
つらら落つる朝の光のかがやきが
横ざまに薙(な)ぐ神経叢を・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
今年の冬は近年にない厳冬と言えるが、特に北国では1月、2月と厳しい寒さが訪れている。
今日は、「つらら」を詠んだ私の歌を載せた。この時期を逃すと、この歌を載せる機会を逸するからである。
歌に合わせて「つらら」の写真をお目にかける。「萱葺き屋根」から垂れるつららである。
この歌を作った頃、私の神経は異常にぴりぴりしていて、ナーヴァスになっていた。
なんとかして、この心理状態を歌にできないものか、といろいろ考えた末に出来たのが、この歌である。
私としては「つらら」という一風あやういものと「神経叢」との取り合わせが面白いと思ったのだが、発表したときの皆の反応は、良くなかった。
もう一つ判り難いというのだった。しかし私は敢えて歌集にも収録した。
日常ばかりを詠むのが歌ではないと考えたからである。いかがであろうか。
「氷柱」と書いて「つらら」と読む。水の滴りが寒気のもとで成長して凍ったもので寒い地域での冬の風物詩と言えるだろう。
以下、「つらら」を詠んだ句を引いて終る。
外に立ちて氷柱の我が家侘びしと見・・・・・・・・・・・・高浜虚子
みちのくの町はいぶせき氷柱かな・・・・・・・・・・・・山口青邨
氷柱落つ音に遅れて朝日来る・・・・・・・・・・・・篠田悌二郎
夕焼けてなほそだつなる氷柱かな・・・・・・・・・・・・中村汀女
いま落ちし氷柱が海に透けてをり・・・・・・・・・・・・橋本鶏二
巌つららぽつんと折れて柩通す・・・・・・・・・・・・岸田稚魚
大文字は好きな山なり草つらら・・・・・・・・・・・・波多野爽波
みちのくの星入り氷柱吾に呉れよ・・・・・・・・・・・・鷹羽狩行
人泊めて氷柱街道かがやけり・・・・・・・・・・・・黒田杏子
日に痩せて月に太りし氷柱かな・・・・・・・・・・・・上野泰
やがて日の雫はぐくむ草氷柱・・・・・・・・・・・・三田きえ子
後の世に逢はば二本の氷柱かな・・・・・・・・・・・・大木あまり
地上まであと一寸の氷柱かな・・・・・・・・・・・・荻原都美子
木曽は木の国木の樋に氷柱して・・・・・・・・・・・・小川原嘘師
後朝や草の氷柱の賑やかに・・・・・・・・・・・・市川葉
白鳥の嘴の垂氷のまだ落ちず・・・・・・・・・・・・加藤未英
軒氷柱ぐるりに垂るる宿に着く・・・・・・・・・・・・里川久美子
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