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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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藤崎憲治『昆虫未来学』─「四億年の知恵」に学ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート──

   藤崎憲治『昆虫未来学』─「四億年の知恵」に学ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
            ・・・・・・・・・・新潮社2010/12/22 刊・・・・・・・・・・・・・・・・・

     人は、虫なしでは生きられない! みごとな進化に秘められた驚異の昆虫力。

   生態系で重要な役割を担い、産業にも欠かせない大切な存在でありながら、害虫という一面も持つ昆虫。
   その生態を科学的に分析した新しい害虫管理法や、チョウの翅の超撥水性、アメンボの水面滑走メカニズム、
   アリの情報伝達システムなど、昆虫の優れたデザインや機能を農業・工学・医学など
   さまざまな分野に応用する、革新的な研究成果。


新潮社の読書誌「波」一月号に載る書評を引いておく。
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   かけがえのない人類のパートナー       最相葉月

 国際生物多様性年だった二〇一〇年、名古屋で生物多様性条約締約国会議COP10が開かれた。
メディアは絶滅危惧種や里山に関するさまざまな特集を組んだが、どれだけの人が生物多様性の本来の意味を正しく理解できただろうか。
本書はこの時期に出されるべくして出された格好の生物多様性案内であり、ここには人類がこの危機を乗り越えるための知恵がたくさん詰まっている。
 主役は、昆虫である。四億年前に誕生した昆虫は、三十数億年の生命史においてもっとも繁栄を遂げた生物で、
南極や砂漠などの過酷な環境から熱帯雨林まであらゆる場所に生息し、いまや全生物の約三分の二を占める。
地球はまさに「虫の惑星」なのである。
昆虫生態学者の著者は、昆虫がいかに環境に適応して進化を遂げ、人類にとってかけがえのないパートナーとなったか、最新の研究を交えつつ解き明かしていく。
 その一つは、食物連鎖を支える鍵としての昆虫の役割だ。たとえばシロアリは有機物を植物が利用しやすい無機塩類に変える分解者としての働きを担う。
家の柱を食い荒らす害虫として嫌われるシロアリだが、もし彼らが地球上からいなくなれば生態系は二、三十年で十億年前の姿に戻ってしまうのだという。
ちなみにシロアリは卵と間違えて似た形状の菌を巣に運ぶ習性があるが、これは菌のもつ抗菌作用によって巣が雑菌に侵されるのを防ぐので、
この性質を利用して最小限の殺虫剤でシロアリを駆除する方法も開発された。
 気候変動や二酸化炭素濃度を測るセンサーとしての昆虫の能力にも注目したい。
著者がリーダーを務める21世紀COE「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」で行われたミナミアオカメムシの分布拡大調査によれば、
熱帯から温帯にかけて生息する彼らの北限がこの四十五年で上昇しているという。
ただし温暖化が熱帯の昆虫に有利というわけではなく、子孫を残せない在来種と交配すれば相互作用で絶滅の途をたどる。
減反やスギ・ヒノキ植林という二大政策がもたらした罪も重い。昆虫相の破壊は植物相とそれに依存した動物相を、さらに海洋の生物相を次々となぎ倒していく。
シカやクマの出没は、生態系の悲鳴なのである。
 本書後半には、農耕文化の始まりと共に誕生した「害虫」のとらえ方が昆虫研究の成果を反映して変化しつつある現状が報告されている。
個々の体質に合った副作用の少ないオーダーメイド医療を目指す医学の道のりと似て、農薬万能から、環境と昆虫の性質に即して害虫を管理する「総合防除」の時代の到来である。
 昆虫は、最小エネルギーで最大の仕事をこなすインテリジェンスの持ち主。
近年、彼らを師として人類の未来に活かそうとするバイオミミクリーやバイオミメティクスの技術に産業界が注目するのも当然だろう。
昆虫なくして未来はない。読了後はその偉大さに、ただ頭を垂れた。    (さいしょう・はづき ノンフィクション作家)
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藤崎憲治/フジサキ・ケンジ

1947年福岡県生まれ。京都大学大学院博士課程単位取得退学、沖縄県農業試験場主任研究員、岡山大学農学部教授を経て、現在は京都大学大学院農学研究科教授。
専門は昆虫生態学・応用昆虫学。農学博士。日本応用動物昆虫学会会長、日本学術会議応用昆虫学分科会委員長として、昆虫学や応用昆虫学の発展と普及に努めている。
主な著書に、『カメムシはなぜ群れる?―離合集散の生態学―』(京都大学学術出版会)、『飛ぶ昆虫、飛ばない昆虫の謎』(編著、東海大学出版会)、
『群れろ!―昆虫に学ぶ集団の知恵―』(共著、エヌ・ティー・エス)、『昆虫科学が拓く未来』(編著、京都大学学術出版会)など。

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