K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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全長のさだまりて蛇すすむなり・・・・・・・・・・・・・・・・・山口誓子
sw-1upシマヘビ

  全長のさだまりて蛇すすむなり・・・・・・・・・・・・・・・・山口誓子

この句は山口誓子の昭和24年、50代に入る頃の作品である。
蛇は身をくねらせて前に進むが、その動く姿の中から「全長のさだまりて」という見どころを把握したところに、この句の非凡さがある。
それは、ここにおのずと表白された誓子壮年期の人生上の覚悟が感じられるからである。
この句を読む人は、あるいは一瞬、とまどうかも知れない。
しかし、じっと見つめるならば、蛇の一刻たりとも停止することのない全身運動が、全体としては見事に、かつ、いやおうなしに
「全長のさだまりて」進む運動なのだという発見に、深い意味を見出して、心を打たれるのではなかろうか。
昭和30年刊『和服』所載。

日本に棲む蛇にも無毒、有毒いろいろの種類がいるが、掲出の写真は「シマヘビ」という普通に棲息する無毒の蛇の図鑑に載るものである。
アオダイショウという蛇も一般的だが、蛇の写真というのは難しいもので、ほぼ保護色になっているから、
自然の中で撮った写真は、周りの植物などに紛れて写真的には、うまくない。やむなく図鑑から拝借した。
日本にいる蛇のうち、有毒のものはマムシ、ヤマカガシ、沖縄のハブなどである。
私の住む田舎などでは、マムシは普通に見られる蛇で、丁度いま頃がマムシの繁殖期で、草叢などに不用意に手などを入れると、噛まれたりする。マムシに関しては医院や保健所などに血清が常備されており、手当てが早ければ死ぬことはない。
マムシを捕まえるときは、首ねっこを押さえ、毒を持つ牙を折り取り、皮を剥いで、軒下などに吊るしてあった。これを焼酎に漬けると、いいマムシ酒になる。
みんな蛇を怖がるが、蛇は「巳(み)ーさん」と呼ばれて丁重に保護されて来た。
私の旧宅には大きな岩塊が庭にあり、その岩と土との間の隙間に大きなシマヘビが「主(ぬし)」として棲息していた。
毎年、巣をかけるツバメが大きくなると蛇が出てきて呑み込んでしまう事故などもあったが、蛇は「利殖」の神様として崇敬されていたので、駆除されることなく大切にされて来た。
蛇は大きくなるために「脱皮」するが、その抜け殻は財布などに入れて利殖のお守りにされた。
私の子供の頃は家ネズミなどもたくさん居たので、夜寝ていると、そういうネズミを求めて蛇が天井裏を、ずーずーと這う音がしたものである。
無毒の蛇は人間には、むしろ有益な動物であったと言えるだろう。
私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)に

    春を挿す・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥

 蛇(くちなは)はおのが脱皮を見せざりき蒼ざめし肌をまたその艶を

 巳(みー)さまは利殖の神のお使者ぞい粗末にすまじ石ぶつけまい


のような歌を作って載せた。この一連には、もっと多くの蛇の歌があったが、歌の数が多くなりすぎるので、この二首のみを収録した。
ただし『茶の四季』自選のなかには入っていないので、Web上では、ご覧いただけない。
ここに収録漏れの一連の歌を第二歌集『嘉木』(角川書店)に載せたので下記する。

 黐(もち)が枝に結はれし尻尾そのままに蛇の殻あり 奔り去る翳(かげ)・・・・・木村草弥

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歳時記に載る蛇の句を少し引いて終りにする。

 蛇逃げて我を見し眼の草に残る・・・・・・・・・・・・高浜虚子

 蛇の眼にさざなみだちて風の縞・・・・・・・・・・・・松林朝蒼

 水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首・・・・・・・・・・・・阿波野青畝

 蛇去って戸口をおそふ野の夕日・・・・・・・・・・・・吉田鴻司

 蛇の衣傍にあり憩ひけり・・・・・・・・・・・・高浜虚子

 袈裟がけに花魁草に蛇の衣・・・・・・・・・・・・富安風生

 老斑の手にいま脱ぎし蛇の衣・・・・・・・・・・・・山口草堂

 蛇の衣いま脱ぎ捨てし温もりよ・・・・・・・・・・・・秋山卓三

 胞衣塚の草にまぎれて蛇の衣・・・・・・・・・・・・・大場美夜子


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