
大寒の力いつぱい落つる日よ・・・・・・・・・・・・・・・・下村非文
今日1月21日は二十四節気の「大寒」である。
寒さの最もきびしい時である。
とは言え、そろそろ梅、沈丁花、水仙、椿などが咲きはじめる。
もちろん日本列島は南北に長いから、場所によっては遅速があるのは当然である。
この頃の寒さを形容して、『年浪草』には、「栗烈として極まれり」という。
そのような峻烈な寒さの中で、寒さに強い花から咲きはじめて、春が用意されてゆく。
日本の気候推移は「三寒四温」と言われる。「三寒」と「四温」が、交互に繰り返される。
日本人の感性というのは、寒さに対しても、さまざまの表現を見せる。
「寒」に関していうと、寒に入って4日目が「寒四郎」、9日目を「寒九」と表現する。
北陸では「寒の入り」の日に「あずき餅」を食べ、これを「寒固」(かんがため)と称するらしい。これは寒の入りに小豆を食えば、寒気にあたらず、という験(げん)かつぎらしい。
うす壁にづんづと寒が入りにけり・・・・・・・・小林一茶
宵過ぎや柱みりみり寒が入る・・・・・・・・小林一茶
のような句は、寒の感じをよく捉えている。
大陸高気圧が強いか弱いかによって、寒さや雪の程度が決まる。この寒さの最もきびしい30日間の中に、小寒、大寒と呼び名を定めて、心の身構えをしたわけである。
以下、寒、大寒などの入った句を引いて終る。
禽獣とゐて魂なごむ寒日和・・・・・・・・西島麦南
背にひたと一枚の寒負ふごとし・・・・・・・・原子公平
寒きびし一刀彫のごとくなり・・・・・・・・鈴木青園
胎動を夫と分つや寒ゆるむ・・・・・・・・上田紀代
寒三日月凄しといひて窓を閉づ・・・・・・・・藤田烏兎
松籟も寒の谺も返し来よ・・・・・・・・小林康治
大寒の埃の如く人死ぬる・・・・・・・・高浜虚子
大寒や転びて諸手つく悲しさ・・・・・・・・西東三鬼
大寒や老農死して指逞し・・・・・・・・相馬遷子
大寒の一戸もかくれなき故郷・・・・・・・・飯田龍太
大寒の牛や牽かれて動き出す・・・・・・・・谷野予志
薄日さし荒野荒海大寒なり・・・・・・・・福田蓼汀
大寒の茜消ゆるに間ありけり・・・・・・・・河合未光
大寒ののつしのつしと来る如く・・・・・・・・中嶋音路
大寒の堆肥よく寝てゐることよ・・・・・・・・松井松花
大寒の鶏目を張つて摑まるる・・・・・・・・芦内くに
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