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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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赤坂治績『江戸歌舞伎役者の<食乱>日記 』・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート─

     赤坂治績『江戸歌舞伎役者の<食乱>日記 』・・・・・・・・・・・・木村草弥
          ・・・・・・・・・新潮新書2011/12/16刊・・・・・・・・・・・

        幕末の名優三代中村仲蔵、旅した、食べた、記録した。
       【信州伊那谷:鮎の唐揚げ/駿府鞠子:とろろ汁/伊勢桑名:白魚/越後岩室:鯖の刺身】

    七代團十郎の鶴雑煮、瀬戸内の海水むすび、松茸出汁の蕎麦、伊勢の舟盛、糸魚川の鯛の潮煮、
    由比の鱚の蒲焼、五代高麗蔵の牡蠣雑炊……。
    幕末の名優・三代中村仲蔵の自伝『手前味噌』には、諸国の珍品、名物の記録が数多く遺されている。
    食べ物だけでなく、東海道から中山道、越後、伊勢、尾道など、旅興行で巡った土地の人情、
    風俗も活き活きと描写され、江戸時代がいかに豊かだったか実感できる美味しい一冊。

新潮社の読書誌「波」2012/01号に載る著者自身の「補足」の記事を引いておく。
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     江戸人の主食は?      赤坂治績

『江戸歌舞伎役者の〈食乱〉日記』を上梓した。
幕末~明治の名優・三代中村仲蔵の自伝『手前味噌』を手掛かりに江戸時代の食の実情を探ったが、雑穀について書くスペースがなかったので、ここではそれを補いたい。
 自伝では、雑穀について二か所で記している。
 第一回目は天保十三(1842)年。富山へ行った帰り、飛騨の百姓家で休憩し、稗を食べた。江戸弁を話す四十近い女がいて、「この辺りではみな麦飯を食べています。私たちは麦を食べられないので、稗を食べています。菜(おかず)の蕪のどぶ漬けは不味そうに見えますが、味噌が良いので食べられます」と話した。
 第二回は弘化四(1847)年。信州・伊那谷からの帰り、甲府盆地から大菩薩峠へかかる手前にあった茶屋で、麦飯と葱の汁を食した。
 日本人の主食は昔から米だった、と勘違いしている現代人は多い。確かに、三都(江戸・京・大坂)では貧乏人も白米を食べたものの、全国的には米に麦や稗・粟・黍などの雑穀を混ぜていた。「かて飯」「まぜ飯」「五目飯」が主食だったのである。
 そのことを記録した史料は多いが、たとえば、『守貞謾稿』に「今、三都とも粳米を食べ、他の穀物を交えない。鄙(田舎)は米のみ食べる所もあるが、多くは麦を交えて食べる。粳だけの飯を『米の飯』『白米』という」(現代語訳)とある。
 先ほどの江戸弁を話す飛騨の女は、芝居町の隣町で番太(木戸番)をしていた者の家族とのちにわかる。彼女は「自分たちは江戸で白米を食べていたので、麦の入った飯は不味くて食べられない」と言いたかったのである。番太は各町に雇われた最下層の庶民だが、江戸ではそのような者も白米を食べていたことになる。
 ところが、田舎で米の飯を食べられた人は僅かだった。江戸時代は人口の八十数パーセントが百姓で、田舎の住人のほとんどは百姓である。その百姓が米を作ったが、年貢として巻き上げられ、米の飯は食べられなかった。
 大変皮肉な現象だが、しかし物事には両面ある。
 武家の街だった江戸では、飢饉の時も仕事があり、白米を食べられた。しかし、白米ばかりを食べていたため、脚気になる人が多かった。脚気は足が浮腫む病気で、「江戸患い」と言った。精米する時、糠と一緒にビタミンB1を除去する。副食で栄養を補えば問題ないのだが、当時の庶民は大概、一汁一菜だったので、ビタミンB1が不足したのである。
 一方、田舎の人は脚気にならなかった。麦には白米の倍のビタミン類があり、カルシウム・鉄分などは四倍ある。つまり、麦を食べていれば栄養不足にならないのだ。現代でも長寿の人は田舎に多いが、田舎では戦後まで雑穀が主食だったことと関係あるのではないか。 (あかさか・ちせき 演劇評論家・江戸文化研究家)

赤坂治績/アカサカ・チセキ

1944(昭和19)年山梨県生まれ。演劇評論家・江戸文化研究家。劇団前進座、「演劇界」編集部を経て独立。新聞・雑誌に執筆、テレビ・ラジオへの出演や、文化・教養講座の講師も務める。著書に『歌舞伎ことばの辞典』『ことばの花道』『知らざあ言って聞かせやしょう』など。

「立ち読み」も出来るので、アクセスされたし。

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