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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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横田英子詩集『川の構図』から・・・・・・・・・・・・木村草弥
横田英子

──新・読書ノート──

   横田英子詩集『川の構図』から・・・・・・・・・・・・木村草弥
                   ・・・・・・・土曜美術社出版販売2011/11/15刊・・・・・・・・・・

         肖 像 画

     今あなたの白い髪が
     梅雨晴れの陽に輝く

     あじさいの花を胸いっぱいに抱えて
     私の教室に持って来てくれた日のことを
     思い出します
     久し振りの教室の空気にむせたように
     一瞬棒立ちになって そしてあじさいの花束を
     振って見せた
     花の到着に歓声を上げる子どもたち
     やっぱり教室はいいね 呟いている母
     私の勤める学校が実家の近くだから
     またも無理を言った
     図画の時間 あじさいを描く
     庭じゅうの花を切り集めて
     母はそのあじさいを持って来てくれたのだ
     定年後だからこそ頼めた

     今老人ホームの部屋にもあじさいが咲く
     あの日の空色の花たち
     これをバックにあなたの肖像画が仕上がっていきます
     きっぱりとした眼は九十三歳の時わ宿して光る
     海馬の縮小か 脳の一部が翳っていても
     夕陽にきらめく波のよう
     ときには波頭立てて
     どっと打ち寄せる海の姿で
     迫ってくる

     
     その気配しかと捕らえたくて
     お母さんもうしばらくそのまま
     小学校の先生として五人の母として
     燃えていた日々の あなたの微笑みを
     描かねばならない
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この詩集には全部で35篇の詩が載っている。
作者・横田英子さんも長らく教職にあった人のようである。

 横田英子
1939年 大阪府岸和田生まれ

詩集 『巴旦杏』『海の深さについて』『珊瑚は砂になるというけれど』『ある心象の風景に咲いている』
   『炎みち』『みずのたび』『風の器』『私の中を流れる川について』

この詩集の題になっている作品を引いておく。

           川 の 構 図

     うろこ雲が
     映える川は 今は静だ
     その内側に
     幾本もの刃を隠し持って
     ちらっと上目づかいに
     波がざわついている

     岸辺にそよぐ
     葦の歌を聞いて
     流れたこともあった
     水面を
     ゆっくり撫でて
     吹き抜けていく風よ

     母の手のような温もり
     だが刻々と冷めていくのか
     いない日々が
     切なく迫るときがあって

     その上流で
     母の子守唄は底まで染みて
     母は 常に先を流れて 抗い
     ついには泥にまみれて
     散っていった
     あのさいごの虹色の飛沫を忘れない

     夕闇を裂いて沿岸の家の灯がまたたく
     川は灯りを川面に映しながら思う
     人々の心の中をゆったり
     流れる川でありたいと

     もっと下流に向かって
     刃を一本一本
     捨てていくのだ
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この詩の中に書かれる「川」「刃」などは、或る「暗喩」になっていると思うが、深くは詮索するまい。
この詩を題名にしたからには、作者にとって或る意味があるのであろう。

以下、短い詩を三つほど引いて終りにしたい。

          鏡 の 中 に

     偽りで飾ろうとする
     哀しい自信があって
     後ろに鏡を引きずる

     人は矢印に従って
     歩かねばならないと
     誰が決めたのだろう

     区切られた道を
     歩かなければならない

     遠いところから
     見極めることの難しさ
     そう
     外出着にも着替えねばならない

     その時
     鏡の中を
     一瞬に駆け抜ける    
     野の馬
     乱反射の光が動き

     やはり
     そこに虚飾に身を包む
     私がいる


          乱 反 射 し て

     何かが走る
     鏡の中だ

     三面鏡の端から
     縞馬のように
     駆け抜けていく

     触れようとする
     伸ばした掌は
     春の朝のもやの中で
     ゆらりと揺れて

     所在気なく積まれた時が
     籾がらのように降りかかる

     気がつくと傾斜の窓から
     遠い日が
     きりきり輪を描いて去っていく

     まんだらに引かれた線の具合
     陰と陽と
     遠ざかっていくのは
     やはり縞馬の群れか


        蟻 1

     白いタイルの上を
     蟻が歩いている
     見つけては潰している
     潰されるためら毎日
     蟻がやってくる

     まいにち潰しながら
     蟻の情報網がどうなっているのか
     首をかしげている

     蟻はなおもやってくる
     今頃 蟻を見ると
     私は逃げだしたくなる



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