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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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小池光『うたの人物記』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
小池光

──新・読書ノート──

     小池光『うたの人物記』・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
             ・・・・・・・・角川・短歌ライブラリー2012/02/25刊・・・・・・

この本は小池光のものだが、「うた」──短歌に詠まれた歌を渉猟してエッセイに仕立てたもので、東北大学理学部大学院出身という理系の人らしく分析的である。
しかも「読書人」いわゆるディレッタントとしての面目躍如という面白い本。 私の大好きな作りである。
こういう手法は、大岡信や岡井隆なんかが多用するもので、一首の歌が作られる背景やエピソードを探し出してあり、興味が尽きない。
たくさんの歌にまつわるエピソードがあるが、その中に下記のような一篇がある。

   ミトコンドリア・イヴを語りて行く道の
        畦道暗し萱草の道・・・・・・・・・・永田和宏
『荒神』

ヒトの細胞の中にミトコンドリアという小器官がある。エネルギ—の代謝に関わり、一
個の細胞に千個ばかりも入っている。
卵細胞にはミトコンドリアはすでにいっばいある。ところが精子は、ほとんどこれを含
まない。したがってミトコンドリアのDNAはすべて母方から渡される。父と母から半分
ずつ血を受け継いで…という神話はミトコンドリアについては成り立たない。
母が同じなら父がどこの馬の骨であろうとミトコンドリアDNAの配列はみな同じ。そ
の母は、また母の母からその情報を受け、その母の母は、母の母の母からそれを受け、と
女系がどんどん辿れる。一方、DNAは常に突然変異する確率にさらされているから、現
存するヒトのミトコンドリアDNAの差異を調査、分析すれば、祖型のDNAが推定でき
るはずだ。その結果は人を驚かせるものになった。なんと、いま地球上に跋扈する六十億
人は、白人も黒人もわれわれ日本人もすベて一人の女性の子孫である。人類みな兄弟とい
うのは文字通りそうなのだ。
この女性に与えられた名称がミトコンドリアイヴ。もちろんアダムとイヴのバリエーシ
ョン。神話がすべてこの世のはじまりを語り、われわれがどこから来たかを語るものであ
れば、ミトコンドリアイヴの物語は近代科学技術文明が創り出したひとつの神話であり、
彼女の名は現代が生んだ神の名ということもできよう。
その神はいまから約十五万年前、東アフリカの小さな村に、まぶしく天を見上げて、い
た。自分が十五万年ののち人類すベての母になるなどいささかも思わずに。彼女のほかに
もむろん女性はいたが、それらの子孫は途中でみな絶えて、いまミトコンドリアイヴの末
裔だけが、それぞれさまざま多種多様な変貌を遂げて、地球上にくまなく分布、棲息しつ
つ、殺したり、殺されたり、している。
ヨ—口ッパ人はすべて、イヴの子孫の七人の娘を祖先とするという。日本人の九十五%
は、別の時期に分離した九人の娘の子孫であるという。『イヴの七人の娘たち』の著者で
遺伝科学者のブライアン•サイクスは翻訳者と協同してこの九人に名前を付けた。曰くア
イ、ネネ、ユミ、イナ、フフェイ、ガイア、チエ、サチ、エミコ。このネーミング、まこ
とに趣味が悪い。歌の作者は知られた分子生物学者。学生たちとミトコンドリアイヴの話
をして歩く。本当かしら、本当らしいね、でもそれがぜんたいどうしたというのだろう。
夜道はいつも畦道で、萱草の花がしろくぽんやり灯っているばかり。
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永田和宏というのは、← こんな人である。
このブログでも採り上げたことがある。
この本には、たくさんの人物と歌が採り上げられている。 ご一読を、お勧めする。

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