鼻眼鏡ずり落ちさうにかけゐつつ
母はこくりと日向ぼこする・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)に載るものである。
「人」のひなたぼっこの写真がないので、猫のもので代用した。
冬の日、風の当たらない南側の日向で「ひなたぼっこ」をするのは気分のいいものである。
掲出した私の歌は、93歳で亡くなった母の往時の姿を偲んで歌にしたものである。
写真②はギリシアの「エーゲ海」クルーズを旅したときのもので、戸口に座る老夫婦で、これも基本的には「ひなたぼっこ」と言ってもよいだろう。
この写真には
歩く我に気づきて「やあ」といふごとく片手を挙ぐる戸口の老は・・・・・・・・・木村草弥
戸口の椅子二つに坐る老夫婦その顔の皺が語る年輪
愛よ恋よといふ齢こえて枯淡の境地青い戸口の椅子に坐る二人
の歌が、私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載っている。
なお私のWebのHP「エーゲ海の午睡」の紀行文にも収録してあるので、ご覧いただきたい。
以下、「ひなたぼっこ」を詠んだ句を引いて終わりたい。
日に酔ひて死にたる如し日向ぼこ・・・・・・・・高浜虚子
うとうとと生死の外や日向ぼこ・・・・・・・・村上鬼城
冬日掬ふ如き両掌や日向ぼこ・・・・・・・・池内友次郎
日向ぼこ笑ひくづれて散りにけり・・・・・・・・富安風生
つかのまのきづなをたちてひなたぼこ・・・・・・・・飯田蛇笏
日向ぼつこ日向がいやになりにけり・・・・・・・・久保田万太郎
日向ぼこ神の集ひも日向ならむ・・・・・・・・大野林火
ふるさとにたよりおこたり日向ぼこ・・・・・・・・中村汀女
日向ぼこ父の血母の血ここに睦め・・・・・・・・中村草田男
かへる山ありて猿たち日向ぼこ・・・・・・・・山口波津女
けふの日の燃え極まりし日向ぼこ・・・・・・・・松本たかし
胸もとを鏡のごとく日向ぼこ・・・・・・・・大野林火
手に足に青空染むとは日向ぼこ・・・・・・・・篠原鳳作
犬がものを言つてきさうな日向ぼこ・・・・・・・・京極杞陽
デスマスクある壁を背に日向ぼこ・・・・・・・・石原八束
太陽の手をいただいて日向ぼこ・・・・・・・・堀内薫
太陽に吾も埃や日向ぼこ・・・・・・・・平赤絵
日向ぼこ身のうちそとに母のゐて・・・・・・・・長谷川せつ子
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