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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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綾蝶くるくるすつと口しまひながき琉球処分は終はらず・・・・・・・・・・・・・米川千嘉子
p1200193ヨナグニサン

   綾蝶(あやはべる)くるくるすつと口しまひ
      ながき琉球処分は終はらず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・米川千嘉子


歌の説明の前に、この蝶のことに触れておく。
掲出画像は沖縄に棲む大型の蛾ヨナグニサンである。
先ずお知らせしておく。この画像はhitaki氏の撮影されたものであり、著作権も同氏に帰属する。感謝して明記しておく。
ヨナグニサンは学名 Attacus atlas ryukyuensis
和名 ヨナグニサン(与那国蚕)
鱗翅目ヤママユガ科に分類されるガの一種。前翅長は130mm-140mmほどで、世界最大のガとして知られている。
本亜種は、日本の沖縄県八重山諸島(石垣島、西表島及び与那国島)にのみ分布する。
与那国島で初めて発見されたことから「ヨナグニサン」という和名が付けられた。

雄は体長48-51mm、前翅長100-130mm、雌は体長50-53mm、前翅長130-140mmと大型である。
体色は赤褐色を呈し、翅の前縁が黒褐色、内横線は白色である。前翅の先端が鎌状に曲がるのが特徴。
口(口吻)を持たず、羽化後は一切食事を取れないが、幼虫の頃に蓄えた養分で生きるため、成虫寿命は長くても1週間ほどと短い。
成虫の前羽根先端部には、蛇の頭のような模様が発達し、これを相手に見せて威嚇すると言われているが、定かではない。灯火によく飛来する。
森林域に生息し、幼虫はアカギやモクタチバナ、フカノキなどを食草とする。年に3回(4月、7月下旬 - 8月上旬、10月中旬頃)発生する。
天敵はカタビロコバチの一種やコマユバチの一種で、幼虫が寄生される。

与那国方言では、「アヤミハビル」と呼ばれる。「アヤミ」とは「模様のある」、「ハビル」とは「蝶」の意味である。

ただし、下記のような沖縄の文章も見られるので参考に引いておく。
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しまの昔祖先(ムカシウヤフジ)は美しい色とりどりの蝶をあやはびらとよんで、その美しさをほめたたえております。
ことしはことのほか蝶が多く、わが家の庭にも野良のあぜ道にも百之台の原っぱにも美しい蝶があやしく舞っています。中でも蝶の王さまオオゴマダラは十センチほどの大型で地色の白に黒い紋があり、新聞きれが空に舞っている姿ににているのでシンプンシチョウともよばれており、とても、上品でゆったりとび舞う姿に見とれるほどです。喜界町では保護蝶として採取を禁じております。 喜界島でさらに数多くみられるのがアサギマダラでしょうか。アサギマダラは日本全土に分布し、夏は沖縄から本土へ北上し、秋は本土(ヤマト)から南下する渡り蝶として愛好家に親しまれております。 わたしたちの大島・沖縄ではこのように渡りをする蝶が五十六種もいるといわれており村(シマ)の先祖(ウヤフジ)たちも、この渡りをする迷蝶に気づき、次のような唄をよんで美しいあやはびらをほめたたえております。

わ しま むかで とぴゆる あやはぴら
  待(ま)ちゅり あやはぴら いやりたんも

「わたしのしまにむかってとんでいる美しい蝶さんよ、ちょっと待ってください。わたしが伝言をたのみますから。」と語りかけるように歌っております。
 色あざやかなツマベニは食草ギョボクのまわりをいそがしく飛びまわり、白い帯がきれいなシロオビアゲハはミカン木のまわりを飛びかい、たまに見かけるアカポシゴマダラもうしろ羽の赤色の斑点を美しくなびかせながら舞っております。
 近頃見られるのが珍蝶リュウキュウアサギマダラとリュウキュウムラサキでしょうか。両方ともシロオビアゲハほどの大きさで、リュウキュウアサギマダラは黒色に水色の紋がとても美しくシチヘンゲの花によくとまっており、あやしく美しいとはまさしくこの蝶のことでしょうか。
 リュウキュウムラサキは、羽は黒色で中央先端にルリ色がまじった白い紋が並びまことに神秘的な姿を呈しております。
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ここでは、いろいろの蝶のことを「あやはびる」と総称しているようである。

ここまでは前段である。
この歌の作者は、この蝶に「あやはべる」というルビを付っているが正確ではないようで、上に書いたような呼び方を簡略化しても
「あやはびる」というのが現地の発音には近いらしい。
作者の場合も、特定の蝶ではなく、「総称」として蝶を詠んでいるのである。
まして「くるくるすつと口しまひ」と描写しているから、私が掲げた画像の「ヨナグニサン」ではないので、念のため。(ヨナグニサンは口(口吻)を持たない)

さて、ここでは「蝶」のことを喋るのが本題ではないのである。
一昨年来、民主党の沖縄に対する態度などに、米軍駐留のあり方や基地が沖縄に偏在することの是非など、議論が沸騰しているが、
明治以前のことに触れれば、薩摩藩による「琉球支配」俗に「琉球処分」と言われる過酷な政策、差別があった。
この歌は、そのことに言及して、現在の沖縄に基地が集中して県民を困らせているのを、かつての薩摩藩による過酷な「琉球処分」と同じようなものと捉えて、
現在の状況を想起させようとしている。極めて時事的な秀歌と言えるだろう。
この歌に関連するものとして

     遺棄されし将兵の森は蝶の森羽化せしは傷の香に狂へりといふ・・・・・・・・・・・馬場あき子

をあげるが、これは先の太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して過酷な戦闘がなされた時の様子を詠ったもの。
かの地の蝶が兵士たちの流す「血」の臭いに狂った、という壮絶な歌である。
折角、沖縄をめぐる凄い、いい歌が出てきたので、二、三関連する歌を引いておきたい。

     うすうすと気づきてゐたり核持ちこみそのうすうすが思へば怖い・・・・・・・・・・沢口芙美

     沖縄を痛めつけたる軍人の名を冠されてキャンプ・シュワブ在り・・・・・・・・・・栗木京子

     夥しき軍手干したる金網(フェンス)ありその目の一つ一つに刺さる・・・・・・・・・・福井和子

     はしきやし大和国原基地の上にいつまで奴顔(ぬがん)晒して浮かぶ・・・・・・・・・・田村広志

     帝国の東の海にさまよへる瓢箪島をわが故郷とす・・・・・・・・・・内藤明

歌人たちの「詠嘆」「皮肉」「諧謔」も、現実の厳しさの前では無力かも知れない。
しかし、それらを詠わないよりは「まし」だとしたい。

images米川千嘉子
終りになったが、掲出した歌の作者・ 米川千嘉子 よねかわ-ちかこ 1959−昭和後期-平成時代の歌人。 昭和34年10月29日生まれ。
高校教師をつとめるかたわら,馬場あき子主宰の「かりん」に所属する。昭和60年「夏樫の素描」で角川短歌賞。
平成元年「夏空の櫂」で現代歌人協会賞。16年「滝と流星」で若山牧水賞。20年「衝立の絵の乙女」で山本健吉文学賞。
ゆたかな調べをもつ、ととのった歌が特色。千葉県出身。早大卒。本名は坂井千嘉子。著作に「四季のことば100話」など。
坂井修一(東京大学大学院情報理工学系研究科教授。歌人)の夫人である。将来この二人は「かりん」を背負って立つ人だと言われている。
2011年度からの第57回「角川短歌賞」の新・選考委員に決まっている。


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