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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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「嶽 温 泉」20首・・・・・・・・・・・・・武藤ゆかり
りいふ

──新・読書ノート──

     「嶽 温 泉」20首・・・・・・・・・・・・・武藤ゆかり
              ・・・・・三井修発行「りいふ」第8号 2013/03 所載・・・・・

  甘きこと至福千年続くべし風に吹かれてかじる嶽きみ

  もぎたてのりんご一袋百五十円の直売所より望む冠雪

  もみじする裾と真白き頂と山にふたつの季節ありたり

  鳥の声遠く近くに響きおり川は鏡となりてひそけし

  枯れ草に卵を産んだふりをして飛んでは戻る雀なのだよ

  ゆるやかな林道のぼる嶽(だけ)温泉やらいの雨に紅葉濡れつつ

  硫黄の香小雨まじりに立ちこめる高原の宿山楽(さんらく)晩秋

  落ちのびて海を渡りし義経にたまゆら和む心せつなし

  いつよりかあそべの森を震わせる滅びし民の低き角笛

  おいで風おいで霧雨お岩木の白く凍える鳥の海から

  野天風呂すこし離れたところまで宿のあるじとくだる細道

  色づいた柏の木から橅(ぶな)の木へほんのり灯る裸電球

  落ちそうで落ちぬ木の葉が一万枚湯舟の上に鳴っているなり

  混浴といえど今夜は二人きり陸奥は津軽の秋の終わりに

  飛沫熱し顔ものぼせる源泉の濁りの底の暖流寒流

  豊かなる百人風呂よ衝立(ついたて)の向こうの人も言葉少なく

  北辰を探せば弧峰くろぐろと星の巡りを光背として

  いにしえの縄文人の聴覚に水ゆく魚も歌ういきもの

  割れた海砕けた山の傷口も月の光にふさがれてゆく

残されてうろつく犬や見捨てられた痩せた牛に代わって歌いたい。奇形たんぽぽや
耳なしうさぎに代わって歌いたい。基準値を超えたアイナメやシイタケに代わって歌い
たい。ああ、私たちに一体何が起こったんだろう。もう農業ができないと言って首を吊
った人がいた。お墓に逃げますと言って亡くなった人もいた。正しく怖がることなど誰
にもできはしない。歌を歌わずに消えていった全てのものに愛を。そしてあの日を忘れ
たがっている私たち全てに愛を。
 
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作品あとのミニエッセイのテーマは「誰かに成り代わって歌うとしたら・・・・・」ということである。

脚注として少し補足しておく。
「嶽温泉」とは青森県弘前市郊外の古い温泉場
*「嶽きみ」とは当地特産のトウモロコシの名前
*「野天風呂」は混浴だという
*「割れた海砕けた山の傷口も」のフレーズに先の大地震、大津波を詠っている

武藤さんのことは先にも採り上げたことがある。
新聞記者だった武藤さんらしく時事的なことも歌にして、鋭い。
私の歌集『昭和』についても、精細な批評を賜った。ここに改めて感謝の意を表しておく。


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