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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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潰えた家々は/月明りの中で/自らの全き形態を/夢見ていただろうか・・・・・・・・・・・鈴木漠
鈴木漠②

  ──鈴木漠の詩──(3)

        変容 * * * ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木漠

     日々に積み累ねる
     時間の柱にも
     地異によってもたらされた
     断層があり
     さらでだに
     変貌を続ける都市図がある
     たとえば それは
     脇道と本通りの
     埋めがたい段差ともなるだろうか
     水道管からは
     秩序なく水が溢れ
     建築は しばしば
     その骨格を露わにするのだが
     潰(つい)えた家々は
     月明りの中で
     自らの全き形態を
     ときには球体や円錐形を
     夢見ていただろうか
     変容 とは
     内なる他者に出遇うこと
     言葉の新しい脈絡を
     見出だすことだろう
     空を刷く彗星の尾は
     夜々を遠離(ざか)り
     明日はパステルで描かれた太陽が
     癒しのように
     市街図の上を回るだろう

   詩集『変容』(編集工房ノア1998年5月刊)より
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ご承知のように、1995/01/17夜明けに阪神大震災が起こり、神戸をはじめとする地域は大きな損害を受けた。
作者は神戸在住の人であるから、この地震に遭遇しているわけである。
この詩集は、これを受けて書かれたものである。「変容」という題名が、それを物語っている。
「変容」という詩には「*」から「****」まであり、掲出したものは「***」であり、題名の横にアスタリスクが記載されている。
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        形態 * ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木漠

     一斉に緑の火を点じて
     萌黄 若草 うぐいす色
     重畳する植物相の下陰に
     脱皮したばかりの蛇は はやくも
     エロスの滑(ぬめ)りをかがやかせる
     知恵の輪を 結んだり解(ほど)いたり
     その疑問符
     ときには間投詞
     言葉とは 光の
     ひとつの形態だと思えてくる
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        変容 * ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木漠
                          太陽が臀を燻すと
                              われらは変容(メタモルフォズ)した  竹友辰


     殻を割って
     羽化する昆虫たち
     橋の下の薄暗がりで
     ひめやかに
     脱皮をおえたばかりの蛇
     みずみずしい少年は
     徒歩(かち)でもって水を渉る
     その指でめくられる
     見えない日捲(めく)り暦
     めくるめく太陽の変貌は
     固くて青い房から
     やがて熟成する葡萄 のようだ
     橋の下を水は流れ
     すべては停(とど)まることを知らぬ
     須臾の少年も
     時々刻々を変容し
     老いと死と
     自らの再生に向かって
     すでに急ぎ足だ
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         虹 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木漠

     幼子が開く絵本の
     その彩色の中から
     そのまま続くかのように
     雨の霽(は)れ間を
     淡い虹は 懸かる

     悲しみ苦しみ そして愁い
     日々に過ぎていく事象は
     ときに苛酷でさえある
     絵本の物語が
     しばしばそうであるように

     物語の結末はどのようであれ
     いっさいを慰藉(いしゃ)するために
     天と地を結んで
     虹は懸からなければならぬ
     虹を
     懸けなければならぬ

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この詩集には全部で45篇の作品が収められているが、うち15篇は阪神大震災以前に発表されているので、別の性格を持っていると言えるだろう。
ここに引いた4作品は、読めば判るように、何らかの意味で大震災を惹いていると言える。
詩としてのメタファーも駆使してあるので玩味してもらいたい。     


     
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