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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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直感を信じちゃいけない/分析するんだありとあらゆる手管を尽くして/ばらはらにしてさらけだすんだ・・・・・・・・・・・・・四元康祐
四元康祐①

──四元康祐の詩──(1)

        意思決定・・・・・・・・・・・・・・・四元康祐

     直感を信じちゃいけない
     分析するんだありとあらゆる手管を尽くして
     ばらばらにしてさらけだすんだ眩しい陽の下に
     それから数量化するそれが出来たら
     あとは一気に公式まで持ってゆく
     相関関数の多少のずれは気にするな
     直感のいい加減さに較べればよっぽどマシさ
     君の幸福はどんな曲線だい
     波打際のおんなの背中
     ダウジョーンズの震える罫線
     それとも黄金のコンソメの上のさざ波
     最後に微分して最大値を求める
     さよなら、ロレンス

        秘書・・・・・・・・・・・・・・・・・・四元康祐

     「社内秘回覧を読むあなたの横顔がわたしは好き
     眉間にしわを寄せ小首をかしげて
     風に吹かれ星々を読む船乗りみたい
     読み終わったら律儀な仕草で印鑑を取り出して
     ゆっくりと力をこめて捺印する
     そのときの一文字につぐんだ唇も素敵
     秘密を許されてあなたは嬉しい?
     それとも脅えているの少しだけ?
     いつかもっと偉くなってあなたは
     秘密の中心まで辿り着く そしたら
     真昼の砂丘でよろめくあなたに
     わたしが何もかも教えてあげる」

四元康祐・第一詩集『笑うバグ』1991年花神社刊(引用は現代詩文庫『四元康祐詩集』2005年思潮社刊より)
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このアンソロジー詩集の裏表紙に、大岡信が、こう書いている。

<四元康祐をアメリカ文学者金関寿夫の紹介で知った。『笑うバグ』より三年ほど前、「会社めぐり」の時期だった。
 「コンピュータ時代のアンニュイとウィットと感性で日本で初めて出た詩人です」と金関さんへの礼状に書いた。
 四元君はそれ以後ずっと大詩人への道を歩んできた。
 『世界中年会議』の“思いつき”の面白さは抜群。
 彼の作品やエッセーは、どれをとっても人類の未来への不安を隠し持った、微苦笑や皮肉のきいたユーモアを持ち、
 <現代の怪談>めいたスリルに富む。
 個別の詩の背景に常に「大文字の詩」への熱い思いがあって、一見クールな外見をしっかり支えている。
 純正な日本語の詩が、多年日本を離れている純然たる勤め人によって書かれたみごとさ。>

四元 康祐
出典─Wikipedia

四元 康祐(よつもと やすひろ、1959年 - )は、日本の詩人。

大阪府寝屋川市生まれ。中学・高校を広島学院の寮で過ごす。1982年上智大学文学部英文学科卒業。
1983年結婚。1986年、製薬会社の駐在員としてアメリカに移住。1990年ペンシルベニア大学経営学修士号取得。
1991年第1詩集『笑うバグ』を刊行。1994年ドイツ移住。
2002年の『世界中年会議』で第3回山本健吉文学賞、第5回駿河梅花文学賞、2004年詩集『噤みの午後』で第11回萩原朔太郎賞受賞。ミュンヘン郊外在住。

ビジネスマンとして長く欧米暮らしを経験し、日本語を話す機会の限られた生活を送った。経済・会計用語を駆使する斬新な作風であるが、ユーモアも発揮されている点が特徴。

著書
笑うバグ 詩集 花神社 1991.11
世界中年会議 思潮社 2002.9
噤みの午後 思潮社 2003.7
ゴールデンアワー 新潮社 2004.2
四元康祐詩集 思潮社 2005.7 (現代詩文庫)解説:穂村弘
妻の右舷 集英社 2006.3
言語ジャック 思潮社 2010.3
共編著
四元康祐 詩のなかの自画像 前橋文学館特別企画展 第11回萩原朔太郎賞受賞者展覧会 萩原朔太郎記念水と緑と詩のまち前橋文学館 2004.9
詩と生活 対詩 小池昌代 思潮社 2005.10
泥の暦 対詩 田口犬男 思潮社 2008.5
翻訳
動物たちの謝肉祭 サン=サーンスの音楽に誘われて エイドリアン・ミッチェルほか詩 BL出版 2007.7
キッド サイモン・アーミテージ 栩木伸明共訳 思潮社 2008.10
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四元康祐③

         ゴッホ道・・・・・・・・・・・・・・・・四元康祐

     あたり一面どろどろの泥濘である
     但しその泥は
     光沢のある明るい絵の具
     田舎道と波打つ麦畑その向こうの地平線と青空には
     境い目がない ただ虹のようにおぼろげな
     意味の霞がたなびいているだけ
     逆巻く雲や跳び交う鴉までがひと塊にこねくりまわされて
     俺はブルーの一筆書きだ

     地面からはにょろりにょろりと
     先端が髭と化した円錐形が生え出してきて
     捩じれる樹木に絡みつく
     大気中に吹きすさぶ色彩の暴風雨
     そこへケシの花びら達が傘もささずに駆け出してゆく

     描写は退屈だな
     言語の本質は命令形にあり
     「光よ。あれ」
     爾後はみなオノマトペ
     うおーひぇってるぅひとあでんげ?
     おお数式よ 高分子化合物よ
     析出する立方体へと滑り出してゆくものよ!
     舌先で飴が溶けるよ

     波打つ古都の甍のように
     少しずつ角度を変えて合わさった平面の向こうから
     奥行の亡霊達が(土煙あげて)凱旋してくる
     風なきところに風が発ち
     道は、滔々と、道の真ん中を流れてゆく
     泥濘は色鮮やかなまま透き通り
     事物の輪郭だけが骸骨の楽隊さながら踊りだす

     ああ、では俺も
     一本の線にほどけて
     コバルト色の空に舞おう
     色即是空 牛はオランダ語でKoe(ku:)

四元康祐、詩集『言語ジャック』思潮社2010/03/01刊より
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この詩集は題名の通り、ダンテや宮沢賢治や新幹線の車内放送や「奥の細道」や「名詞」や、ありとあらゆるものから、言語や絵画が「ジャック」されているのである。
この詩集から、もう一つの詩を引いておく。

        言葉苛め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四元康祐

     言葉で苛めるのではなく
     言葉が苛められているのである
      
     車座に胡坐をかいた男たちの真ん中に
     縛られて、芋虫のように転がされた哀れな言葉

     句読点ひとつ欠けたところのない玉のような肌である
     厳格な文法の父と優しい音声の母のもとで大切に育てられてきた

     男たちは揃ってみな三つ口である 僅かばかりの
     常套句を使い回して暮らしているのだ

     「へっへっへ、口じゃ嫌がったってカラダは正直だぜ」
     「もっとええ声あげて鳴いてみんかい」

     言葉は歯を食いしばって堪えている
     自分の中から淫らな間投詞が漏れてしまうのを

     そして必死で願っている
     聖なる剣が男たちを微塵に分節してくれることを

     だが、いま彼女の構文は恥ずかしい姿勢を取らされて
     ツンと尖った単語の先を執拗に撫でられ──

     男たちは注視している
     彼女の中心から透明なしずくが垂れ落ちるのを

     獣の股ぐらのような暗い眼差し
     無言のままひくひく震える割れた吻(くちびる)

     決壊の予感に打ち震えながら、言葉は今
     眩しい海を見ている

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比喩メタファーでくるまれているので、難しいかも知れないが、さまざまに想像してみると面白い。






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