
ムスカリの傍(かたへ)に置ける愛の詩集
湖(うみ)より吹ける風はむらさき・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るものである。
「愛の詩集」という言葉などは、少し甘すぎるかも知れない。
ムスカリも、そうだが、総じて草花などの名前や栽培は亡妻がやっていたか、または教わったものが多い。
ムスカリは小アジアのアルメニア辺りが原産地と言われている。
学名のMuscariはギリシア語のmoschos(麝香)に由来するという。強い香りから来ているのだろうか。
このムスカリは花壇などにびっしりと密植されているのが豪華で風情がある。
球根植物の例で、暑い夏には地上部は消えてなくなってしまうが、晩秋になると芽を出してくる。
2、3年はそのまま放置して置いてよいが、数年経ったら堀り挙げて保存し、秋に植えなおすのがよい。
写真②に掲出したような「白」のムスカリもあるようである。もちろん栽培種だろう。

私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)にも
ムスカリは紫の彩(いろ)に咲きいでて小人の国にシャンデリア点(とも)す ・・・・・・・・木村草弥
という歌が載っている。
ムスカリは丁度シャンデリアをひっくり返したような形をしており、私は、それを「小人の国のシャンデリア」と表現してみた。
ムスカリの特徴を示すものとしては、この歌の方が合っているいるかも知れない。
ムスカリはカタカナ語であり、季語としての市民権を得て日が浅いので、詠まれている句は多くないが、少し紹介する。
ムスカリは和蘭渡り施薬寺・・・・・・・・・・有働亨
かたまりてムスカリ古代の色放つ・・・・・・・・・・青柳照葉
ムスカリや石を起せば何かゐて・・・・・・・・・・永作火童
ムスカリや川に火を焚く誰かゐて・・・・・・・・・・ながさく清江
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