
大いなる月の暈(かさ)ある夕べにて
梨の蕾は紅を刷きをり・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るものである。
写真は蕾でなく開いた梨の花だが、「二十世紀」という種類である。
ほぼ真白だが、心持ち少しピンクがかっていると言えようか。
写真②が純白の梨の花である。

梨の栽培は、外国では芸術的な大きな梨は余り作らないので、なるべく手間のかからない栽培をするが、日本では労働集約的な手間をかけて立派な果実を作ろうとする。
梨の受粉も、花粉を人手で一つ一つ雌蘂に付けるという大変な手間をかける。
受粉が済んだら、よい実だけを残して、あとは全部もぎとる「摘果」という作業をする。
その後には一つづつ紙袋をかぶせるという手間をかける。
この頃では「無袋」栽培というのも一部では行なわれてはいるが、主流は「袋」ありである。
写真③が受粉作業の様子。

筆の先に雄しべの花粉をつけて、花の雌蘂に一つ一つつけてゆく大変な作業。
梨の木は落葉する木で冬には幹と枝だけである。冬の間に徒長枝などを剪定して活かす枝だけを残す。
先年秋に、梨の実で、このBLOG記事に 梨の実 のことで少し書いた。二十世紀という梨の株の最初の開発者のことなども書いたので、参照してもらいたい。
写真④が広い梨畑に一斉に花が咲いた様子である。

古来、梨の花は俳句に詠まれてきたので、それを引く。
梨棚の跳ねたる枝も花盛り・・・・・・・・松本たかし
青天や白き五弁の梨の花・・・・・・・・原石鼎
梨咲くと葛飾の野はとのぐもり・・・・・・・・水原秋桜子
梨の花わが放心の影あゆむ・・・・・・・・山下淳
多摩の夜は梨の花より明けにけり・・・・・・・・斎藤羊圃
能登けふは海の濁りの梨の花・・・・・・・・細見綾子
梨の花郵便局で日が暮れる・・・・・・・・有馬朗人
はてしなき黄土に咲いて梨の花・・・・・・・・青柳志解樹
キリストの蒼さただよふ梨の花・・・・・・・・福田甲子雄
梨の花白にはあらず黄にあらず・・・・・・・・信谷冬木
<<手にすくふ水に空あり菖蒲田の柵に病後の妻と凭りゐつ・・・・・・・・・・・・・木村草弥 | ホーム | 杭いつぽん打ちこみをれば野の蕗が杭の根もとに淡き香はなつ・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥>>
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