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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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長山靖生『天皇はなぜ滅びないのか』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート──

       長山靖生『天皇はなぜ滅びないのか』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                   ・・・・・・・・新潮選書2011/09/22刊・・・・・・・・・・

   先鋭なる信長、奸智の秀吉、そして政・経・軍を司る最強の徳川家に、天皇家はいかに対峙し、生き残ってきたのか。
   神楽、和歌、書道など伝統諸芸を掌握し、圧倒的な「文化力」を育むとともに、お蔭参りや御所参詣の大流行を巷に起こす「ブランド力」を発揮し、
   庶民の人気を博した歴代天皇。近世の皇室史から皇統存続の謎を探る。

新潮社の読書誌「波」2011年10月号に載る著者の紹介記事を引いておく。
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       皇統存続と日本人・・・・・・・・・・・・・・・・長山靖生

 日本人は世襲が大好きだ。
歌舞伎や能狂言の世界は勿論、今の芸能人も世襲が多く、テレビを見ていると番組そっちのけで「この人、だれそれの子どもだよね」と盛り上がる。
政治家の世襲には批判も強いが、相変わらず当選するのは、選挙民がそういう選択をしているからだ。
ブランド品の人気は依然高いし、お稽古事などでは家元制度も健在だ(新しいお教室まで世襲化している)。
 日本一のブランドにして世襲体制といえば「天皇」である。なにしろ現在も継続している世界最古の皇室なのだ。
 だが、なぜ天皇が滅びることなく続いてきたのか、その理由はいまひとつ明確でない。
天皇が強大な権力を握っていたとされるのは遥か昔のことで、千年以上前から藤原摂関家や武家が政治の実権を握ってきた。
にもかかわらず皇位簒奪はなく、易姓革命は起こらず、それどころか国家統治の大権を手中に収めた権力者は、天皇から官位を授かることでその地位を世襲化した。
本来ならライバルであるはずの存在も取り込んでしまう天皇の魅力とは、いったいなんだろう。
 天皇は、政治的権力は早々に失ったものの、祭祀的権威は保持していたという説があるが、それも疑わしい。
天皇は時に陰陽師に吉凶を尋ね、僧侶に加持祈祷を依頼しており、宗教的な超越者とはいえない。
さらに王朝文学に登場する皇族は、恋をしたり煩悶したりと、きわめて人間的だ。
 中世には朝廷の衰微は甚だしく、御所の塀が崩れても直す金がなくてなかが丸見えだったとの風説さえあった。
それでも天皇は天皇であり、むしろ民は「宮中御衰微」の噂に「おいたわしい」という気持を懐き、天皇への親しみを育ててきた。
直接的な権力を持たず、宗教的な権威でもなく、衰微していることが明らかなのに、むしろその無力さが民衆を惹きつけたのだ。
江戸時代にも、天皇が登場する物語は、ほとんどすべて天皇を善者として描いた。
飢饉になると江戸や大坂では打毀しが起きたのに、京では庶民が御所周辺を祈りながら巡る「千度参り」が流行した。
 そんな不思議な希望を国民に与える天皇の力は、東日本大震災の直後にも発揮された。
現在の天皇は、政治的実権を持っていない。にもかかわらず、何も出来ない天皇が国民に語りかけ、被災地を訪れたことに癒された人は多い。
実は私も被災し、避難先で数日後に電気がついた際に天皇のお言葉を聞き、思わず涙が出た。
「続いていること」自体が、日本人には救いなのかもしれない。続いていれば、今はダメでも、未来に希望をつなげられる。
天皇は、そんな「続いている」ことの象徴であり、日本人であることの家元なのかもしれない。
日本中が閉塞感と衰退感に包まれている今、江戸時代の「権力を持たない弱い天皇」のありかたには、希望再生のヒントがある。
本書ではその皇統存続に深く迫ってみた。 (ながやま・やすお 思想史家、評論家)
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長山靖生/ナガヤマ・ヤスオ

1962年茨城県生まれ。評論家、歯学博士。鶴見大学歯学部卒業。
歯科医の傍ら、文芸評論、社会時評など幅広く執筆活動を行っている。
1996年『偽史冒険世界』(ちくま文庫)で、第10回大衆文学研究賞受賞。
2011年『日本SF精神史』(河出ブックス)で、第31回日本SF大賞受賞。
主な著作に、『人はなぜ歴史を偽造するのか』(新潮社)、『日露戦争』『大帝没後』(ともに新潮新書)、
『日本人の老後』『天下の副将軍』『テロとユートピア』(いずれも新潮選書)、
『日米相互誤解史』(中公文庫)などがある。

「立ち読み」もできる。 お試しあれ。

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