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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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垢じみたこころ洗ひたし 冴えわたる極月の夜に月の利鎌だ・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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    垢じみたこころ洗ひたし 冴えわたる
       極月の夜に月の利鎌(とがま)だ・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥


この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
ご存知のように「月」にはほぼ29日周期で満ち欠けがあるが、写真のような「利鎌」の形をするのは月齢の中で2回ある。
新月から満ちはじめ上弦の月から満月に至る途中の利鎌と、写真のような下弦の月から欠けが更に進んだ利鎌、である。この二つの場合には「弧」の向きが逆になる。
詳しくは「下弦の月」というのをご覧いただきたい。

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写真②は上弦の月である。↑

予めお断りしておく。はじめに掲出したのは今日の月齢の月ではない。私の歌に合わせた月齢の画像を掲げたものである。
写真①のような月は「有明月」というが、これは月齢でいうと26日頃の月である。
「有明の空」というのは夜明けの空のことで、そこに昇る月が有明月ということである。
今年でいうと12月21日頃が、ほぼこんな形の月になるだろう。
これは本来は十六夜(いざよい)以降の月の総称だが、この時期に限定すれば「暁月」と呼ぶ方が正確であろう。
古くは「二十六夜講」などの風習があった。
「新月」からはじまって月には月齢のそれぞれの時点で呼び名がある。これも詳しくは先に紹介したサイトでご覧いただきたい。
「三十日月」というのは、もうすぐ「新月」になって消えてしまうという頃の月の姿である。

先日、十日夜には「皆既月食」が久しぶりにあったのだが、あいにく雲がかかったり時たま雲が晴れたりとかの天気で、詳しく見ることはしなかった。
今朝6時すぎに起きてカーテンを開けたら、夜明け前の薄暗い西の空に、満月を過ぎた月齢17.9の月が光っていた。

私が懇意にお付き合いしていただいた 高島征夫さんのサイトには毎日の「暦」─その日の日の出、月の出などのデータが載っていたが、
京都府の場合、今日の月の出は19:19、南中時は01:34、月の入りは8:43。月齢は17.9 あたりではないかと思う。
まさに今朝、夜明けまえに私の見たのは、そういうタイミングだったのであろうと思う。
高島さん亡き今となっては、聞くことは出来ないが、詳しくは、ネット上の国立天文台の「こよみの計算」にアクセスすれば簡単に知ることができる。

「利鎌」の説明をしていて、つい月の話になったが、本来、話題にすべきは「垢じみた心」を洗いたい、ということであろうか。
私のように長い年月を生きて来ると、体も心も、すっかり「垢」じみたものになってしまっている。
「冴えわたる」極月(12月の異称)の夜の月の「利鎌」を見ていると、それで自分の心の垢を削ぎ落したい、という想いに捕われるというのである。
これらは「比喩」表現であるから、言葉のあれこれの詮索は無用である。

俳句には「寒月」「冬の月」「月冴ゆる」「月氷る」「寒三日月」などの季語が見られる。
さむざむとした青白い月で、毎月見られる月ではあるが、この時期に見ると、厳冬を思わせる月の凄まじさがある。透徹した空気のため、研ぎ澄まされたような、刺すような寒さが感じられて、美しい。「寒月」と言えば、特に冷厳な凍りついたような月を言い、氷輪というようで、人を離れて寂として輝いている。「冬三日月」は仰向きはじめた形で、ひえびえと利鎌のように鋭くかかる。
『枕草子』には「すさまじきもの、おうなのけさう、しはすの月」と書かれている。
『源氏物語』朝顔の巻では「花紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄める月に、雪の光りあひたる空こそ、あやしう、色なきものの、身にしみて、この世のほかのことまで思ひ流され、おもしろさもあはれさも、残らぬ折りなれ。すさまじきためしに言ひ置きけむ人の、心浅さよ」とある。

 寒月や僧に行き合ふ橋の上・・・・・・・・与謝蕪村

の句は、そういう雰囲気を、よく表現し尽している。

以下、冬の月を詠んだ句を引いて終る。

 我影の崖に落ちけり冬の月・・・・・・・・柳原極堂

 冬の月をみなの髪の匂ひかな・・・・・・・・野村喜舟

 吹雪やみ木の葉の如き月あがる・・・・・・・・前田普羅

 冬三日月羽毛の如く粧ひ出づ・・・・・・・・原ヨウ子

 寝ぬる子が青しといひし冬の月・・・・・・・・中村汀女

 あたたかき冬月幸を賜はるや・・・・・・・・石田波郷

 寒月に大いに怒る轍あり・・・・・・・・秋元不死男

 人穴を掘れば寒月穴の上・・・・・・・・富沢赤黄男

 寒月や耳光らせて僧の群・・・・・・・・中川宋淵

 降りし汽車また寒月に発ちゆけり・・・・・・・・百合山羽公

 煙突と冬三日月と相寄りし・・・・・・・・岸風三楼

 寒の月酒にもまろみありとせり・・・・・・・・相生垣瓜人

 寒三日月不敵な翳を抱きすすむ・・・・・・・・野沢節子

 寒月光いつか一人となるこの家・・・・・・・・古賀まり子

 寒月の作れる陰につまづける・・・・・・・・高木貞子

 寒月にまぶたを青く鶏ねむる・・・・・・・・田中祐三郎


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