
露の世は露の世ながらさりながら・・・・・・・・・・・・・小林一茶
江戸後期の代表的俳諧師の一茶は、信州柏原から15歳の時に江戸に出て、奉公生活にも俳諧修業にも辛酸をなめた。
異母弟との13年にも及ぶ遺産争いが解決し、51歳で帰郷、妻帯した。三男一女を得たが、長男、長女、それに次男と次々に幼くて死に、妻をも失った。
この句は溺愛していた長女・さと が、1歳余で天然痘のため死んだ時のもの。
この世ははかない露の世という。そんなことはよく知っている。よく知ってはいるが、知っていることが何になろう。
くりかえし、くりかえし、私は悲しくてたまらないよ。 ということであろうか。
『おらが春』所載だが、「露の世」というフレーズの繰り返しが秀逸であり、かつ痛切である。
「露」の句としては代表的な秀句として、よく知られている。
以下、「露」を詠んだ句を引いておく。
露とくとく試みに浮世すすがばや・・・・・・・・松尾芭蕉
甘からむ露を分かてよ草の虫・・・・・・・・石川桂郎
白露や死んでゆく日も帯締めて・・・・・・・・三橋鷹女
露なめて白猫いよよ白くなる・・・・・・・・能村登四郎
われもまた露けきもののひとつにて・・・・・・・・森澄雄
露今宵生るるものと死ぬものと・・・・・・・・岡本松浜
芋の露連山影を正うす・・・・・・・・・飯田蛇笏
蔓踏んで一山の露動きけり・・・・・・・・原石鼎
露の道高野の僧と共に行く・・・・・・・・池内たけし
露けさの弥撒のをはりはひざまづく・・・・・・・・水原秋桜子
落ちかかる葉先の露の大いさよ・・・・・・・・星野立子
金剛の露ひとつぶや石の上・・・・・・・・川端茅舎
露燦々胸に手組めり祈るごと・・・・・・・・石田波郷
露の中つむじ二つを子が戴く・・・・・・・・橋本多佳子
露の夜の一つのことば待たれけり・・・・・・・・柴田白葉女
露の戸を敲く風あり草木染・・・・・・・・桂信子
草の露繁し柩を下ろすべく・・・・・・・・高橋睦郎
「母」の字の点をきつちり露けしや・・・・・・・・片山由美子
まるきものに乳房心根露の玉・・・・・・・・鳥居真里子
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