
──新・読書ノート──
井上章一『ハゲとビキニとサンバの国―ブラジル邪推紀行』・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
・・・・・・・・・新潮新書 2010/10/15 刊・・・・・・・・・・・・・
エキゾチシズムが爆発する地球の裏側で、日本及び日本人を考えなおす。
燦燦と降り注ぐ太陽、ビーチに寝転ぶ「イパネマの娘」、カーニバルでサンバを踊り、路上でサッカー。
そんなエキゾチックなイメージが無限増殖する国、ブラジル。
しかし、はるばる地球の裏側に足を運んでみると……。
なぜか愛されるハゲ、小さなビキニの秘密、日本人のトホホな扱い、
カトリックの下心など、当地の文化や風俗は意外なことばかり。
生まれも育ちも京都の学者が、W杯や五輪開催で注目のブラジルから日本を考える。
新潮社のHPに載る「編集者のことば」を引いておく。
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著者の井上章一さんは、『つくられた桂離宮神話』『法隆寺への精神史』『伊勢神宮』などといった建築学史のほか、霊柩車の起源、美人論、日本の女性の下着受容史など、日本のユニークな風俗も研究、その著書のファンも多い学者(建築学者、風俗史家)です。
その井上さんが、ブラジルのリオデジャネイロに滞在。当地の文化や生活、風俗などをレポートしたのが本書です。とはいっても、そこは井上章一。「ブラジルという国はそもそも~」などという、ありがちな前置きは無しにして、いきなり「ハゲ」の話をします。曰く、「ブラジルでは、ハゲでも女の人にきらわれないと、しばしば言われることがある。いや、ハゲのほうがもてるんだという説さえ、時には聞こえてくる」。酒場で歌っていた女性歌手が、ハゲの観客のおでこばかりにキスするのを見てショックを受けます。
また、リオデジャネイロといえば、すぐに思い浮かべるのがコパカバーナに代表されるビーチ。抜けるような青空に燦燦と降り注ぐ太陽、砂浜に寝転ぶ「イパネマの娘」――。男なら誰でも鼻の下が伸びてしまいそうなシチュエーションですが、実際にそこで見た「ビキニの女性」は……。
さらに、ある日のこと、京都や富山といった日本の都市名を冠した企業のポスターを見つけ、興味本位にどんな会社か調べてみると……。
その他にも、日本のアニメやマンガが好きなブラジル版草食系男子、胸よりお尻をアピールする女性たち、支持を広げる日本の新興宗教など、政治や経済、文化といった“大文字”のテーマではなく、街ネタや風俗ネタといった身近なトピックをレポートしています。
2010年10月初旬の現在、当地では大統領選の真っ最中。すわ、初の女性大統領誕生かと騒がれています。また、2014年にはワールドカップ、2016年にはオリンピックが開催され、注目を集めること必至のブラジル。エキゾチシズムが無限増殖する地球の裏側から、日本を考えるのが本書『ハゲとビキニとサンバの国―ブラジル邪推紀行―』です。
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井上章一/イノウエ・ショウイチ
1955(昭和30)年京都府生まれ。京都大学大学院修士課程修了。建築学者、風俗史家。現在、国際日本文化研究センター勤務。著書に『霊柩車の誕生』『つくられた桂離宮神話』『美人論』『法隆寺への精神史』『日本に古代はあったのか』『伊勢神宮』など。
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