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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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村島典子「蜻蛉の滝」32首・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
晶

──村島典子の歌──(16)

     村島典子「蜻蛉の滝」32首・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
              ・・・・・・・・「晶」83号2013.9所載・・・・・・・・・・

        蜻蛉の滝      村島典子

   ししくしろ春の熟睡(うまい)の只中へ人はきたりて犬を呼びをり
   すくすくと君は行きませ鳰鳥のかづく湖辺に立ちて送らむ
   今津より旅をして来しみづならむ岸辺うつ波はつなつの湖
   単純にわたしを糺す朝の野にはじめてのやうに陽がのぼりきて
   半世紀まへの少年かたはらにしやがめばはつかわれら羞ぢらふ
   語らはず交換せし本に挟まれし短き手紙中学時代の
   半世紀へだてはじめて聴く声のはや少年の声にはあらず
   野薔薇咲くゆふぐれあはき花あかりもう明日あたりあなたはゐない
   「西の魔女は死んだ」と指文字に記しおくべし朝の戸口に
   垂足三角形白紙(しらかみ)の上に作りをり鬱はもすこし去りたるけはひ
   体おもく沈むばかりの水中に右足そろり左足そろり
   棹若葉の木下待てば花しぐれさみどりの降る昼やはらかし
   信号の変りしみじかき時の間を去年逝きにし君が過れり
   鱗(いろこ)千まいしろく光らせわが厨に一尾の魚はまなこをあける
   いさきと言ふ美しき魚竜宮の物語せよ地上のひとに
             *
       野洲に平家終焉の地あり。平宗盛父子は嫌倉から京への移送の途次、
        この近江国篠原にて斬首され、首は京へ、胴のみここに埋葬されしとふ。

   生き恥も死に恥もさらしし宗盛の父子のねむれる胴塚に来つ
   工場の脇のをぐらき木叢なか胴塚はあり力ップ酒供ふ
   幽かなる父子の墓石しづもりぬ幻ならむ今生もまた
   首洗ひの池の伝承工場に埋め立てられて小さしあはれ
   見るべきほどのことは見つとし死の際に平家の末裔(すゑ)と言ひきりし父
   生きるとふさびしきことの願文のしろたへの布まきし狛犬
   八千矛の神の妻問ふ神語り思ひみるかな兵主(ひやうず)の斎庭に
   葦原の瑞穂のくにの野洲の田の早苗に神の風吹きわたる
   田植ばな空木のしろき花の山ゆきゆくパスは獣めきたり
   岩根(いはがね)のこごしき山にしづまります渡来の人の彫りし仏は
              *
   義経の逃げてきたりし西河(にじつこ)の山里ふかく滝の音せり
   半月の周期に水の顕れしといふ音無川の橋わたりけり
   音無川の川へそそぐと六月のみづは落下す蜻蛉の滝
   淹つぼの深くすずしき岩盤をうがちて夏のみづくだる見ゆ
   滝口に覗けばこの身誘はる落下するどき井光(ゐひか)なるベし
   たかおかみ滝のしぶきに清められ鎮められたりひとつ魂
   岩濡らしひかり曳くなり古代(いにしよ)ゆ岩を彫りつぐ清凉のみづ
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「晶」83号が送られてきた。
敬愛する村島典子さんの新作が載っている。
いつもながら、心に深く沁みる歌群である。 鑑賞されたい。

(お断り)
歌の部分はスキャナで取り込んだので、どうしても多くの「文字化け」が生じる。子細に修正したが、まだあれば指摘されたい。すぐに直します。


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