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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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あの夏の数かぎりなきそしてまた たつた一つの表情をせよ・・・・・・・・・・・・小野茂樹
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    あの夏の数かぎりなきそしてまた
       たつた一つの表情をせよ・・・・・・・・・・・・小野茂樹


過ぎ去った二人の輝かしい夏、あのとき君の表情は、一瞬一瞬変化する輝きそのものだった。
変化に満ちた数かぎりない表情、そして、また、そのすべてが君の唯一の表情に他ならなかった、あの夏の、あの豊かさの極みの表情をせよ、と。
恋人の「数かぎりなき」表情が、同時に「たった一つの」表情であるという「発見」に、この歌の要があることはもちろん、この発見は理屈ではない。
青年の憧れと孤愁も、そこには織り込まれて、心理的陰影が色濃く反映されている。

この歌および小野茂樹については短歌結社「地中海」誌上および「座右の歌」という短文に詳しく書いたことがある。

それを読んでもらえば私の鑑賞を十全に理解してもらえると思うが、ここでも少し書き加えておきたい。
小野茂樹は昭和11年東京生まれ。
河出書房新社の優れた編集者として活躍していたが、新鋭歌人としても将来性を嘱望されていたが、
昭和45年、退社して自宅に戻るべく拾ったタクシーの交通事故に巻き込まれ、あたら30有余歳の若さで急死した。
夫人の小野雅子さんは私も面識があり、原稿依頼もして頂いた仲である。
茂樹と雅子さんは、東京教育大学の付属中学校以来の同級生の間柄で、お互いに他の人と結婚したが、うまく行かず、
たまたま再会して、お互いの恋心に気づき、その結婚を放棄して、初恋の人と再婚した、というドラマチックな経過を辿っている。
それらのことについても、上記の私の「座右の歌」という文章にも書いておいた。
この歌は昭和43年刊の第一歌集『羊雲離散』所載である。

「座右の歌」という文章を読めば判る、というのでは、そっけないので、少し歌を引く。

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ひつじ雲それぞれが照りと陰をもち西よりわれの胸に連なる・・・・・・・・・・・・・・・・小野茂樹

五線紙にのりさうだなと聞いてゐる遠い電話に弾むきみの声

強ひて抱けばわが背を撲ちて弾みたる拳をもてり燃え来る美し

くぐり戸は夜の封蝋をひらくごとし先立ちてきみの入りゆくとき

いつしんに木苺の実を食らふとき刻々ととほき東京ほろぶ

かの村や水きよらかに日ざし濃く疎開児童にむごき人々

ともしびはかすかに匂ひみどり児のねむり夢なきかたはらに澄む

くさむらへ草の影射す日のひかりとほからず死はすべてとならむ

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愛しあう若者のしぐさなども、さりげなく詠まれている。それに学童疎開の経験が彼の心に「苦い記憶」として刻まれていた歌が、いくつかある。
引用した一番あとの歌のように、彼の歌には「孤愁」とも言うべき寂しさがあり、私は、それが彼の死の予感みたいなものではなかったか、と思う。
これについて「座右の歌」には詳しく書いてある。
ぜひ「座右の歌」という私の文章にアクセスして読んで、十全に鑑賞してほしい。
ここにリンクにしたのは「原文」であり、このHPの文章には、いくつか誤植があるので了承いただきたい。
なお、彼の歌に詠まれる夫人は小野雅子さんというが、昨年夏に東京で開いてもらった私の第五歌集『昭和』を読む会には、ご出席いただいた。

このほど第四歌集『白梅』を出版されたが、その記事は6/8付けに載せた。ここに載せた文章では誤植は極力なおしたので書き添えておく。
感謝して、ここに書いておく。


コメント
コメント
うっとりとして
    Sohyaさま

 小野茂樹さんは全く存じ上げませんでした。
でも先生のお書きになられた「座右の歌」を読ませて戴き、
この作家の凄さと、いとおしさが伝わり、
完全に得心出来ました。まるで中里恒子の「花筐」を、
じっくりと読み進めている錯覚でした。
稀有な詩魂があったのでしょう。
先生に、勉強させて戴く一方を感謝して!
2013/06/11(火) 16:44:37 | URL | 硯水亭歳時記 #xxIaUQbE [ 編集 ]
「座右の歌─小野茂樹」は6/8の文章のリンクのものが正確です
■松本さま。
お早うございます。
お読みいただいて有難うございます。
文中にも書いてありますが、
「座右の歌─小野茂樹」は6/8の文章のリンクのものが正確です。
奥さんの小野雅子さんの歌集評の部分と一緒に読んでください。
世の中には、いろいろと才能のある偉い人が居るのです。
松本氏も、そのうちのお一人です。
では、また。
2013/06/12(水) 04:33:22 | URL | sohya #- [ 編集 ]
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