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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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さうですねさうですねえと聞き上手の妻ありてこそ語りたるかな・・・・・・・・・・黒崎善四郎
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    さうですねさうですねえと聞き上手の
      妻ありてこそ語りたるかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黒崎善四郎


この人は昭和9年生まれの歌人である。
この人には『介護5妻の青春』という歌集がある。
掲出画像は、通常の老人の脳(左)とアルツハイマー型認知症患者の脳(右)。解剖学的な特徴の違いが示してある。
アルツハイマー型認知症患者は大脳皮質、海馬の萎縮、および脳室の拡大が見られるようになる。

この歌を含む一連を引いておこう。

     東京にもこんな綺麗な秋晴れがあるかと見ればあなたの忌日

     秋晴れに小躍るほどの洗濯好きああ妻はどこにも居らず

     うつしみの妻の写真を眺むればざんげの心通り過ぐかも

     天高く鰯雲こそほそ身なれほそ身のあなたがまぎれてゐるや

この一連は「平成19年度版角川短歌年鑑」に載る作者の「自選歌5首」に載るものである。

以下は、この歌集の紹介記事である。
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歌集 『介護5 妻の青春 』

著者:黒崎善四郎 四六判 208頁
角川書店刊。定価(税込):2,500円 ISBN 4-04-621801-0

介護5の妻を看取る胸中に去来する想い。短歌と長歌に託した感動の作品群。
寝たきりの妻を看取り、見送った日々。来し方の思い出と目の前の介護の現実とが交錯する中から湧き上がる感情が、妻への深い愛情と溶け合い、数々の歌となってほとばしる。読む者の共感を誘う、感動の第五歌集。
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以下は、大山敏夫氏が書く書評である。

■歌集『介護5 妻の青春』黒崎善四郎

 帯に田島邦彦氏が書いている。「年を経て体験する妻との熱い日々、この感動的な歌の数々こそ、正に短歌版『智恵子抄』と言えよう」と。また「あとがき」は言う。

 最愛の妻美保の生命を喪失した。すでに永遠に沈黙する妻の枕辺に「あなたがこの世に存在した生命の有り様をしっかりと短歌や長歌に詠みますよ」と約束した。

 黒崎氏は以前から短歌のみならず長歌を作り歌集等にも発表していたが、この集も約半数は長歌である。集名となった長歌がある。

    わが妻よ 介護5といふ 最重度の アルツハイマーの 認定を 受けたる妻の……

と続く、読んでいて切なくなるようなものだが、この歌集は亡くなった妻を思い、その介護の日々と彼岸へと送り、その後の日々の思いを約半年間で一気に歌いあげた一巻だというところに特徴がある。若かった頃のほのぼのとした思い出も織り交ぜながら、辛く切ない介護の日常を誠心誠意を込めて共に生き抜いた歌に、男の私も涙を禁じ得なかった。それは単に歌の善し悪しとは根本的に違う何かがここにあるということだ。
 巻頭の「四十年昔の妻は」という一連に、

   四十年つねに吾妻はわが帰り嬉しさうに迎へてくれたり

   四十年おもへば妻は楽し気にいつもお祭りみたいでしたね

がある。私が氏の板橋のアパートで歌を語りあったのがこの頃か。そう言えば一緒に行ったのが帯文の田島氏だった。美保夫人は確かに明るくはっきりものを言うお人だった。妻の青春と言うが、それは黒崎氏ご自身の青春でもあり、そして同時代を生きている私の青春でもあるのだ。あの人がアルツハイマーで亡くなった。そして黒崎氏はこんなふうにお二人で生き、こんなふうに介護をして、こんふうに今もなお美保さんを愛し続けて「青春」しているんだなと、切なくて、涙がこぼれた。
 長歌のもつ味をよく出しているが、三首だけ短歌の方を引く。黒崎氏の今後の新境地の開拓を祈るしかない。合掌。

   投票所のケアに痴呆の妻がこゑ意中の人は黒崎善四郎

   ベッドの妻なれど女王のやうなれば医師もヘルパーもわれも従ふ

   介護5の妻がベッドに招くかもああ厳粛なる時流るるは

(角川書店刊)

(以上担当/大山 敏夫)
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上の文章にも書かれているが、事実に即して歌にしようとすると定型の制約のある「短歌」では限界がある。
私も第四歌集『嬬恋』(角川書店)で経験があるが、私は、それを「散文」を挿入することで試してみたが、この人は「長歌」でやろうとされたのである。
この歌集は、この人なりの「嬬恋」であったと言えるだろう。ひと頃、介護の歌としてあちこちで紹介されたことがある。
ただし、この人は2010/09/10に大腸ガンのために亡くなられた。 合掌。

私は2003年に生前の妻との想いを『嬬恋』に発表した。その後の介護の日々のことはまだ歌集の形では出してはいない。
妻の末期(まつご)の日々には、私は定型の短歌ではなく、制約のない「詩」の形で書き綴って詩集『免疫系』(角川書店2008年刊)として上梓した。

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