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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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やまもとあつこ詩集『ぐーらん ぐー』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
やまもとあつこ

──新・読書ノート──

      やまもとあつこ詩集『ぐーらん ぐー』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                ・・・・・・空とぶキリン社2013/10/30刊・・・・・・・

この詩集は、やまもとあつこさんの第三詩集になる。
やまもとさんは高階杞一さんの詩誌「ガーネット」の会員である。
今までに『子犬のしっぽをかみたくなった日』 『まじめなひび』の二冊の詩集を、いずれも「空とぶキリン社」から出している。
彼女の作風は、師匠の高階杞一さんに似て、平易な、メルヘン調の詩に終始している。
この詩集に収録されている詩「犬が」について、北爪満喜‏さんがツイッターに、こんな呟きをされている。 ↓

< 北爪満喜 ‏ 2011年7月11日 - 0:31
やまもとあつこさんの詩、「犬が」。もう胸がいっぱいになりました。
「いままでの犬が/みんな生き返って/六匹そろって/ならんだら」
「わたしに気づいたら」「まっすぐに 駆けてくる」のです。 >

高階杞一さんの「犬好き」は有名で、どの詩集にも犬が一杯出てくるが、やまもとさんも犬をたくさん飼って来られたようだ。
先ず、その作品を引いてみよう。

      犬が・・・・・・・・やまもとあつこ

   いままでの犬が
   みんな生き返って
   六匹そろって
   ならんだら

   「ごん」
   「ジョン」
   「ジョニー」
   「ジョリー」
   「きんとき」
   「ひめ」
   それと
   いま 生きている
   「こもも」
   みんなで七匹
   ならんだら

   どうしようか

   みんな
   いっぺんに
   わたしに気づいたら

   風をきって
   
   まっすぐに 駆けてくる
     駆けてくる

   駆けてくる

   わたしは
   なきながら
   振り向かずに
   逃げなければ
   ならない

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この作品は、以前「ガーネット」誌に載ったもので、それを見た北爪さんが、上記のツイートを呟かれたのであろう。

掲出した、この詩集の「帯」に

 < ぐーらん ぐーらん
   ぐーらん ぐー
   揺れながら過ぎていく時間。
   脱力系の詩人が読者を未知の場所へ連れて行く。 >

と書かれている。恐らく高階さんが書かれたキャプションだと思われるが、作者の詩の特徴を見事に捉えている。
「脱力系」の詩人とは、言い得て絶妙な評である。

この詩集には題名になった詩「ぐーらん ぐー」をはじめ全部で21篇の詩が収録されている。

     ふーっ・・・・・・・・・やまもとあつこ

   いいかんじだ

   こんなふうに

   はこばれていくんだ

   でこぼこではなく

   すいこまれていく

   からだがしみこむほうへ

   すこしずつ

   すこしずつ

   ちいさくなっていく

   うれしさ

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まさに「脱力系」という表現が、ぴったりの詩人だ。題名の「ふーっ」というのが、いい。

      夜・・・・・・・・・・やまもとあつこ

   細い虫の足になって

   ピアノの鍵盤を

   踏んでみる

   面積が違いすぎる

   と思ってはみるのだが

   力をこめて踏む

   そのことに集中して

   何度も踏みしめる

   それでも

   びくともしない白い床は

   動かないことの快感を

   夜の中に

   めざめさせていく

----------------------------------------------------------------------------------------
この詩は「虫の足」になりきって書かれている。
「脱力系」でありながら、かそかな「虫」になりきるところが優しい。

      快晴・・・・・・・・やまもとあつこ

   とびはねていくこころを
   つかまえようと
   からだが

      まえに

     まえに

   とびだすので
   あしがからだを
   おいかけて

      はしる

     はしる

    はしる

   だれがなんといったって

         はしる

        はしる

   そうしたら
   わたしたちのまえに
   モンシロチョウがあらわれて

        こころの

      まねを

   するんだ

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これも「なりかわり」の詩である。

「ひざの上」という作品があるが、これは先に引いた犬「こもも」のことが書いてある。
他にも、日曜日の公園で「はしる犬」などにも犬が登場する。


      この山は・・・・・・・・ やまもとあつこ


   登り坂ばかり
   ゆっくり
   歩く

   この山はずっと登りばかりだよ
   と
   聞いてはいたけど

   本当に
   登り坂ばかり
   ゆっくり ゆっくり

   歩く

   歩く

   5時間歩いて
   やっと出合えた
   平らな道
   からだはよろこんで
   前へ前へいくんだけれど
   足が登りの着地の場所に
   地面を求めるので
   思いちがいを正しながら

   一歩 一歩
   足が思うところよりも
   足を伸ばして
   着地していくことになる

   ぎこちないわたしの歩みは
   風に吹かれながら
   頂上直下のお花畑を
   すすんでいく

   ときどき
   雲のきれはしに包まれて
   からだを冷やしながら

   山

   ゆっくりではなく
   動いていく

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つい今しがた詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)に載った当該詩集の書評がネット上に出たので、ご覧いただきたい。

また「Poem & Gallery Cafe 中庭ノ空」にも書評が出たので紹介しておく。

五月に、同じ「空とぶキリン社」から原田亘子詩集『忘れてきた風の街』が出て、恵贈されて感想文を載せた。
原田さんの作品もメルヘン調の佳い詩だったが、今回も「脱力系」の作品に「未知の場所」に連れてきてもらった。
感謝して、ここに載せておくものである。 益々のご健詠を。


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