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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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「宮崎信義を偲ぶ会」─2009/02/21・・・・・・・・木村草弥
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 ゆすぶってやれゆすぶってやれ
   木だって人間だって青い風が好きだ・・・・・・・・・宮崎信義


自由律の「新短歌」のトップリーダーだった宮崎信義が2009/01/02に97歳で死んだ。
その「偲ぶ会」が02/21に京都・二条の京都弥生会館で開催され約70人の参会を得た。
私も一時、「新短歌」に席を置いた者として参列した。

掲出した歌と画像は、彦根城内の金亀公園に建つ宮崎信義の歌碑である。
宮崎信義には他に、あと二つ歌碑がある。先に、それを引いておく。

 ここにこうしているのが不思議な気がする
    いなくなっても変わるまい
 ──妙心寺・如是院(京都)──

 山が描(か)けるか風や水が描(えが)けるか
    あと一日で春になる
 ──山越・印空寺(京都)──

宮崎信義は明治45年2月24日に滋賀県坂田郡息長村の母の生家で生まれる。
父・末吉、母・きみ の長男。二歳のとき警察官(滋賀県・巡査部長)だった父が37歳で殉職。
以後、外祖父の家で数年を過す。
晩学して教職に就いた母に従って各地の小学校に転校。県立彦根中学校では野球をやる。
最終学歴は横浜専門学校(現・神奈川大学)、国鉄に就職。

第二次大戦中は兵士として中国戦線に従軍。戦時詠に優れたものがある。

 土煙を被ると土の匂ひがぷんぷんする
   鋭くあたる敵弾の音をきいてゐる
────『夏雲』より

 ぐるぐるねぢて手を切つてゆく
    たたくやうに戦友の手を切つてゆく


  爆弾にびりびり地がゆれる
    目をあけると右前に微かにゆれてゐるすみれ


昭和42年神戸駅長を最後に国鉄を退き、京都駅観光デパート、中井産業取締役などの仕事の後、70歳ですべての職を辞す。

昭和6年、平井乙麿の勧めで前田夕暮「詩歌」の会員になる。
矢代東村選で「詩歌」に初めて五首の短歌が掲載される。

 九月の朝の太陽が生きることの歓びを味はせて
     黒光りにみがかれた靴
 

 ああ明るいほがらかな人生が私を招いて
     ベンチレーターが朝風に
 

これらの歌は、前田夕暮ばりの自然主義風の歌いぶりである。
その後の戦前の若い時の作品は、モダニズムっぽい、きらきらした才気に満ちたものが多い。
少し引いてみよう。

 トマトのやうな少年と歯をみがきながら
      十月の朝を味覚してゐる
 ─────第一歌集『流域』より

 海港"Empress of Canada"に展く窓 
      タイプライターがAmerica Americaを打ち続ける


 舗道にハンカチが落ちてゐた
      領事館には三色旗がはためいてゐる


 窓にしろいパイロットボートがゆれてゐる
      洗面室のタイルの冷たさ


 アカシヤの舗道のはては港 黄昏 
      山手からシェパードを連れて散歩に来る


 蜻蛉の眼球 白いタイルの手術室 
      つめたい速度 電話がよくかかつてくる


 鳩がハンカチのやうに舞ひおりる 
      貝殻の耳が伸びる海辺と透明な花瓶の周囲


 薄明を水にくぐつてひとりのをんなが女になる 
      体温の秘密に月がのぼる


 夜明け 肺胞が透明になり 
      谷底で急行列車が青い種族に変つていつた


 貨車にくろぐろと石炭がかがやく 
      空は葡萄園の上で青の焔になつてゐる


  港は白い服で埋まつてゐる 
  智慧ぶかい英国旗(ユニオンジャック) ひとりの青い服は僕らしい


  ひときれの厚い肉を焼きアスパラを切り 
       コーナー 一ぱいの球を投げる


 あなたはレモン 
      愛がめばえるまで澄んだ眼を湖にむけてゐる


 児よ 陽のやうに匂やかな華であれ 
      ときの間 地は傾いてあかいのだ


 児よ 指さすと地は陽の色にそまり 
      草木は矢のやうに晴天を過ぎる


終りの二首は「長男誕生」と題する昭和16年の作品である。
昭和18年8月、召集令状を受け中国戦線に従軍。

戦前戦後を通じて、80年間口語自由律短歌ひと筋に、その道を究める。
昭和24年「新短歌」誌を創刊し、50年間、京都で編集発行を続ける。
平成14年、90歳の時、「新短歌」を「未来山脈」に統合して光本恵子に託す。
歌集・『流域』『夏雲』『交差路』『急行列車』『和風土』『梅花忌』『和風土』『二月の火』『太陽は今』『地に長く』『千年』『山や野や川』『右手左手』『宮崎信義作品集』など。
年譜などについては『宮崎信義作品集』が詳しいが固有名詞などについては錯覚による間違いがあるようだ。
以下、少し作品を引く。

 叡山も鴨川も何万年何十万年が経っていよう 人は何年──『千年』より

 知っといてくれこの九十の爺(じじい)にも父母があり祖父母もいた──『山や野や川』より

 青い静脈が目立つ腕だ私の体どこから燃え出すか──『右手左手』より

 炎が全身に廻ったその中でまだ顔だけが浮いている

 うすい煙が煙突から上がりだしたいま私が焼かれている

 これからは年をとらない一人の旅か会いたい人に会えるだろうか

 白い骨になった脚の骨は意外な逞しさ九十五年を生きてきた

 骨壷に入って家へ帰ってきた静かに経を読むのは私である

 いつまで生きていられるか手足を広げて日光浴だ──絶筆「未来山脈」誌2009/1月号

 いきるのも死ぬのももうお任せだ神さま仏さまでお決めください

 生きていようが死んでいようがどちらでもよくなったよいお天気だ

 自然はすべてを引き受けてくれるそのままに何事もなかったように

 ふるさとの自然に還る──それが何より 生まれ育ったところなのだ  
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「新短歌」に宮崎信義から勧められて約20回くらい読みきりで詩歌に関する記事(2ページくらい)を連載したことがあるが、いま手元にないので確認出来ない。
私自身は、自由詩から出発したので、宮崎の戦前の歌集『流域』の作品が好きである。
ここにも、いくつか好きなものを挙げた。
戦地詠としては第二歌集『夏雲』にすばらしい臨場感あふれる秀作がある。
これらのいくつかは昭和54年、NHKテレビで放映され全国の人々に感銘を与えた。
人の加齢というものは年月が否応なく体を後ろから押して老いてゆくものであり、齢を重ねているというだけが尊いのではない。齢を重ねても気持が若々しく、精神が柔軟性に満ちている老人こそ尊ばれなければならない。
その意味で晩年の時期は別として宮崎信義の老いの生き方は、自分の老いを他人に押し付けるのではなく、若い人を立てて立派だった。
こんな歌を『右手左手』から引いて、この記事を閉じたい。

 百歳になるのがどんな意義があるのかと問う者がいる 私だよ

ここには強い「自恃」も見え、「頑固者」だった宮崎信義の一面をも、かいま見せる。   


コメント
コメント
いい歌歌ですね。口語自由律ですか。とても心を惹かれます。最期の歌歌、、わたしも達したい心境です。
もっと読みたい気がします。機会があったらまたご紹介ください。
2009/02/25(水) 18:27:39 | URL | いぶ #- [ 編集 ]
ご来訪とコメント有難うございます
■いぶ様。
お早うございます。
ご来訪とコメント有難うございます。
ご覧いただいたら判りますが私は詩歌とも
定型、非定型とも自由に作っています。
ただ俳句は鑑賞はしますが実作者ではありません。
あなたのサイトはリンクに貼って訪問いたしますので、
よろしくお願いします。
では、また。
2009/02/26(木) 07:58:03 | URL | sohya #- [ 編集 ]
いぶ様。あなたのURLが判りません
(追伸)
■いぶ様。
あなたのURLが書いてあるものと思っていましたが
クリックしても出ません。
よろしければURLをお知らせください。
よろしく。
2009/02/26(木) 08:02:57 | URL | sohya #- [ 編集 ]
すみません、前回も書きましたが、わたしはURLは持っておりません。短歌俳句をかじっておりますが、このような、口語自由律の短歌ははじめてで、とても新鮮な感じがします。他にもこのような短歌を詠む歌人はいるのしょうか。無知をさらしますが。。
2009/02/26(木) 21:18:34 | URL | いぶ #- [ 編集 ]
今では定型の作者も自由律の歌を作ります
■いぶ様。
お早うございます。
「口語自由律」の歴史は、もう明治後期には作られています。
一番盛んになったのは昭和ひと桁から十年代に入った頃です。
今では「」俵万智」の口語歌集「サラダ記念日」のベストセラーを
きつかけにして、文語定型の歌人たちも盛んに口語の歌を詠む
ようになっています。
口語自由律専門の結社としては私の記事にも書いた「未来山脈」
の光本恵子、「芸術と自由」の梓志乃などが居ます。
いずれも私の親しい人たちです。この二人は60歳前後というところです。
また、お越しください。
2009/02/27(金) 07:47:20 | URL | sohya #- [ 編集 ]
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