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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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国末憲人『ミシュラン 三つ星と世界戦略』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート──

    国末憲人『ミシュラン 三つ星と世界戦略』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                 ・・・・・・・新潮選書2011/10/27刊・・・・・・・・・・

     「グルメのバイブル」として圧倒的な影響力を誇ってきたミシュランガイド。
     しかし、その権威は「食の国際化」の中で揺らぎ始めている。
     近年、アメリカ・日本・香港とガイド発行国を増やしてきたのはなぜか。
     その背景には、どのような経営戦略があるのか。
     トヨタ自動車とも比せられる「偉大なる地方企業」の内幕を、関係者への徹底取材で詳細に描き出す。

新潮社の読書誌「波」2011年11月号より書評を引いておく。
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          食の国際化の中のミシュラン     辻 芳樹


 今から50年前、父・辻静雄がヨーロッパのレストラン料理の研究のため車を駆って食べ歩きの旅を始めた時、傍らにはミシュランの赤いガイドブックがあった。
 フランスのタイヤ会社、ミシュランのホテル・レストランガイドは20世紀初頭、モータリゼーションの時代の幕開けとともに生まれ、ヨーロッパを旅する人の頼りになる案内役となった。そして21世紀を迎え、100年の歴史を誇る赤いガイドは新たな美食の大地をめざして海を渡った。
 2005年刊行のニューヨーク版に続いて、サンフランシスコ版、東京版、京都・大阪版、香港・マカオ版とミシュランガイドの海外進出は続いている。道のあるところ津々浦々までミシュランの調査員が赴いて作り上げてきた美食地図は今や世界に広がり、美食大国フランスの覇権を窺うかのように、イギリス、アメリカ、デンマークに、そしてもちろん日本にも優れた料理人が現れている。ガイドの世界進出もそうした文脈の中に位置づけられる。
 2007年、東京版が初めて刊行された時に巻き起こった、ミシュランガイドの星をめぐる議論は記憶に新しい。料理とその評価について改めて考えるきっかけを与えてくれたわけだが、残念ながらそこには「ミシュランガイドとは何なのか、本国フランスでどんな役割を果たしてきたのか」という本質に迫る視点が欠けていたような気がする。本書『ミシュラン 三つ星と世界戦略』はその遺漏を見事に埋めてくれた。評価する側、される側、ガイドブックの読者など立場の異なる人々に取材して疑問をぶつけ、事実関係に矛盾があれば徹底的に資料を渉猟し、謎めいたガイドブックのベールを少しずつはがしていく手法は、ジャーナリストの著者ならではのものと言える。
 厳正公平な審査方法を誇るとはいえ、一企業の発意になるガイドブックの限界は当然ある。それぞれの土地の文化と時代を反映する料理を、常に的確に評価するのは決してたやすいことではない。ミシュランガイドの日本上陸がもたらしたものを、客観的かつ冷静に描いた本書は、翻って私たち自身の日本の食文化に対する向き合い方を静かに問うている。
 日本でこれまでほとんど語られることのなかった企業としてのミシュランの歩みとガイドブックの戦略的位置づけ、そして類稀な企業理念も否応なくグローバル化の波に洗われていく現実を浮き彫りにした部分は読みごたえ十分である。
 本書に登場するのは、どこか傲岸でしたたかな、あるいは謙虚で物静かな、あるいは夢見がちな、味のある人たちである。時には歓喜に涙し、時には失意を噛みしめながらもセラヴィー(仕方ない)とつぶやいて明日へと歩みだす。ユーモアとペーソスの中に軽い皮肉がきいた、フランス映画を思わせる読み心地が印象的な本だ。  (つじ・よしき 辻調理師専門学校校長)
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国末憲人/クニスエ・ノリト

1963年岡山県生まれ。1985年大阪大学卒。1987年パリ第二大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001~2004年パリ支局員、2005~2007年外報部次長、2007~2010年パリ支局長。現在はGLOBE副編集長。著書に『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(草思社)などがある。

「ミシュラン」のガイド本については、日本の老舗と言われるところはランクづけを拒否していると言われて、とかくマスコミの話題になっている。
この書評は「辻静雄」というグルメ界では一目置かれていた人の息子の書いたものである。
また「タイヤ」メーカーであるミシュラがなぜ発行するグルメ・ガイド本なのかという疑問が、タイヤ・メーカーとしての長期戦略であるということを考えると、
日本人には欠けている長期の視点というものに思いが至るのである。
「立ち読み」もできるので、試みられよ。
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