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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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高島征夫自選「百句」2005年・・・・・・・・・・・木村草弥
「のろ」誌

 高島征夫自選「百句」2005年・・・・・・・木村草弥       

       (1)               

元旦を雪積み流るくわりんの実

信心の薄き身なれども初参り

初詣まんぢゆうの湯気みぎひだり

元旦に怒鳴る声あり雪日影

なにもかも去年に押し込み詣でけり

あめつちはここ元旦の珈琲屋

雪しづく日は燦々と二日かな

尖りしよ硬き冬芽の桜木は

初電話なにゆゑ縺れてをりしかな

青猫のよぎりて吹かる竃祓

武蔵野の雲ひろごりし三日かな

ひよどりの目の縁赤らめ枯木揺る

寒風に抗ひをりし九十九折

水仙の透きとほるなり海眼下


      (2)

手の平の種あたたかし寒に入る                        

たはむれに若菜摘みたりうたごころ

冬の雨柚子のにほへる部屋にゐて

味噌包む青さの失せし朴落葉

枯芙蓉ひかりの中にたふとかり

裸木の中の黒木の寂しさよ

着膨れてひとりはみだし終電車

冬日影ありくも長きホームかな

冬陽炎をちに機関車動かざり

墓標のごとし冬の路傍に石積むは

薄ラ日を背に裸木の力瘤

小正月白き巨塔の焼却場

寒灯のとどかざる闇ポスト鳴る

大寒の我ら絶滅危惧種なる

自転車の検問寒きゆうごころ

一声を寒の鼓と発したる

夜を焦がす山焼き蛇のごとくなり


     (3)

春近しゆつくり跳ぼう兎君                        

成人の日より煙草やめました

マフラーを後ろ結びに出てゆけり

人間は人のみならず裸の木

空のある川冬ざるる薬王院

浅川の冬を雲雀の鳴きにけ

薄鈍の広場汚れし松飾

冬の鵙天に欅の秀のゆるぐ

うつくしや赤き木の実を寒寂光

あかときの首だけ出せる寒さかな

かじかみし手に鉛筆のチビてゐる

日の残る水に動かず寒の鯉

あるくたび寒気に壜の触れ合へり

鯨狩る今も狩る縄文人のウラア

花枇杷や書棚の隅の大図鑑

霙降りカフェラテ淹るる泡の音

白骨樹屹立北風やむことなし

セルロイド擦りし匂ひ林檎かな

      (4)

霙ふる街出し人の遠ざかり

霙ふり傍若無人なる車両

しなやかに生きたしといふ霙降る

霙降るかたくなに席拒みをり

つるつるのレール凍つるを走るがに

橙のひとつ灯せし海の宿

日の匂ひ蒲団ごくらく極楽然

ダリのパン籠冬の眼の見つめをり

馬鹿っちょといわれる由なし寒くもなし

秀の撓り鶸の重さのほどなれる

冬の日や石筍伸ぶに時かけて

寝る時もぎつちよはぎつちよ猯狸

あかときのすがもり光る山家かな

あん肝の舌にこつてりあつき酒

風流も塀のうちなる寒の入り

かじかみし手を振り入る宿場町


       (5)

さびしさの煮凝売りし頃のこと                        

螺旋を捲く音の響ける寒夜かな

寒き夜や時計にはかに動き出す

寒の水笑ひ羅漢に入日あり

ひかり著て大寒の日の雀をる

ぶつかれりラガーら湯気を吹つ飛ばし

冬空にまざとありけり鳥の首

聴き做せり桂の森の三十三才

いとけなし波行く方の浮寝鳥

冬の雨こちらを向きて猫座る

寒き日や磯鵯の丸まつて

薄曇り水仙ひともと原種なる

探梅や当山高尾薬王院

踏切の音消し長き雪の貨車

さながらにそは神の雨春を待つ

影雪のシュプールふかき人傾く

実の消えて鳥は来たらず春待つ木


       (6)

さらさらと波の氷凝り石洗ふ                       

氷凝りの銅像見上ぐ見つめらる

宇宙遊泳・リュージュいづれぞ遅速なる

外套を吊し目張りとなせるなり

冬の影ものみな低く地を這へる

雲光るまなざし黒き寒立馬

日向ぼこ猫は日陰に移動する

寄せかへししぶき氷の花となる

中折れの棕櫚の葉寒くバンバラに

我が足に靴下二枚着膨れし

節分や猫の先導山下る

立春の金魚の力ここにあり

沈丁花書かねばならぬ文のあり

山峡の畑に残りし雪はだら

盆地覆ふ野焼の煙ミルク色

丘の村軒寄せ春のまだ浅し

鴇の雲たちまち褪せし雪嶺に

道の辺の火の見しづかに春の日さす
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高島征夫氏より提供された自選句である。

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e0055861_19485774ルーラン・ゴッホ
  
渦巻ける髭と春くる郵便夫・・・・・・・・・・・・・高島征夫

この句を載せたら、作者がさっそくご覧いただいて、この句にまつわる「自句自註」を知らせていただいた。
それを下記する。

 【この句は『獐』(一九九四年三月号)に載っているからその年の立春頃の作である。十年前(2004年現在)の作品ということになる。この句を一読、誰でも「ゴッホ」を連想するかもしれない。事実、「ゴッホの絵に、郵便配達夫ルーランがある。碧い鳥打帽をかぶって、青い服を着て正面を向く顔中髯だらけのような彼は、威厳すら感じられる。これを人は髯のルーランと呼んで親しんでいる。渦巻ける髯はゴッホの描く麦畑でもあり、糸杉でもある。髯の郵便夫が春を呼んでいるようでもある。」という撰評を師・高島茂から貰った。
 出来上がったものはすでに作者の手を離れているから、こういうことを言うべきではないのだろうが、正直なところ、作者はこの時、それをまったく意識していなかったのである。
 そういう意味で思い出の深い句となった。】
(自註:『獐』2004年4月号「150号記念特集」のための草稿より)

  
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高島征夫
2009/04/01(水) 11:09:10 | URL | 結城音彦 #GCA3nAmE [ 編集 ]
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