FC2ブログ
K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
202001<<1234567891011121314151617181920212223242526272829>>202003
短歌誌「晶」79号から山本登志枝、村島典子、高旨清美の歌・・・・・・・・木村草弥
晶

──新・読書ノート──

   短歌誌「晶」79号から山本登志枝、村島典子、高旨清美の歌・・・・・・・・木村草弥   

         栞・・・・・・・・・・・・・・山本登志枝

   いくたびも燕の低くよぎりゆく降りみ降らずみの小雨ふる道
   脚立に座り丁寧に鋏を入れてをり亡き父ににる老いし庭師は
   ロンサム・ジョージといふゾウガメの死亡記事読めば南の海光さし来
   夜間飛行の音がしてゐる星のなかリオデジャネイロまで行くにあらむか
   捨て台詞のこしその場を去りてきてあかとき闇のなかに覚めたり
   樹々の葉のあひより漏るる灯りあり黒南風の吹く夜は更けつつ
   面影を忘るるまでに時たたば分かることなどあるかも知れず
   相続人が行方不明といふ廃屋 草 はえてゐる屋根も二階も
   聖フランンスコに会ひしことのあるならむ恐るることなく寄りくる雀
   明日の車中に読まうと栞挿みたり遠く銀河のきらめけるころ
            ※
   せせらぎをききつつ行けば道の辺に「栢の森」といふ停留所あり
   飛鳥川は男の注連縄が やや行けば女の注連縄が高々張られて
   イタドリやスカンポなどと教はりて飛鳥の里の奧へとゆけり
   二百段上れば会へる川上坐宇須多岐比賣命に
   雨乞ふと皇女祈りしところといふ岩がありたり飛鳥川辺に
   奥飛鳥の夜闇は蛙の鳴くこゑす一つ二つと星も見えつつ
   宿の部屋「人鹿」の名札に子蛙の止まりゐるのもかりそめならず
   無患子の神樹のもとを風かよひ裳裾吹かるるとき世にさそふ
   み社の風きよければ神々はいますと思ふ憂きこの世にも
   神の使ひなのかもしれず境内にひかりまとひて這へるくちなは

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

        うりずんの島・・・・・・・・・・・・・村島典子

   にほてるや琵琶の真清水ゆく春の水面の鳥と別れきにけり
        四月六日、娘家族の住む沖綞、渡嘉敷島に渡る。渡嘉敷島は、先の戦争において
          昭和二十年三月二十八日村民集団自決を強ひらる。死者三百数十名。

   港にて迎へくれしは少年の日焼けせし顔釣果をほこる
   ミ—バイとフエフキダイとグルクンと貝のいろいろ大漁なりき
   大潮の干潟をあるく潮干狩る島人たちの後ろをあるく
   浜下りとふ言葉すずしき琉球のをみなの春のうりずんの海
   潮溜りの珊瑚の淵に身をかがめ小さき魚の遊ぶを見たり
   アバサ—のひとつにやあらむ細き淵往き来するみゆ泳者のごとし
           *アバサ—はハリセンボン
   グスク島へ干潟をあるく満潮の波あとしるき島のすそまで
   拝所をいただきに秘む城山自決こばみし人ら籠りし
   生れ島を山よりのぞみ隠れすむいくさ世あはれいのちなりけり
   潮引けば道のあらはる城山を下りきたりし帽子の女
   畑なかに島人立ちて遠くから吾を見つめゐる穴のあくほど
   客人のわれと思へりちかぢかとオバア寄りくるしげしげ見らる
   若いさ—姉妹かね—と会ふごと言はるわれと娘と
   沖縄人の妻となりたるわれの子の三弦弾くに涙こぼるる
   軍備なき国でありしを戦争のもつとも酷きいけにへの島
   刀でなく三弦床に飾られし戦をいとふ国人なれば
   山中にケラマツツジの残ん花火花と呼ばるてんてんと咲く
   大ススキ子らの丈ほど繁るかな案内されをり海見ゆるまで
   ハブの味ウミへビの味山羊の味海人のこどもの語るは愉し
   魚のまなこ取り合ひ喰らふ二人子はキジムナ—ぞな樹を揺さぶれり
   島にノロ、われに孫あり平成のこの渡嘉敷に三晚いねけり
   潮騒をききつつ眠る波音ははるけき母の血のひびきせり
   窓辺まで潮満ち来らし明けたれば船出せむかも旅人なれば
   ツツドリと人の告ぐれど時鳥きよきよきよと三度鳴きたり
   朝戸出の人ならなくにホトトギス啼く島山を船出せむかも
   首里城ををみな三世めぐりたり琉球の血を継ぐわが女童は
   井泉は涸れてあれども滴々としたたりやまず時は斎庭に
   龍潭の池にバリケンあまた棲み雛したがふを子とわれと見つ
   帰りくれば花らんまんの近江なりたつた四日の旅にしあれど
   犬とゆく山の明るし山桜こずゑにあふる数かぎりなし
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

       猫友だち・・・・・・・・・・・・・高旨清美

   白合歓と思ひゐし樹にこの夕べうす紅帯ぶる花のひらけり
   新宿の雑踏の中を飛びてゐるイトトンボますぐに帰れ水辺へ
   ひとり暮らしを訪ね歩くとNPO法人のひとわがべルを押す
   斑陽のこぼるる松の林より海見むと乗る一両電車
   七月の盆に入る日ぞ花店に仏花選りゐる初老の男
   あれこれと花苗買ひし夕暮れにそつとおまけをくれたる店主
   チョコレ—トコスモスほのかにチヨコの香を醸せり都市のうす夕闇に
   呼吸するもの生臭し夏の花活けたる花瓶の水捨てにゆく
   アランの『幸福論』なども本棚にありてひたむきなりし若き日
   とほき日に読みし『聖母の軽業師』ひらきぬけふは寓話欲しくて
   あまたなる時間封じて積まれゐき納戸の奥の音楽テ—プ
   山なせる録音テ—プのいづこにかひそまむ銀パリに聴きしシヤンソン
   この世のこと知らで聴きたり銀パリのかたき椅子に身じろぎもせず
   ウェーベルンの楽にシャンソン重なりて混沌としたテープ再生す
   工事音窓より入り来て「幸せを売る男」をかき消してゆく
   ボワイエの鼻音のよろし梅雨ぐもる夕べに聴けるLPレコ—ド
   それぞれの贔屓を自慢しあひつつわれら猫にて結ばれてをり
   友だちは猫友だちに限るねと猫引き寄せるきみは人ぎらひ
   君の猫と我の猫とが真夏の夜ゆめのやうなる宴ひらかむ
   オッド・アイの白猫われの亡き猫に似たれば路地に足をとめをり

----------------------------------------------------------------------------
山本さんの歌は、時事の報道を耳にしたぞうがめの死とか相続人の行方不明とかを巧みに歌にされた。
後段は「飛鳥」の今昔を行き交って秀逸である。

村島さんは、娘さんが沖縄のウチナンチュと結婚されたらしく、かの地の血を引く孫がお出来になったようで、
また<若いさ—姉妹かね—と会ふごと言はるわれと娘と>という歌のように、ご満悦のご様子であり、南国に遊んで心身ともにリフレッシュされたようで、喜びたい。

高旨さんは、無類の猫好きとして知られているが、今回も猫を媒体として、古今を飛翔して都会の哀歓を詠んで、読者を引き付ける。
いずれも長年の歌作りの「手練れ」の才(ざえ)が見事である。
ご恵贈に感謝して、筆を擱く。 なお、ルビは都合で省略したので、よろしく。

(お断わり)本文はスキャナで取り込んだので、どうしても「文字化け」が生じる。子細に修正したが、まだあればお知らせ下さい。 訂正します。



コメント
コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
copyright © 2020 Powered By FC2ブログ allrights reserved.