
杭いつぽん打ちこみをれば野の蕗が
杭の根もとに淡き香はなつ・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第三歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
この歌のつづきに
ほろ苦き野蕗の茎は蒼々と生味噌まぶせばはりはり旨し・・・・・・・・・木村草弥
という歌が載っているので、一体として鑑賞してもらいたい。
蕗(ふき)は本来、野生していたものを人間が栽培して野菜用に改良したものが出回っている。
写真は花のついた野蕗である。食用には花のつく前の新芽の茎を摘む。
新しい茎を採って売られているが、季節の味覚として、ちよっとほろ苦いところが美味なものである。

この蕗の新芽が写真②の「蕗のとう」である。
これは少し大きくなったもの。ほんの新芽は砲弾型している。
それは早春の野草狩で見られる。
これらの野生のものでなく山形県などでは、大型の2メートルにも達する蕗を栽培している。
いずれも茎だけを食用にする。
もっとも子供の頃は、このほろ苦さが嫌で、食べられなかったものである。いわば大人の味といえようか。
ここで写真③にフキノトウの芽だし直後の写真を出しておく。

蕗は俳句にも詠まれているので、それを少し引いて終る。
うすうすと日は空にあり蕗の原・・・・・・・・田村木国
あらはれて流るる蕗の広葉かな・・・・・・・・高野素十
蕗切つて煮るや蕗畠暮れにけり・・・・・・・・石田波郷
母の年越えて蕗煮るうすみどり・・・・・・・・細見綾子
風みどり母が蕗煮る時かけて・・・・・・・・古賀まり子
言ひ勝ちて妻ほきほきと蕗を折る・・・・・・・・庄中健吉
母とあれば風ゆづり合ふ蕗円葉・・・・・・・・神林信一
よろこびの淡くなりたり蕗茂る・・・・・・・・本宮銑太郎
きやらぶきを煮つめ短き四十代・・・・・・・・大島龍子
夜の蕗むく父母の墓ねむりをらむ・・・・・・・・寺島京子
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