FC2ブログ
K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
202007<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>202009
さわさわとレタスを洗う私を洗う・・・・・・・・・・・・・・・岩根彰子
アンソロジー

──新・読書ノート──

      さわさわとレタスを洗う私を洗う・・・・・・・・・・・・・・・岩根彰子

ネット上のお付き合いの出来た岩根彰子さんから、彼女の所属する川柳の勉強会「つづきの会」の九人によるアンソロジー集が届いた。
掲出の画像が、それ。 ひとり30句づつ作品が載っている。プラス各人1ページづつのコメントの散文がついている。
先ずは、進呈者である岩根彰子さんの作品を引いておく。

        イースター島・・・・・・・・・・・・・・岩根彰子
     
     遠い日がちょこんと座る地下出口

     冬木立まあるい線にならはった

     金木犀ビビアンリーのハイヒール

     竜胆の声に変えたのアナウンス

     鴨川にビックリ水を差して秋

     キャンデーの棒は只今瞑想中

     神さまが遊び疲れてそのままに

     知ったかぶりを素うどんにかける

     シナモンの薫りに通過駅がある

     あぶらあげあるとあんしんしてしまう

     折り畳み椅子と尻尾を持ち歩く

     コスモスが死んでしまった金属音

     迷走が続く秋日のトコロテン

     妹に続いて姉も出奔す

     陽炎やこの鈎爪は鈎爪は

     鳩尾のペットボトルは火焔土器

     悪運は納豆菌で封鎖せよ

     照る日曇る日辛み大根を洗う

     胸の茗荷の湿り具合に手を添える

     さわさわとレタスを洗う私を洗う

     茘枝割る鑑真和上立ち上がる
   
     モロッコ豆弾けるメケメケを唄う

     氏素性前へ前へや加茂の茄子

     真実ではないわドリアンが喚く

     じゃが芋の花自転車四人乗り

     靴底は口約束を撒き散らす

     モンローが片足上げる赤い椅子

     来年はもっと頑固になるタワシ

     どぶ板は絶対音感持っている

     横抱きのモアイと舞台中央に

岩根さんの作品には海外の地名などが頻りに出てくるので、恐らく彼女は海外旅行が好きだ、と私は睨んでいる。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
川柳

この「つづきの会」というのは著名な現代川柳作家である石田柊馬氏を師匠としての勉強会らしい。
実は、以前に所属していた同人誌に俳句や川柳の作家が居られて、深い付き合いはなかったが、その縁で「岡井省二」氏や「樋口由紀子」などを知った。
掲出した本は2000年に出たアンソロジーで、その中に石田柊馬氏も参加されている。
今回、改めて書架から、この本を引っ張り出してみた。 すっかり忘れていたが石田柊馬氏は京都市内にお住まいなのであった。
あれから、もう十年以上も経ってしまったことになる。
この本の巻頭に俳人・岡井省二の句が載っている。

       ミナカテルラ・・・・・・・・・・岡井省二

     天動なら頭のぺこぺこさはつてみい

     第三の眼(まなこ)第三の男の目

     穴九つもぐさの煙でいぶしこめ

     f分の1がぐらつく仙骨だ

     匍(は)ふかかたまるかはてミナカテルラ

懐かしい省二節だが、この頃、彼はガンの再発の末期症状の出ていた頃で、痛みを灸などで抑えていたので、句にもそんな描写がある。
彼のこの句からしてナンセンス句である。まもなく氏は亡くなった。そして彼の育てた結社は、四散した。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今回の、このアンソロジーに石田柊馬氏の作品も載るので、少し引いておく。 達者なものである。

     高齢者と呼ばれナスカの地上絵よ・・・・・・・・・・石田柊馬

     老い見えて麩でないような麩のような

     電柱よあんたも後期高齢者

     桃の季の将校達とおぼしめせ

     ラー油などかけてじわしけわいたぶって

     平和寮いまも昭和の四肢絡ませ

     発禁書買いに昭和へ行ったまま

     カイカーンと叫んで竿竹は倒れ

     コピペする度四角になるみかん

     コーランが長閑にながれている子宮

石田柊馬の句は、昔も今も極めてエロチックである。そして、さりげなく「暗喩」がちりばめてある。
例えば「桃の季の将校達」とか「平和寮いまも昭和の四肢絡ませ」「発禁書買いに昭和へ」「カイカーンと叫んで竿竹は倒れ」とかは、みな暗喩になっている。
師匠、健在なり!というところである。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
アンソロジーに載る他の作者の作品も少しひいておく。

     飽食時代はパンダに麻酔・・・・・・・・・・・S・キャップ

     ふふふの麩屋に張り子のラッパふらり

     ベクレルもビリケンも百物語

     銀河系までアルミニュームの螺旋

     老斑のゆらりと赤い実になるよ・・・・・・・・・・つじ きくこ

     雪の空見つめ快楽の木の上

     絹の靴下首都高速の記憶

     市場支店の出口こまった矢印

     襖いちまい四角い月の残響や

     通りゃんせ女九十は馬の耳

     底辺のキツネうどんの三拍子

     天平と今日のさかい目鹿の尻・・・・・・・・・・久恒邦子

     クラインの壺にゾロリと昨日

     後輩は堀川ごんぼの空気穴

     発情期いつだったかナ握り飯

     一一九 ムンクの木目破水した

     煮凝りの目玉ぬるりと創世記

     くちびるがおしよせてくる昼下がり

     おんな去る生キャラメルがへばりつく

     車座のまんなかに置く尖ったの・・・・・・・・・・内田真理子

     てのひらでなじませてからなしくずし

     春泥ふかくエゴンシーレの肋

     夏夕空 差出人の名の向こう

     枯野を纏うラフマニノフの大きな手

     ひらなかにして喰ってみるまんじゆしゃげ

     どれが垢どれがくさびらクラビクラ・・・・・・・・・・環

     脱臼のしどころしどろもどろどろ

     冷蔵庫開けたまま光悦のI

     あいこくふじんかいろはにほんとうふ

     エーゲ海一気に盥干すべきか

     もうもう会花子モモ剥いて

     すこんぶすこんぶトルファンの靴はいて

     ハーレーダビッドソンいちまい貝殻骨二枚

     鳥交るピチュマチュピチュッチュそらええわ・・・・・・・・・・中山一新

     ゆ の富士へマカロニほうれんそう

     圧倒的な安さダビデのおちんちん

     万金丹やってみなはれ六次元

     ナプキンになおこーらって刷らないで

     桜ではないかバナナの顔をして

     五七五自動製作機売り切れ御免

     症状はでない 菊の御紋の16

     一夜干し母のパジャマから寝言・・・・・・・・・・中村せつこ

     国交省へタキイの種が零れだす

     息はまだ少し余裕で旅鞄

     校倉の隙間 天女の高鼾

     西瓜8と1/2をたしかめ算

     大納言小豆豊作小倉庵腰痛
------------------------------------------------------------------------
「現代川柳」は、とかくナンセンスに満ちている。 「意味」を辿っては、いけない。
「風刺」と「笑止」と「エロス」が満載である。
この中に「時実新子」教室から出発したという人が居るが、私は時実新子の句が好きで、このブログでも何度も採り上げてきた。
中でも

      愛咬やはるかはるかにさくら散る・・・・・・・・・・・時実新子

が好きである。 もうじきに、そんな季節が巡ってくる。

新潮
話の順序として、実作者としても昔の「古典」と言われるもの、或いは「近代」と言われるものを勉強してもらいたい。
そんな点から、ここに掲出した1993年(平成5年)に出た「新潮」別冊のアンソロジーなどもあることを知ってもらいたい。
以前は出版界もまだまだ元気で、こういう文芸のジャンルを超えた企画もなされていたのである。
俳句・川柳も今や「趣味」「ホビー」と捉えられ、作者たちも、それに甘んじているようだが、それでは志が小さい。志は大きく「文学」「文芸」を名乗ってほしい。
このアンソロジーは、その一年に刊行された話題作を一冊だけ取り上げることになっているので、多少の差しさわり、不都合が生じているが、
川柳では昭和38年に時実新子『句集・新子』が、平成元年に大西泰世『句集・世紀末の小町』が、平成4年に倉本朝世『あざみ通信』が収録されている。
勉強材料として、ご参考までに挙げておく。

今日は、いいアンソロジーをいただいて有難うございました。 堪能しました。
そして、かっての「付き合い」を思い出しております。 では、また。

     
コメント
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012/03/21(水) 19:24:32 | | # [ 編集 ]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
copyright © 2020 Powered By FC2ブログ allrights reserved.