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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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鈴虫を塞ぎの虫と共に飼ふ・・・・・・・・・・・・・草間時彦
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  鈴虫を塞ぎの虫と共に飼ふ・・・・・・・・・・・・・草間時彦

スズムシは8月中旬から10月末まで鳴く。もともとは野原の草むらで鳴く虫だが、今では籠に入れて飼ったり、甕にいれて繁殖させて越冬させたりする。
日本では本州にいるが北にゆくほど居なくなるという。コオロギに近い種類で、黒く西瓜の種に似ている。リーンリーンと鈴を振るように鳴く声が美しい。
ただ平安時代にはマツムシと言われ、逆に松虫はスズムシと呼ばれたというから、ややこしい。
『和漢三才図会』には「夜鳴く声、鈴を振るがごとく、里里林里里林といふ。その優美(やさしさ)、松虫に劣らず」とある。清亮さが尊重されてきた虫である。

写真②はスズムシが羽を擦りあわせて鳴いているところ。
suzu0137鈴虫鳴き

スズムシの飼育の難しさは餌が切れたりすると「共食い」することである。
平生はキュウリやナスなどの野菜の切り身を食べるが、繁殖期には「カツオブシ」の削ったものなどを与えて栄養をつけさせる。
こういうスズムシの繁殖などに文字通り命をかけている人たちがいるらしい。

suzu0147鈴虫交尾

写真③はスズムシの「交尾」の様子である。こういうのを写真に撮るのもたいへん難しいものである。
交尾のエクスタシーに片方が羽を震わせている貴重な写真。
野生の状態では、カマキリと同じように、交尾が済むと雌が雄を食べて栄養分を補給したのではないか、と思われる。
飼育に際しては、それでは困るので、カツオブシの削ったものなどを与えるのである。

suzu0150鈴虫産卵

写真④は交尾が済んで受精した雌が輸卵管を土の中に差し込んで産卵しているところ。じめじめと湿気の多い、暗い環境が必要である。
飼育中は「霧吹き」で湿気を与える細心の注意が必要である。
普通は産卵の済んだ雌は死ぬが、飼育環境が良い場合は、雄も雌も生きたまま越冬することもあるという。
飼育も、その辺の域に達すると「スズムシ博士」と言われるのである。
何事も、その筋の最高権威と言われるには、口には言えない苦労と独自のノウハウが必要である。

suzu0160鈴虫卵

写真⑤は産みつけられたスズムシの卵である。
晩秋に産みつけられるので、この卵の状態で越冬し、次の年の春に、可愛いスズムシの幼虫が孵化してくるのである。
ここでも適度の湿気が冬の間も必要で、乾燥させてはならない。孵化した幼虫は何度も脱皮して少しづつ大きくなって成虫になる。
スズムシ ← このサイトでは、スズムシの脱皮なども観察でき、きれいな声も聞けるので、お試しあれ。

古来、スズムシの声を愛でて俳句などに詠まれてきた。
それを少し引いて終る。
掲出の草間時彦の句は鈴虫を直接に詠むのではなく「塞ぎの虫」と共に飼う、というところが面白い。

 飼ひ置きし鈴虫死で庵淋し・・・・・・・・正岡子規

 寝(い)も寝(いね)ず甕の鈴虫長鳴くに・・・・・・・・富安風生

 鈴虫や早寝の老に飼はれつつ・・・・・・・・後藤夜半

 鈴虫は鳴きやすむなり虫時雨・・・・・・・・松本たかし

 鈴虫や甕の谺に鳴き溺れ・・・・・・・・林原耒井

 鈴虫を死なして療者嘆くなり・・・・・・・・秋元不死男

 戸を細目に野の鈴虫の声入るる・・・・・・・・篠田悌二郎

 鈴虫の生くるも死ぬも甕の中・・・・・・・・安住敦

 膝がさみしと鈴虫育てゐるか母・・・・・・・・鈴木栄子

 鈴虫のひるも鈴振る地下茶房・・・・・・・・福島富美子

 鈴虫のりんりんと夜をゆたかにす・・・・・・・・永井博文


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