凶くれて残り福とは面白し・・・・・・・・細見しゆこう
雑踏を夫にかばはれ初戎・・・・・・・・上野美代子
残り福疲れし声をあげて売る・・・・・・・・大戸貞子
吉兆や佳人に足を踏まるるも・・・・・・・・大野素郎
商ひも恋もたのみて宵戎・・・・・・・島谷征良
初戎笹の葉一枚づつの福・・・・・・・・三島敏恵
残り福得んと人出に押されけり・・・・・・・・吉川一竿
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